2014年12月3日水曜日

◆КНИГА『ロシア縦横無尽』 ロシアの地方へ作品の源を訪ねる贅沢な旅

こういう本は貴重だ。ロシア(+旧ソ連圏の国々)の、結構な地方都市の訪問記。著者はトルストイ好きではあっても、ソ連・ロシアとの貿易に関わっていた方なので、文学者のような名文を書くわけではなく、両オストロフスキーにしても「どちらも読んだことはない」と堂々と書いているような人。画家や文学者の生家・記念館を訪ねるものが多く、自分でも行ってみたい気持ちに駆られる。ヴォルガの水源やムルマンスクのオーロラの話も感動的。今はもう亡き人だと言うのが残念でならない。

2014年11月28日金曜日

◇КНИГА(書籍情報)荻野恭子先生『ロシアの保存食』

実はまだこちらに書いていなかった、もうさんざんお世話になっているこの一冊。


著者 : 荻野恭子
東洋書店
発売日 : 2014-10-15
『ロシアのパンとお菓子』『ロシアのスープ』に続くシリーズ3冊目。保存食とそれを使った応用料理(キャベツの発酵漬け→シチー、サワークリーム→ビーフストロガノフ)のレシピが載っているので、小ぶりな本の割に数多くのレシピがあって、簡潔ながら要領を得た文で、ロシア料理がぐっと身近になった。保存食ですてきなおもてなしができるというロシアのライフスタイルについてのコラムも読んで楽しい。


シリーズ完結。
紀伊國屋書店本店6階にて


最初に作ってみた、夏ミカン(野生)のジャム。
満足の出来!

塩漬け(キュウリ・トマト) 甘酢漬け(玉ねぎとにんじん)・キャベツの発酵漬け


鶏ハム

シチーとビーフストロガノフ ピラフ添え

2014年11月21日金曜日

◆КНИГА『ビジュアル版バレエ・ヒストリー バレエ誕生からバレエ・リュスまで』

貴重な「超」入門書。


「ビジュアル版」と銘打つだけあって図版が効果的に使われ見やすいだけでなく、本文も親しみやすいです・ます調で書かれ、バレエの通史を一から学べる、とても有り難い一冊。特に、バレエ・リュス以前の、宮廷バレエ、ロマンティックバレエ時代の人物について、また「アフター・バレエ・リュス」としてバレエ・リュス・ド・モンテカルロについて、そこそこに詳しい記述があって役立つ。欲を言えば、帝政ロシアやソ連時代のバレエ(ワガノヴァ等々)がもっと触れられていたらと思うが、それはないものねだりかもしれない。

2014年11月6日木曜日

◆КИНОФИЛЬМ「ガガーリン 世界を変えた108分」

「ガガーリン 世界を変えた108分」 "Гагарин. Первый в космосе"
パーヴェル・パフホメンコ監督2013年ロシア

12/20~新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ有楽町他
前売り券にはピンバッジ付き!

     ↑
   この宇宙服のピンバッジです。
(背後の写真は2011年8月に行ったモスクワの宇宙征服者の塔)



ユーリー・ガガーリンの肖像

ずっと前に観た、ミローノフ主演でツィガノフが助演の、邦題「宇宙を夢見て」(原題は"Космос как предчувствие"「予感としての宇宙」みたいな感じか)はいい映画だった。
フィルムセンターでの2回ばかりの上映のみで、一般公開はしなかったが、できれば関連上映でやらないかなあ。
映画は、宇宙飛行士に選出されるべく密かにトレーニングする若者とその友人にしてライバルを描いていた。
アメリカンドリームみたいにあっけらかんと明るくはないのだ。
が、それがよかった。
ガガーリンは最後の方にちょこっと出てくるのだが、笑顔が魅力的な好青年役者(たぶん無名の)が演じていたが、ガガーリンをリアルタイムで観たある方によれば「似ていない」そうだ。
彼に関するエピソードはほんとか嘘かわからない。

宇宙関連で言えば、ウクライナ映画祭ではセルゲイ・コロリョフの伝記映画がユーリー・カラ監督が撮ったというのでとっても楽しみにして行ったら、大いに期待外れだった。
あのカラ監督がこんなになっちゃったの?と、今のウクライナ映画界全体が心配になった。
(まあ、期待しすぎてしまったということなのかもしれないが。)



セルゲイ・パーヴロヴィチ・コロリョフさん

今度の「ガガーリン」は、ロシアでは結構ヒットしたはずで、作品としておもしろいものだと期待している。






2014年10月31日金曜日

◆КНИГА ソ連のヴェルヌの夢の発明



ワグナー教授は、”ソ連のジュール・ヴェルヌ”べリャーコフのSFに登場する科学万能信奉系の学者の中でも、迷惑なマッドサイエンティスト。「ちょっと変人」とユーモアで済まされるレベルじゃない。でもべリャーエフは楽しんで書いたんだろうなあ。おもしろかった。

2014年10月26日日曜日

◆КНИГА 戯曲・戯曲・戯曲!ブルガーコフの戯曲が続々読める。

このシリーズ、解説も詳しくてすばらしい。続刊をお願いしたい!是非是非!「ゾイカ」も「赤紫」もほぼ初見だったので、非常に楽しめた。あとは早く舞台を観たい。
(1)の「ゾーヤ・ペーリツのアパート」と「赤紫の島」が初見だったのに対し、こちらは既訳や映画で接していたので新鮮さは薄かったが、解説(解題)が詳しく、お得な感じ。やはり舞台化されたのを早く観たい!

ゾイカのアパート
ではなくて、キエフのブルガーコフの家博物館のパンフレット
(ポップアップになっているのが遊び心満載のブルガーコフ風)

こちらが博物館にある肖像

2014年8月29日金曜日

◇ВЫСТАВКА(展覧会情報)チェブラーシカの絵本原画展@岡谷イルフ童画館


チェブラーシカとロシア・アニメーションの作家たち チェブラーシカの絵本原画展

201494日〜113日 岡谷・イルフ童画館
 

★高松市美術館、八王子市夢美術館、兵庫県立円山川公苑美術館等々を巡回してきたチェブラーシカ原画展は、今度は長野県岡谷市のイルフ童画館で、武井武雄が描いた世界の国々の姿「武井武雄の絵の中を旅する」展と同時開催。

★今年生誕120年の画家武井武雄は「童画」という言葉を作り出した、日本における児童文化の巨星の一人。1968年、74歳の時に児童文化訪ソ団団長としてソ連を訪れたのが初めての海外旅行でした。ずっとソ連(ロシア)に関心を持っていたようで、『モスクワの月夜』(会員向けに限定数制作された豪華な絵本シリーズの一つ)に記されたロシア語もきっちり正確です。

 

828日にイルフ童画館を訪れた際には、オレンジの木箱ならぬ段ボール箱でチェブラーシカが横になっていました(待機中?)。




 

2014年8月16日土曜日

◇КНИГА(書籍情報)荻野恭子先生新著『ロシアのスープ』

『ロシアのスープ』
荻野恭子著2014年8月刊ISBN9784864591812
★『パンとお菓子』に続く荻野恭子先生のロシア料理シリーズ第二弾。ロシア料理の代名詞ボルシチから夏には冷たいスープ、冬には熱く濃いスープなど48レシピを収録。

★荻野先生は、黒田龍之助先生のロシア語レッスンでのクラスメイト。昔々、ロシア料理のレシピ本の訳を分担してやりました。が、黒田先生に「訳し間違えるととんでもない料理ができてしまいますからね!」と脅されながら、どんな料理になるのかイメージするのが実は難しかった私です。サッカー記事とは勝手が違ったのだよ。

作ってみた夏のスープ各種
①ヨーグルトスープ

②きゅうりのサワークリームスープ

③トマトとズッキーニのスープ

④ベリーのスープ

◆Лекция 荻野恭子先生トーク: 一日ロシアカフェ『スバボーダ』第4弾

黒田龍之助先生のロシア語レッスンのクラスメイト、料理研究家の荻野恭子先生のトーク、それにバラライカとアコーディオンのミニライブあり。
10月12日12:00~神楽坂

詳細はこちらを。
ロシア雑貨店パルク: 一日ロシアカフェ『スバボーダ』第4弾☆: ロシアの文化と食を身近に感じてもらいたいと 2009年に中野のカフェを借り切って 一日ロシアカフェ『スバボーダ』を開催して 大変ご好評をいただきました。 その後、場所を阿佐ヶ谷ロフトAに移し お料理とステージ上でのイベントを企画し たくさんの方々に楽しんで頂きました。...

2014年7月29日火曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)スクリーンでロシアオペラ(但しMETのアンコール)

METライブビューイング アンコール2014での上映
東銀座・東劇

①8/16(土)~18(月)―10:45、9/17(水)~19(金)―14:00、9/22(月)―18:45、9/24(水)―14:30 ピョートル・チャイコフスキー«エフゲニー・オネーギン» «Евгений Онегин»
 ヴァレリー・ゲルギエフ指揮
 出演:アンナ・ネトレプコ、マリウシュ・クヴィエチェン、ピョートル・ペチャワ、オクサナ・ヴォルコヴァ

②8/12(火)・13(水)―19:15、9/15(月・祝)・16(火)―19:15  ドミトリー・ショスタコーヴィチ«» «Нос»
パヴェル・スメルコフ指揮
出演:パヴロ・ジョット、アレキサンダー・ルイス、アンドレイ・ポポフ

★この3つの中ではこれが一番お薦め。楽しめます。

③8/30(土)~9/1(月)―18:00、9/9(火)・10(水)―10:30、9/11(木)・12(金)―14:15、9/22(月)―10:30
 アレクサンドル・ボロディン«イーゴリ公» «Князь Игорь»
 ジャナンドレア・ノセダ指揮
 出演:イルダール・アブドラザコフ、アニータ・ラチヴェリシュヴィリ、ミハイル・ペトレンコ、ステファン・コツァン

★これはちょっといただけない演出と衣装。奇をてらいすぎ。
 宴会シーンはもっと羽目をはずして盛り上がって欲しい。

★4回券がお得(3000円*4回のところ10000円)ですが、購入当日は使用不可。
 上記3作品は大丈夫だが使い得ない演目あり。

※来季(2014-2015シーズン)では【第8作】チャイコフスキー《イオランタ》(MET初演)
バルトーク《青ひげ公の城》(新演出)の2本立てがあります。
どうか普通の演出でありますように。
MET上演日:2015年2月14日
指揮:ワレリー・ゲルギエフ
演出:マリウシュ・トレリンスキ
出演:アンナ・ネトレプコ(イオランタ)、ピョートル・ベチャワ(ヴォデモン伯爵)
アレクセイ・マルコフ (ロベルト),  イルヒン・アズィゾフ(エブン=ハキヤ)、アレクセ
イ・タノヴィッツキー (レネ王) /ミハイル・ペトレンコ(青ひげ公)、
ディア・ミカエル)等

2014年7月27日日曜日

◇КНИГА(書籍情報) 結婚はゴールではない

文学大国のロシアだが、ロシア文学界は歴史的に徹底して男性上位だと思ってきた。
特にドストエフスキーなんかのが描くヒロインは、ときに笑っちゃうほど都合のいい女たちである。
そんな中でも、こと詩の分野ではアフマートヴァやツヴェターエヴァが輝いていた。
その彼女らに先駆け、異彩を放った女性詩人、文学者がカロリーナ・パヴロヴァであった。
 
ハイソな家庭に育ち、英語の教師がクレア・クレアモント(バイロンの晩年の恋人、シェリー夫人の異母妹)、ポーランドの国民的詩人アダム・ミツキエヴィチからプロポーズされる(ヴォルコンスカヤのサロンで知り合い、ポーランド語を習っていた)、などという華麗な環境。
新進作家ニコライ・パヴロフと結婚し、自身が女主人となるサロンも持ち、リストから曲を献呈された。
が、家庭生活は破綻・・・という自身の生活も伺わせる、辛口恋愛小説『ふたつの生』
 
  ミツケーヴィチの元カノ、カロリーナ・パヴロワの代表作は障害を乗り越えて恋人とゴールインするハッピイエンドの甘い話かと思いきや、訳者によると激辛<反恋愛小説>。現実にありがちな話
>親はあっさり賛成、さしたる障害はなかったが、夫はたいしたことない男で、薄幸婚
 
辛口と言うより苦い。そして全編皮肉でいっぱい。
 
 
 

2014年5月29日木曜日

◇КНИГА(書籍情報)ロシアのおもてなしは徹底てづくり

『ロシアのパンとお菓子』
荻野恭子著東洋書店1500円+税20145月刊

★荻野先生のこれまでのご著書よりこぶりで使い勝手が良さそうです。

★「パンとお菓子」と言ってもメニューはパン中心。旧ソ連圏にモンゴル・ウイグル・ハルピンも加えたユーラシア各地のパン、そしてピローグ・ピロシキ、それにお茶受けのお菓子のレシピ。

★コラムと「バーブシカの知恵袋」コーナーも充実しています。

★ロシアの主婦の手作りのもてなしの徹底ぶりに感心された由、同感です。タルトの型がなくても手できれいに形を作って焼く、白い紙を折って切ってお菓子の下に敷くレースペーパーを作る等々。

★ロシアの「美味しい」を紹介するシリーズ第一弾。『ロシアのスープ』『ロシアの保存食』と続きます。続刊が楽しみ!!!

★惜しむらくはパスハとハルヴァのレシピがなかったこと。

2014年5月18日日曜日

◇КНИГА(書籍情報)女はつらいよ、しかし


『共産主婦 東側諸国のレトロ家庭用品と女性たちの一日』

イスクラ著社会評論社1900+20143月刊

★見て楽しむ(ちょっと語弊が?)本。作るのは大変だったろうと思います。ここらへんの国々の雑貨のパッケージにはなぜこんなに心惹かれるのだろう?

2014年5月11日日曜日

◇КНИГА(書籍情報) バブリー・バクー

『ゾルゲ、キャビア、アゼルバイジャン 日本人のあまり行かないセレブ・リゾート4 アゼルバイジャン文化観光省公認旅行ガイドブック』

石井至著石井兄弟社201312月刊

★説明は簡潔、写真は美しい。ブログで見かけるような個人旅行記といった雰囲気なのでさらっと読めて楽しめるが、実際に旅行するときにはあくまで参考程度だろう。というか、これを読んで「そうか、アゼルバイジャンに行こう!」という気は起きない。「セレブ・リゾート」ですからね。

★私も知らなかった、「世界で一番バブっていると思う街は(ドバイやドーハではなく)バクーなのだ」という流れ。フレームタワー(2012年完成)やアゼルバイジャンタワー(カスピ海につくる人工島に建設予定)などモスクワのニューシティーをおそらく凌駕する勢いのセレブ&バブリーなパワーが今のこの国にはあるらしい。ほんと、湾岸諸国の雰囲気に酷似している…。そのうち年金リーグもアゼルバイジャンにできるかも。

★お茶について2点指摘しておく。

①「食後は紅茶とフルーツのジャムが一般的だ。ロシアンティーと違ってジャムは紅茶に入れない。」(30頁)ガラスのコップに紅茶、小皿にお茶受けとしてジャム、要するにロシアなどと同じ飲み方なのだね。

②「紅茶にはレモンを入れ、サモバーという湯沸かしポットから湯を注ぐ。」(50頁)←それ、サモワールですね(英文には「use Samovar」とある。なぜ大文字なのかは知らないが)。

★この本の前半はバクー生まれのゾルゲのお話です。

2014年5月6日火曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)贖いゆえに

「被爆者の声をうけつぐ映画祭2014 あの日を忘れない…」(7/3(木)~7/6(日) 御茶ノ水・明治大学リバティータワー)

「サクリファイス(犠牲)」«Жертва»
エマニュエラ・アンドレオリ&ウラジーミル・チェルトコフ監督2003年スイス
7/5(土)1645~プログラム5での上映(「ブラジルに生きるヒバクシャ」との二本立て)

★同名のタルコフスキーの遺作は崇高な?ファンタスチカ(でも核絡みだからこういう映画祭で上映してもおかしくはない)。これは24分の短編ドキュメンタリーで、チェルノブイリ事故の直後の事故処理作業員たちのその後を追ったもの。

★チラシではチェルトコフ監督の名前が「ウラディミール」表記になっています。Владимир Чертков

★他のプログラムは松谷みよ子原作の「ふたりのイーダ」(1976年)「TOMORROW明日」(1988年)「千羽づる」(1989年神山征二郎監督によるリメイク作品)などの劇映画、被爆者や福島の原発事故のドキュメンタリー映画等。

★ロシア人はもしかしたらжертва(あがない)という言葉を好むというかよく使うものなのかもしれません。検索するとやたらこういうタイトルの作品が挙がってくるのです(割と最近の作品に多い。)タルコフスキーだけではなかった。

2014年4月25日金曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)アブドラジャンやらキン・ザ・ザ!やらソクーロフやら

5/24(土)~6/6(金) オーディトリウム渋谷
「惜別の35ミリフィルム」

ソヴィエト・フィルム・クラシックスにに先立ち、ソ連&ロシア映画蔵出し上映祭り!特にソクーロフ作品多数!!
(註:旧ソ連圏以外の作品の上映もあります。)

「エルミタージュ幻想」«Русский ковчег»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2002年ロシア

★エルミタージュ内を巡る驚異の90分ワンカット。ゲルギエフ指揮のオーケストラも見もの聴きもの。豪華でそれまでのソクーロフっぽくない。

 

「フルスタリョフ、車を!」«Хрусталев, машину! »
アレクセイ・ゲルマン監督1998年ロシア

★これまでの作風から一転、猥雑で騒々しく「ゲルマン、どうした?!」という作品だった。

 

「静かなる一頁」«Тихие страницы»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1993年ロシア
原作:フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』

★割と眠気を誘う。主人公を演じるアレクサンドル・チュレドニクは「ボヴァリー夫人」にエマの愛人役で出演していた。ソクーロフの好みのタイプらしい。ロシア語を勉強し始めた頃にこれを観て「ロシア映画ってこんなか?!」と動揺したものだったが、こんなではないものもあると知って安心した。

 

「牡牛座 レーニンの肖像」«Телец»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2001年ロシア

★レオニード・モズガボイは、この作品でレーニンを、「モレク神」«Молох»でヒトラーを、「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»でチェーホフを演じています。役者って凄いな。①の「エルミタージュ幻想」にも出演しています。

 

「チェチェンへ アレクサンドラの旅」«Александра»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2007年ロシア

ガリーナ・ヴィシネフスカヤ演じる老女アレクサンドラが、孫が赴任しているチェチェンの駐屯地に現れる。思い切り場違いな彼女に対して駐屯地の兵士たちは結構優しい(世話役を仰せつかった兵士は役立たずだが)。チェチェンの美少年イリヤスの「こんなに長く戦争をして、もう解放してほしい」という言葉に対して、アレクサンドラ曰く「日本の老女が言っている。どんなに辛いことも終わる時が来る。必要なのは理性を失わないこと。武器や暴力に真の力はない。」誰のこと?と思ったら、日本の老女японская конституция説が。憲法は確かに女性名詞、しかし<老女>扱いか。ロシア兵だけでなく、チェチェンの市井の人々もアレクサンドラ(割と我がまま気ままなおばあちゃんなのだが)にとても親切だ。しかしその親切にロシア人としてはいつまでも甘えていてはいけないのでは?

★ヴィシネフスカヤが映画初出演とチラシにあるのは間違いで、「カテリーナ・イズマイロヴァ」他オペラ映画には何本も出演済み。

 

UFO少年アブドラジャン」«Абдуладжан, или посвещается Стивену Спилбергу»
ズリフィカール・ムサコフ監督1992年ウズベキスタン

★おっかないけど愛情深いおっかさんのホリダ(トゥチ・ユスポワ)が魅力的!それに比べておとっつぁんのバザルバイは日和見の小心者!コルホーズの農民たちが農機具返還を求めて議長に詰め寄る場面、クーワ・カエセ(鍬、返せ)!」と聞こえるので耳を澄まそう。UFOに出会いたかった将軍は「モスクワは涙を信じない」の監督さん。「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」にもオタク役?で出演していましたね。

 

「不思議惑星キン・ザ・ザ!」«Кин-дза-дза! »
ゲオルギー・ダネリヤ監督1986年ソ連

★マシコフおじさん=ロシアの二枚目スタニスラフ・リュプシン(「私は二十歳」«Мне двадцать лет (Застава Ильича)»1965年)のスラーヴァ、ミハルコフ監督の「五つの夜に」«Пять вечеров»1978年)、「剣と盾」«Щит и меч»シリーズ(1968年))。人が変ったようにクー!しているのが衝撃的!すばらしい。『映画に学ぶロシア語』収録。最近アニメーションでリメイクされた。

 

「日陽はしづかに発酵し…」«Дни затмения»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1988年ソ連
原作:ストルガツキー兄弟著『世界終末十億年前』群像社

★タルコフスキーがそうだったように、原作の雰囲気だけ借用して、後は自分の世界を作ってしまっているソクーロフ。トルクメニスタンの沙漠が暑くて暑くてたまらなそうで、観ていて辛いただただ不条理の世界。

 

「セカンド・サークル」«Круг второй»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1990年ソ連

★当時レニングラード工科大学の学生だったピョートル・アレクサンドロフ。彼はどうしているかわからないが、葬儀屋役の素人女性はきっと元気でしょう。続きは⑫「ストーン―クリミアの亡霊」

 

「マザー、サン」«Мать и сын»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1997年ロシア

★不本意ながら泣ける…。ほんとに泣ける。眠いけど。

 

「ロシアン・エレジー」 «Элегия из России»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1993年ロシア

★ソクーロフの詩的すぎるドキュメンタリー。作中使用される帝政ロシア末期の写真はマキシム・ドミートリエフの作品。

 

「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1992年ロシア

★チェーホフの亡霊をレオニード・モズガボイ(ソクーロフ作品でヒトラーやレーニンを演じている人)、博物館管理人をピョートル・アレクサンドロフ、っていうことで⑨「セカンド・サークル」の続きという設定。チェーホフ(の亡霊)は医者魂を発揮してアレクサンドロフに「顔色が悪い。鉄分を摂るように」と進言。ペーチャ、君はどこに行ったの?

 

「孤独な声」«Одинокий голос человека»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1978年ソ連
原作:アレクサンドル・プラトーノフ著『ポトゥダニー河』・『職人の誕生』

★登場する男女二人とも血色悪くて不健康なそうな様子が公開当時のロシアそのものの印象。同じ原作をモチーフにしたアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督「マリアの恋人」«Возлюбленные Марии»とは、全く異なる作品になっているのが興味深い。

 

「ファザー、サン」«Отец и сон»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2003年ロシア

★ロシア南部の港町なのかと思ったらポルトガルで撮ったとか。

 

★★ほとんど以前に当ブログ等で使った紹介文をリサイクル利用していますが、悪しからず。

2014年4月8日火曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)いつもにもましてクラシックス

6/7()6/20() オーディトリウム渋谷「ソヴィエト・フィルム・クラシックス」

ソヴィエト映画というだけでもはや古典と言えるのではないか、ということはともかく、7080年代中心のラインナップ。15あった各共和国のエスニック作品もたっぷり。
30作品だが、今回はそのうち10作品を紹介し、残りは後日ぼちぼちとする予定。
(5本追加し、あと15本です。)
(さらに5本追加し、あと10本です。)


「長い見送り」«Долгие проводы»
キーラ・ムラートヴァ監督1971年オデッサ劇映画スタジオ(ウクライナ)

★「ソ連・ロシア映画」だと意識して観に行った最初の作品だった(←子どもの頃無意識に観ていたカチャーノフとかのアニメーションはカウントしない)。ムラートヴァは実はかなり異色の映画監督なのだが、最初に観たのがこれだったので、なかなか素敵じゃないかと思ったのが今となっては懐かしい。

 
「猟人日記/狼」«Бирюк»
ロマン・バラヤン監督1977ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★有名なイヴァン・トゥルゲーネフ『猟人日記』中の短編『狼』を原作にしているが、ラストは変えている。ソ連時代の文芸映画にはほとんど外れはないが、これもかなりの佳作。


「灰色の石の中で」«Среди серых камней»
キーラ・ムラートヴァ監督1983年オデッサ劇映画スタジオ(ウクライナ)

★かつてバウスシアターにて「金色の雲は宿った」との2本立てで観て、ぼろぼろに泣いた作品。原作はウラジーミル・コロレンコ『悪い仲間』(岩波文庫に邦訳あり)。

 
「青春賛歌」«как молоды мы были»
ミハイル・べリコフ監督1985ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★未見です。

 
「ロンリー・ウーマン」«Одинокая женщина желает познакомиться»
ヴャチェスラフ・クリストフォーヴィチ監督1986ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★イリーナ・クプチェンコ主演、エレーナ・ソロヴェイ等出演。「貴族の巣」で可憐なヒロインを演じたクプチェンコが所謂“オールド・ミス”(但し“実は魅力的な”という仕掛けあり)を演じるようになったか、という感想を持ったものだった。


「宿なしレオニード」«Бич божий»
オレーグ・フィアルコ監督1988ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★未見です。

 
「スタフ王の野蛮な狩り」«Дикая охота короля Стаха»
ヴァレーリー・ルビンチク監督1979年ベラルーシフィルム(ベラルーシ)

★原作はウラジーミル・コロトケヴィチの同名の小説で、黒田龍之助先生はかつて「日本語訳をする本を一冊選べと言われたら迷わず『スタフ王』!」とおっしゃっていました。原作者自ら映画製作にかかわっており、橇遊びのシーンを観るだけでも価値のある、それはもう美しい映画!杉浦かおりさんによれば、「スリーピー・ホロウ」はこれのリメイクだと言う。

 
「炎628«Иди  и смотри»
エレム・クリモフ監督1985年ベラルーシフィルム、モスフィルム

★星の数ほどある戦争映画の中でも、ハティニの虐殺を描いたこれが間違いなく一番恐ろしい。観ていて腐臭が漂ってくる映画はこれしかない。辛くても、一生に一度は絶対に見るべき映画。但しデートには向かない(経験者談。帰路終始沈黙であった)。主人公フリョーラ役のアレクセイ・クラフチェンコは、その辺のちょいワル少年風でいい味を出していたものの、到底役者には向かないだろうと思ったのに、今ではいっぱしのアクション俳優になっていかがわしい戦争もの(要するに好戦的な作品)やなんかに出演している。世の中わからないものです…。


「タシケントはパンの町」«Ташкент – город хлебный»
シュフラト・アッバーソフ監督1969年ウズベクフィルム(ウズベク)

★中央アジア映画祭(1996年頃)で最初に観た作品ではなかったか。えらく暗いなあという印象を持ったのと、当時はソ連初期の大規模飢餓について全く知識がなかったので、なぜこんなに人々が餓え苦しんでいるのかわからず、眼前のスクリーンに映し出される光景に戸惑った。原作はジュブナイルで、邦訳もある(アレクサンドル・ネーベロフ作、自伝的な物語だという)。数年前に破産した理論社の本(「10代の本セレクション」シリーズ)なので、入手は難しいかもしれないが、図書館で探してみてください。
 

「恋するものたち」«Влюбленные»
エリヨル・イシムハメドフ監督1969年ウズベクフィルム(ウズベク)

★主演のロジオン・ナハペートフはニキータ・ミハルコフ監督の「愛の奴隷」やセミョーン・アラノヴィチ監督「トルペド航空隊」などにも出演している二枚目俳優。亡命ギリシャ人の学友が当時の独裁政権下の祖国に帰っていくというエピソードも印象に残った。2004年に続編が製作されていて、ナハペートフら主要メンバーは勿論出演している。


「七発目の銃弾」«Седьмая пуля»
アリ・ハムラーエフ監督1973年ウズベクフィルム(ウズベク)

★「バスマチ」と呼ばれるムスリム系の反ソヴィエトの叛乱を背景にしたアクション映画。「光と影のバラード」とは違ったアジアの香りのソヴィエト・ウェスタン(といってもイースタンになるが)。

 
「戦争のない20日間」«Двадцать  дней без войны»
アレクセイ・ゲルマン監督1976年レンフィルム

★従軍記者がタシケントで過ごす休暇。再会と別れ。原作は従軍記者出身のコンスタンチン・シーモノフ『ロパーチンの手記より』。渋い。

 
⑬「灰色の狼」«Лютый»
トロムシ・オケーエフ監督1973年カザフフィルム(カザフ)

原作はカザフの科学者にして作家ムフタル・アウェーゾフの短篇小説「灰色の恐しきもの」。しかし、監督のオケーエフ並びに主人公の叔父に扮するシュイメンクル・チョクモロフ(黒澤明監督「デルス・ウザーラ」にも出演)はキルギス人。

 
「白い鳩」«Чужая белая и рябой»
セルゲイ・ソロヴィヨフ監督1986年カザフフィルム(カザフ)

★原作はボリス・リャホフスキー『他人の白い鳩と斑の鳩』。ソロヴィヨフはモスフィルムの監督だが、自分の世代に愛をこめてカザフフィルムで撮っている。「戦争と平和」のナターシャでデビュー、イタリア映画「ひまわり」でも知られるリュドミーラ・サヴェーリエヴァが主人公の父の憧れの女性という役どころで出演している。鳩を飼う話って、イサーク・バーベリの短編にもあったんじゃないかな。

 
「僕の無事を祈ってくれ」«Игла»
ラシッド・ヌグマノフ監督1988年カザフフィルム(カザフ)

★カザフ出身、モスクワ国立映画大学で学んだヌグマノフの卒業制作。主演は伝説的ロックバンド「キノ」のリードヴォーカル、ヴィクトル・ツォイ。ソ連のジェームス・ディーンというか松田優作というかアジアっぽい容貌に長い脚!絶大な人気を誇っていたが、壮絶な交通事故死により、映画出演はこの一作のみになってしまった。カザフ・ニューウェーブの代表作でもある。



「戦火を越えて」«Отец солдата»
レゾ・チヘイーゼ監督1964年グルジアフィルム(グルジア)
★レゾ・チヘイーゼ作品にはこてこてに濃~いグルジアのおじいさんが出演するが、この作品では兵士の息子をはるかに凌駕する大活躍ぶり。ありえない。(このタイプの女性版がソクーロフの「アレクサンドラ」かと。)

 

「結婚」«Свадьба»
ミハイル・コバヒーゼ監督1964年グルジアフィルム(グルジア)
★コバヒーゼの映画大学の卒業制作。映像と音楽だけで、一目ぼれした女性へプロポーズする若者を描いた瑞々しい作品。

 

「傘」«Зонтик»
ミハイル・コバヒーゼ監督1967年グルジアフィルム(グルジア)
★こちらも⑰同様、映像と音楽だけの実験的作風。名作「落葉」に主演したギヤ・アヴァシュヴィリ出演。

 

「ピロスマニのアラベスク」«Арабески на тему Пиросмани»
セルゲイ・パラジャーノフ監督1986年グルジア記録映画スタジオ(グルジア)
★記録映画スタジオで撮っているが、ドキュメンタリーの枠からは完全にはみ出している。ピロスマニの作品を同じ画家としてオマージュを捧げたような作品。

 

「嘆くな!」«Не горюй!»
ゲオルギー・ダネリヤ監督1969年モスフィルム、グルジアフィルム(グルジア)
★グルジア特有のポリフォニーの大合唱、宴会が続き、ソ連コメディー映画御三家の一人ダネリヤの楽しい映画だと思って観ていると、後半は一転ヨブ記のように。
★ロシア旅行中にホテルのTVをつけたら、偶々ダネリヤ特集をやっていて(監督が愛猫とともにインタビューを受けていた)、この作品を放映した。その後字幕付きで観る機会があり、«嘆くな»という事情がわかったが、字幕無しでも前半は楽しめる。



 

21「ルカじいさんと苗木」«Саженцы»

レゾ・チヘイーゼ監督1973年グルジアフィルム(グルジア)
★田舎のおじいさん(こてこてに濃い)と孫が幻の苗木を訪ねてグルジア国内を大旅行するが、このおじいさんの血は孫のカハ(いきなり登場する外国人にも全く動じない、英会話ばっちり&歌いまくり)にしっかり受け継がれているとみた。
★レゾはレヴァズの愛称であるらしい。

 
 

22「田園詩」«Пастораль»
オタール・イオセリアーニ監督1975年グルジアフィルム(グルジア)

★グルジア出身の映画人の中でもイオセリアーニは完全に都会派。なので、都会人の見た田園風景を描いています。

 

23「希望の樹」«Древо желания»
テンギス・アブラーゼ監督1977年グルジアフィルム(グルジア)

★因習に残酷に引き裂かれる純真無垢なカテリーナ・イズマイロヴァ、みたいな話。これを観て私の友人は「私はあれよ、おんぼろ日傘の女性!」と感銘にうち震えながら言ったものです。それだけ胸にぐさりときます。

 
 

24「若き作曲家の旅」«Путешествие молодого композитора»
ゲオルギー・シェンゲラーヤ監督1985年グルジアフィルム(グルジア)

★オタール・チヘイゼの小説『名もなき風』を脚色したもの。

 
 

25「転回」«Круговорот»
ラナ・ゴゴベリーゼ監督1986年グルジアフィルム(グルジア)

★主役は二人の女性、旧友同士が偶然街中で出会う。メラブ・ニニーゼ出演作(というのは個人的なメモ書きです。以前観た時には気がつかなかったな)。

 
 

26「青い山/本当らしくない本当の話」«Голубые горы или неправдоподобная история»
エリダル・シェンゲラーヤ監督1984年グルジアフィルム(グルジア)

24のゲオルギーとは兄弟。小説家が出版許可を得ようと約書をたらいまわしにされる話。確かキューバ映画祭でも似たような映画があった。

 
 

  今日でやっとグルジア映画を終えた(だんだん紹介文が淡白になる)。あと4本は再び中央アジア。ぼちぼちやります。



あと10本ありますが、ぼちぼちやります。