2014年4月25日金曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)アブドラジャンやらキン・ザ・ザ!やらソクーロフやら

5/24(土)~6/6(金) オーディトリウム渋谷
「惜別の35ミリフィルム」

ソヴィエト・フィルム・クラシックスにに先立ち、ソ連&ロシア映画蔵出し上映祭り!特にソクーロフ作品多数!!
(註:旧ソ連圏以外の作品の上映もあります。)

「エルミタージュ幻想」«Русский ковчег»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2002年ロシア

★エルミタージュ内を巡る驚異の90分ワンカット。ゲルギエフ指揮のオーケストラも見もの聴きもの。豪華でそれまでのソクーロフっぽくない。

 

「フルスタリョフ、車を!」«Хрусталев, машину! »
アレクセイ・ゲルマン監督1998年ロシア

★これまでの作風から一転、猥雑で騒々しく「ゲルマン、どうした?!」という作品だった。

 

「静かなる一頁」«Тихие страницы»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1993年ロシア
原作:フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』

★割と眠気を誘う。主人公を演じるアレクサンドル・チュレドニクは「ボヴァリー夫人」にエマの愛人役で出演していた。ソクーロフの好みのタイプらしい。ロシア語を勉強し始めた頃にこれを観て「ロシア映画ってこんなか?!」と動揺したものだったが、こんなではないものもあると知って安心した。

 

「牡牛座 レーニンの肖像」«Телец»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2001年ロシア

★レオニード・モズガボイは、この作品でレーニンを、「モレク神」«Молох»でヒトラーを、「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»でチェーホフを演じています。役者って凄いな。①の「エルミタージュ幻想」にも出演しています。

 

「チェチェンへ アレクサンドラの旅」«Александра»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2007年ロシア

ガリーナ・ヴィシネフスカヤ演じる老女アレクサンドラが、孫が赴任しているチェチェンの駐屯地に現れる。思い切り場違いな彼女に対して駐屯地の兵士たちは結構優しい(世話役を仰せつかった兵士は役立たずだが)。チェチェンの美少年イリヤスの「こんなに長く戦争をして、もう解放してほしい」という言葉に対して、アレクサンドラ曰く「日本の老女が言っている。どんなに辛いことも終わる時が来る。必要なのは理性を失わないこと。武器や暴力に真の力はない。」誰のこと?と思ったら、日本の老女японская конституция説が。憲法は確かに女性名詞、しかし<老女>扱いか。ロシア兵だけでなく、チェチェンの市井の人々もアレクサンドラ(割と我がまま気ままなおばあちゃんなのだが)にとても親切だ。しかしその親切にロシア人としてはいつまでも甘えていてはいけないのでは?

★ヴィシネフスカヤが映画初出演とチラシにあるのは間違いで、「カテリーナ・イズマイロヴァ」他オペラ映画には何本も出演済み。

 

UFO少年アブドラジャン」«Абдуладжан, или посвещается Стивену Спилбергу»
ズリフィカール・ムサコフ監督1992年ウズベキスタン

★おっかないけど愛情深いおっかさんのホリダ(トゥチ・ユスポワ)が魅力的!それに比べておとっつぁんのバザルバイは日和見の小心者!コルホーズの農民たちが農機具返還を求めて議長に詰め寄る場面、クーワ・カエセ(鍬、返せ)!」と聞こえるので耳を澄まそう。UFOに出会いたかった将軍は「モスクワは涙を信じない」の監督さん。「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」にもオタク役?で出演していましたね。

 

「不思議惑星キン・ザ・ザ!」«Кин-дза-дза! »
ゲオルギー・ダネリヤ監督1986年ソ連

★マシコフおじさん=ロシアの二枚目スタニスラフ・リュプシン(「私は二十歳」«Мне двадцать лет (Застава Ильича)»1965年)のスラーヴァ、ミハルコフ監督の「五つの夜に」«Пять вечеров»1978年)、「剣と盾」«Щит и меч»シリーズ(1968年))。人が変ったようにクー!しているのが衝撃的!すばらしい。『映画に学ぶロシア語』収録。最近アニメーションでリメイクされた。

 

「日陽はしづかに発酵し…」«Дни затмения»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1988年ソ連
原作:ストルガツキー兄弟著『世界終末十億年前』群像社

★タルコフスキーがそうだったように、原作の雰囲気だけ借用して、後は自分の世界を作ってしまっているソクーロフ。トルクメニスタンの沙漠が暑くて暑くてたまらなそうで、観ていて辛いただただ不条理の世界。

 

「セカンド・サークル」«Круг второй»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1990年ソ連

★当時レニングラード工科大学の学生だったピョートル・アレクサンドロフ。彼はどうしているかわからないが、葬儀屋役の素人女性はきっと元気でしょう。続きは⑫「ストーン―クリミアの亡霊」

 

「マザー、サン」«Мать и сын»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1997年ロシア

★不本意ながら泣ける…。ほんとに泣ける。眠いけど。

 

「ロシアン・エレジー」 «Элегия из России»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1993年ロシア

★ソクーロフの詩的すぎるドキュメンタリー。作中使用される帝政ロシア末期の写真はマキシム・ドミートリエフの作品。

 

「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1992年ロシア

★チェーホフの亡霊をレオニード・モズガボイ(ソクーロフ作品でヒトラーやレーニンを演じている人)、博物館管理人をピョートル・アレクサンドロフ、っていうことで⑨「セカンド・サークル」の続きという設定。チェーホフ(の亡霊)は医者魂を発揮してアレクサンドロフに「顔色が悪い。鉄分を摂るように」と進言。ペーチャ、君はどこに行ったの?

 

「孤独な声」«Одинокий голос человека»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1978年ソ連
原作:アレクサンドル・プラトーノフ著『ポトゥダニー河』・『職人の誕生』

★登場する男女二人とも血色悪くて不健康なそうな様子が公開当時のロシアそのものの印象。同じ原作をモチーフにしたアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督「マリアの恋人」«Возлюбленные Марии»とは、全く異なる作品になっているのが興味深い。

 

「ファザー、サン」«Отец и сон»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2003年ロシア

★ロシア南部の港町なのかと思ったらポルトガルで撮ったとか。

 

★★ほとんど以前に当ブログ等で使った紹介文をリサイクル利用していますが、悪しからず。

2014年4月8日火曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)いつもにもましてクラシックス

6/7()6/20() オーディトリウム渋谷「ソヴィエト・フィルム・クラシックス」

ソヴィエト映画というだけでもはや古典と言えるのではないか、ということはともかく、7080年代中心のラインナップ。15あった各共和国のエスニック作品もたっぷり。
30作品だが、今回はそのうち10作品を紹介し、残りは後日ぼちぼちとする予定。
(5本追加し、あと15本です。)
(さらに5本追加し、あと10本です。)


「長い見送り」«Долгие проводы»
キーラ・ムラートヴァ監督1971年オデッサ劇映画スタジオ(ウクライナ)

★「ソ連・ロシア映画」だと意識して観に行った最初の作品だった(←子どもの頃無意識に観ていたカチャーノフとかのアニメーションはカウントしない)。ムラートヴァは実はかなり異色の映画監督なのだが、最初に観たのがこれだったので、なかなか素敵じゃないかと思ったのが今となっては懐かしい。

 
「猟人日記/狼」«Бирюк»
ロマン・バラヤン監督1977ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★有名なイヴァン・トゥルゲーネフ『猟人日記』中の短編『狼』を原作にしているが、ラストは変えている。ソ連時代の文芸映画にはほとんど外れはないが、これもかなりの佳作。


「灰色の石の中で」«Среди серых камней»
キーラ・ムラートヴァ監督1983年オデッサ劇映画スタジオ(ウクライナ)

★かつてバウスシアターにて「金色の雲は宿った」との2本立てで観て、ぼろぼろに泣いた作品。原作はウラジーミル・コロレンコ『悪い仲間』(岩波文庫に邦訳あり)。

 
「青春賛歌」«как молоды мы были»
ミハイル・べリコフ監督1985ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★未見です。

 
「ロンリー・ウーマン」«Одинокая женщина желает познакомиться»
ヴャチェスラフ・クリストフォーヴィチ監督1986ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★イリーナ・クプチェンコ主演、エレーナ・ソロヴェイ等出演。「貴族の巣」で可憐なヒロインを演じたクプチェンコが所謂“オールド・ミス”(但し“実は魅力的な”という仕掛けあり)を演じるようになったか、という感想を持ったものだった。


「宿なしレオニード」«Бич божий»
オレーグ・フィアルコ監督1988ドヴジェンコ記念キエフスタジオ(ウクライナ)

★未見です。

 
「スタフ王の野蛮な狩り」«Дикая охота короля Стаха»
ヴァレーリー・ルビンチク監督1979年ベラルーシフィルム(ベラルーシ)

★原作はウラジーミル・コロトケヴィチの同名の小説で、黒田龍之助先生はかつて「日本語訳をする本を一冊選べと言われたら迷わず『スタフ王』!」とおっしゃっていました。原作者自ら映画製作にかかわっており、橇遊びのシーンを観るだけでも価値のある、それはもう美しい映画!杉浦かおりさんによれば、「スリーピー・ホロウ」はこれのリメイクだと言う。

 
「炎628«Иди  и смотри»
エレム・クリモフ監督1985年ベラルーシフィルム、モスフィルム

★星の数ほどある戦争映画の中でも、ハティニの虐殺を描いたこれが間違いなく一番恐ろしい。観ていて腐臭が漂ってくる映画はこれしかない。辛くても、一生に一度は絶対に見るべき映画。但しデートには向かない(経験者談。帰路終始沈黙であった)。主人公フリョーラ役のアレクセイ・クラフチェンコは、その辺のちょいワル少年風でいい味を出していたものの、到底役者には向かないだろうと思ったのに、今ではいっぱしのアクション俳優になっていかがわしい戦争もの(要するに好戦的な作品)やなんかに出演している。世の中わからないものです…。


「タシケントはパンの町」«Ташкент – город хлебный»
シュフラト・アッバーソフ監督1969年ウズベクフィルム(ウズベク)

★中央アジア映画祭(1996年頃)で最初に観た作品ではなかったか。えらく暗いなあという印象を持ったのと、当時はソ連初期の大規模飢餓について全く知識がなかったので、なぜこんなに人々が餓え苦しんでいるのかわからず、眼前のスクリーンに映し出される光景に戸惑った。原作はジュブナイルで、邦訳もある(アレクサンドル・ネーベロフ作、自伝的な物語だという)。数年前に破産した理論社の本(「10代の本セレクション」シリーズ)なので、入手は難しいかもしれないが、図書館で探してみてください。
 

「恋するものたち」«Влюбленные»
エリヨル・イシムハメドフ監督1969年ウズベクフィルム(ウズベク)

★主演のロジオン・ナハペートフはニキータ・ミハルコフ監督の「愛の奴隷」やセミョーン・アラノヴィチ監督「トルペド航空隊」などにも出演している二枚目俳優。亡命ギリシャ人の学友が当時の独裁政権下の祖国に帰っていくというエピソードも印象に残った。2004年に続編が製作されていて、ナハペートフら主要メンバーは勿論出演している。


「七発目の銃弾」«Седьмая пуля»
アリ・ハムラーエフ監督1973年ウズベクフィルム(ウズベク)

★「バスマチ」と呼ばれるムスリム系の反ソヴィエトの叛乱を背景にしたアクション映画。「光と影のバラード」とは違ったアジアの香りのソヴィエト・ウェスタン(といってもイースタンになるが)。

 
「戦争のない20日間」«Двадцать  дней без войны»
アレクセイ・ゲルマン監督1976年レンフィルム

★従軍記者がタシケントで過ごす休暇。再会と別れ。原作は従軍記者出身のコンスタンチン・シーモノフ『ロパーチンの手記より』。渋い。

 
⑬「灰色の狼」«Лютый»
トロムシ・オケーエフ監督1973年カザフフィルム(カザフ)

原作はカザフの科学者にして作家ムフタル・アウェーゾフの短篇小説「灰色の恐しきもの」。しかし、監督のオケーエフ並びに主人公の叔父に扮するシュイメンクル・チョクモロフ(黒澤明監督「デルス・ウザーラ」にも出演)はキルギス人。

 
「白い鳩」«Чужая белая и рябой»
セルゲイ・ソロヴィヨフ監督1986年カザフフィルム(カザフ)

★原作はボリス・リャホフスキー『他人の白い鳩と斑の鳩』。ソロヴィヨフはモスフィルムの監督だが、自分の世代に愛をこめてカザフフィルムで撮っている。「戦争と平和」のナターシャでデビュー、イタリア映画「ひまわり」でも知られるリュドミーラ・サヴェーリエヴァが主人公の父の憧れの女性という役どころで出演している。鳩を飼う話って、イサーク・バーベリの短編にもあったんじゃないかな。

 
「僕の無事を祈ってくれ」«Игла»
ラシッド・ヌグマノフ監督1988年カザフフィルム(カザフ)

★カザフ出身、モスクワ国立映画大学で学んだヌグマノフの卒業制作。主演は伝説的ロックバンド「キノ」のリードヴォーカル、ヴィクトル・ツォイ。ソ連のジェームス・ディーンというか松田優作というかアジアっぽい容貌に長い脚!絶大な人気を誇っていたが、壮絶な交通事故死により、映画出演はこの一作のみになってしまった。カザフ・ニューウェーブの代表作でもある。



「戦火を越えて」«Отец солдата»
レゾ・チヘイーゼ監督1964年グルジアフィルム(グルジア)
★レゾ・チヘイーゼ作品にはこてこてに濃~いグルジアのおじいさんが出演するが、この作品では兵士の息子をはるかに凌駕する大活躍ぶり。ありえない。(このタイプの女性版がソクーロフの「アレクサンドラ」かと。)

 

「結婚」«Свадьба»
ミハイル・コバヒーゼ監督1964年グルジアフィルム(グルジア)
★コバヒーゼの映画大学の卒業制作。映像と音楽だけで、一目ぼれした女性へプロポーズする若者を描いた瑞々しい作品。

 

「傘」«Зонтик»
ミハイル・コバヒーゼ監督1967年グルジアフィルム(グルジア)
★こちらも⑰同様、映像と音楽だけの実験的作風。名作「落葉」に主演したギヤ・アヴァシュヴィリ出演。

 

「ピロスマニのアラベスク」«Арабески на тему Пиросмани»
セルゲイ・パラジャーノフ監督1986年グルジア記録映画スタジオ(グルジア)
★記録映画スタジオで撮っているが、ドキュメンタリーの枠からは完全にはみ出している。ピロスマニの作品を同じ画家としてオマージュを捧げたような作品。

 

「嘆くな!」«Не горюй!»
ゲオルギー・ダネリヤ監督1969年モスフィルム、グルジアフィルム(グルジア)
★グルジア特有のポリフォニーの大合唱、宴会が続き、ソ連コメディー映画御三家の一人ダネリヤの楽しい映画だと思って観ていると、後半は一転ヨブ記のように。
★ロシア旅行中にホテルのTVをつけたら、偶々ダネリヤ特集をやっていて(監督が愛猫とともにインタビューを受けていた)、この作品を放映した。その後字幕付きで観る機会があり、«嘆くな»という事情がわかったが、字幕無しでも前半は楽しめる。



 

21「ルカじいさんと苗木」«Саженцы»

レゾ・チヘイーゼ監督1973年グルジアフィルム(グルジア)
★田舎のおじいさん(こてこてに濃い)と孫が幻の苗木を訪ねてグルジア国内を大旅行するが、このおじいさんの血は孫のカハ(いきなり登場する外国人にも全く動じない、英会話ばっちり&歌いまくり)にしっかり受け継がれているとみた。
★レゾはレヴァズの愛称であるらしい。

 
 

22「田園詩」«Пастораль»
オタール・イオセリアーニ監督1975年グルジアフィルム(グルジア)

★グルジア出身の映画人の中でもイオセリアーニは完全に都会派。なので、都会人の見た田園風景を描いています。

 

23「希望の樹」«Древо желания»
テンギス・アブラーゼ監督1977年グルジアフィルム(グルジア)

★因習に残酷に引き裂かれる純真無垢なカテリーナ・イズマイロヴァ、みたいな話。これを観て私の友人は「私はあれよ、おんぼろ日傘の女性!」と感銘にうち震えながら言ったものです。それだけ胸にぐさりときます。

 
 

24「若き作曲家の旅」«Путешествие молодого композитора»
ゲオルギー・シェンゲラーヤ監督1985年グルジアフィルム(グルジア)

★オタール・チヘイゼの小説『名もなき風』を脚色したもの。

 
 

25「転回」«Круговорот»
ラナ・ゴゴベリーゼ監督1986年グルジアフィルム(グルジア)

★主役は二人の女性、旧友同士が偶然街中で出会う。メラブ・ニニーゼ出演作(というのは個人的なメモ書きです。以前観た時には気がつかなかったな)。

 
 

26「青い山/本当らしくない本当の話」«Голубые горы или неправдоподобная история»
エリダル・シェンゲラーヤ監督1984年グルジアフィルム(グルジア)

24のゲオルギーとは兄弟。小説家が出版許可を得ようと約書をたらいまわしにされる話。確かキューバ映画祭でも似たような映画があった。

 
 

  今日でやっとグルジア映画を終えた(だんだん紹介文が淡白になる)。あと4本は再び中央アジア。ぼちぼちやります。



あと10本ありますが、ぼちぼちやります。