2011年5月30日月曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)“近い外国”の監督作品

①オタール・イオセリアーニ(グルジア出身)新作、フランス映画祭2011で上映
Chantrapas(原題)」
オタール・イオセリアーニ監督フランス・グルジア・ロシア2010
6/25(土)1430 有楽町朝日ホール

★イオセリアーニの半自伝的作品。主人公を演じるのは孫のダト・タリエラシュヴィリ(「月曜日に乾杯!」にも出演)。2012年早春岩波ホール他公開とのことなので、無理にここで観なくてよいかも。イオセリアーニってロシア嫌いを公言していて、2008年の武力衝突後ますます険悪に?と心配しましたが、合作映画を作るくらいはしていると知ってやや安心。でも、彼はフランスに出てからはグルジア時代を超えるような作品はまだ作れていません。“「月曜日に乾杯!」「ここに幸あり」のイオセリアーニ”ではなく、“「落葉」「四月」のイオセリアーニ”なんだけどなあ…。


EUフィルムデーズでのバルト諸国作品及びロシア語作品並びにロシア人出演作
EUフィルムデーズ 5/27(金)-6/19(日) 京橋・東京国立近代美術館フィルムセンター

1.「聖トニの誘惑」«PÜHA TÕNU KIUSAMINE»
ヴェイコ・オウンプー監督エストニア・フィンランド・スウェーデン2009年(エストニア語・ロシア語・ドイツ語・英語・フランス語)
6/10(金)1900 6/12(日)1300

★昨年の東京国際映画祭ワールドシネマ部門出品作。未見。

2.「ドゥスカ」«Duska»
ヨス・ステリング監督オランダ・ロシア・ウクライナ2007年(オランダ語・ロシア語)
6/3(金)1500 6/7(火)1900

★オランダ映画祭2009で上映された怪作(オランダ映画はロシア人を使うのが割と好きなようだ)。セルゲイ・マコヴェツキーが変なおじさんを嬉々として演じている。元々「フリークスも人間も」の変な親父役だからお似合いだ。マコヴェツキー、最近では「戦火のナージャ」にも出演しています。

3.「コロラード・キッド」«KOLORÁDÓ KID»
ヴァーグヴルジ・B・アンドラーシュ監督ハンガリー・イギリス2010年(ハンガリー語)
6/5(日)1100 6/8(水)1500

★日本初上映。1956年ハンガリー動乱ものなので、ソ連絡みかも、ということで。

4.「雨夜 香港コンフィデンシャル」«AMAYA»
マリス・マルティンソンス監督ラトヴィア・中国2010年(英語・広東語・日本語)
6/5(日)1700 6/8(水)1900

★制作国・使用言語・主演女優(桃井かおり)からしてカオスな雰囲気が漂いますね。

5.「渦」«Duburys»
ギーティス・ルクシャス監督2009年リトアニア(リトアニア語・ロシア語)
5/27(金)1500(上映終了) 6/11(土)1600

★ソ連時代の青春を描いたモノクロ作品。日本初上映。

③リメイク、ほんとに作ったの?!
「ロシアン・ルーレット」«13»
ゲラ・バブルアニ監督2010年アメリカ
6/18(土)-新宿ピカデリー/ユナイテッド・シネマ豊洲/MOVIX亀有/MOVIX昭島

★「13ザメッティ」(グルジア・フランス2005年)のセルフ・リメイク。「ザメッティ」では監督の弟ギオルギ・バブルアニが演じていた主人公をアメリカ人俳優が演じるとどうなる?(ザメッティもグルジア語で13のことです)

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)アラノヴィチの“男の世界”がやってくる!

★ソーロフの師、レンフィルムの雄であるセミョーン・アラノヴィチの作品が6月に突如上映されます。いや、とってもありがたいのだけれど、何故いろいろ被るような日程でやってくれるのだ?

①オーディトリウム渋谷「反権力のポジション キャメラマン大津幸四郎」での上映

6/12(日)1240/1700
「アイランズ 島々」«Острова»
セミョーン・アラノヴィチ&大塚汎監督1993

6/12(日)1430/1900
ドルチェ―優しく」«нежно»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1999

★↑別料金です。オーディトリウム渋谷は、ユーロスペース、シネマヴェーラのビル(キノハウスという名前に変わった)の2階です。ともに大津幸四郎撮影作品で、「アイランズ」はЮжные Курилы(南クリル諸島)、日本政府言うところの「北方領土」を、「ドルチェ」は島尾ミホが夫島尾敏雄を語るのを撮ったもの(←かなりソクーロフ節炸裂)。

②川崎市民ミュージアム「シネマテーク・コレクション レンフィルムの輝き」での上映

625日(土)12:30
「きつつきの頭は痛まない」«Не болит голова у дятла»
ディナーラ・アサーノワ監督1974

625日(土)15:00
「私はスターリンのボディーガードだった」«Я служил в охране Сталина, или Опыт документальной мифологии»
セミョーン・アラノヴィチ監督1989

626日(日)12:30
「日陽はしづかに発酵し…」«Дни затмения»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1988

626日(日)15:00-
「マリア」«Мария»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1975年(第1部)・1988年(第2部)

★武蔵小杉駅からバスで市民ミュージアム前へ(結構ある)。ミュージアムでは岩合光昭どうぶつ写真展をやっている!それぞれ別料金。アサーノワはキルギス出身の女性監督。これはいけてない青春もの。可愛い女の子って残酷です。「私はスターリンのボディーガードだった」はタイトルそのまま。「日陽はしづかに発酵し…」はストルガツキー兄弟の『世界消滅十億年前』が一応原作、でも殆ど別作品。トルクメンの沙漠の町が舞台(原作ではレニングラード)のうなされそうな幻想的世界。「マリア」はその後の「エレジー」シリーズに連なるようなドキュメンタリー(でも割とまとも)。

2011年5月24日火曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)すれ違いの恋をスタイリッシュに

「ピーテルFM«Питер FM»
オクサーナ・ブィチコワ監督2006
エイゼンシュテイン・シネクラブ第221回例会(協力:日本ユーラシア協会新作ロシア映画上映会)での上映
2011528()1815 白金高輪・高輪区民センター講習室(高輪コミュニティーぷらざ3階)

★「ルサルカ 水の精の恋」「マルス」等のアンナ・メリキャン監督と並ぶ、現代ロシアで活躍する女性監督のヒット作。主演はエカテリーナ・フェドゥロワとエヴゲニー・ツィガーノフ(「ラフマニノフ」「宇宙を夢見て」「ルサルカ」等)。カメオ出演でウラジーミル・マシコフとかいろいろスターが出ています。2006年という(リーマン・ショック前の)年代がら、おおいにバブリーなロシアの雰囲気が伝わり、何とも目まぐるしい映像表現は「ナイト・ウォッチ」や「続・運命の皮肉」などにも通じるところがあります。そう言えば、婚約までしていながらどうもこの人合わないみたい、と思うとさっさと乗り換えるのって、現実によくあることなのでしょうか??

2011年5月22日日曜日

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版⑦)バルトの国々

『地球の歩き方 バルトの国々 エストニア・ラビヴィア・リトアニア‘11-12
「地球の歩き方」編集室編ダイヤモンド・ビッグ社20114月刊1700+ISBN9784478041260

★20111月からエストニアの通貨がユーロに完全移行。エストニアにとっては、イラク派兵(同国の歴史上初の国外派兵行為。「侵略されたことはあっても侵略されたことはない」歴史にピリオドを打った)とともに時代を画するできごとだったのでは。そんな変わりゆくバルトの国々を紹介。

1994年ヴィリニュス旧市街。変ったんだろうなあ。

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版⑦)ロシア史の周辺

『ヨーロッパの北の海―北海・バルト海の歴史』
デヴィド・カービー,メルヤ・リーサ・ヒンカネン著,玉木俊明他訳刀水書房刀水書房 20115月刊ISBN 978-4887083851

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版⑥)経済学関連2冊

『現代ロシア経済論  シリーズ・現代の世界経済4』
吉井昌彦・溝端佐登史編著ミネルヴァ書房20115月刊3500+ISBN 9784623060368

『ポスト社会主義期の政治と経済-旧ソ連・中東欧の比較 北海道大学スラブ研究センター スラブ・ユーラシア叢書9
仙石 学・林 忠行編著北海道大学出版会220113月刊3800円+税ISBN978-4-8329-6740-3

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版⑤)フェスティバル5周年

『ロシアの文化・芸術 ソ連崩壊20年後のロシアにおける新しい傾向とロシア芸術の魅力の基本的特徴』
長塚英雄編生活ジャーナル社2011年4月刊2800円+税ISBN 9784882591481

★新生ロシア20周年・ロシア文化フェスティバル5周年の音楽・舞台芸術・映画・文学・美術工芸写真芸術・芸術教育について、日露の28名の方が書かれた記念誌。

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版④)未知谷の楽しみな2冊

『エゴール少年 大草原の旅』
アントン・チェーホフ著エカテリーナ・ロシコーワ絵中村喜和訳未知谷20114月刊2200+ISBN978-4-89642-337-2
★チェーホフ・コレクション19冊目は『曠野степのタイトルで知られるチェーホフ初の中編。本書はその約半分を訳したもの。セルゲイ・ボンダルチュク監督による映画化作品曠野степьも必見!画家はエカテリーナ・ロシコーワ(←当初、タバーフと同一人物と書いていたのは誤りです)。

『森のなかまたち 極東ロシア・アムールの動物たち』
 フセーヴォロド・シソーエフ著岡田和也訳森田あずみ絵未知谷20113月刊 2200+ISBN978-4-89642-333-4
★『ツキノワグマ物語極東に続く、シソーエフのロシア・アムールの動物たち」シリーズ第2弾。

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版③)チェルノブイリから25年、フクシマから2カ月の今

『ドキュメント チェルノブイリ【新装版】』
松岡信夫著緑風出版20114月刊(旧版19888月)2500ISBN978-4-8461-1107-6

『チェルノブイリの惨事【新装版】』
ベラ&ロジェ・ベルベオーク著桜井醇児訳緑風出版20114月刊(旧版199412月)2400ISBN978-4-8461-1106-9 C0036

『チェルノブイリ報告』
広河隆一著岩波新書2011621日アンコール復刊(19914月刊)840ISBN978-4-00-46-301688-8

『チェルノブイリの祈り―未来の物語』
スベトラーナ・アレクシェーヴィッチ著松本妙子訳広河隆一解説岩波現代文庫616日刊行予定(単行本は199812月刊)1092ISBN978-4-00-603225-8

★これらはいずれも「復刊」(体裁を変えての出版も含む)で、新たしい資料ではないのですが、“歴史は繰り返す”ことに、私たちが歴史の悲劇から学んでいなかったことに、震撼せざるをえません。

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版②)ロシア史本2冊

『ロシア革命で活躍したユダヤ人たち ―帝政転覆の主役を演じた背景を探る』
中澤孝之著角川学芸出版2011531日刊行予定4725ISBN978-4-04-653751-5
★「ロシア革命を支えた3本の柱、それはユダヤ人の頭脳、ラトヴィア人の銃剣、そしてロシア人という阿呆」などとまことしやかに囁かれていた、ロシア革命とユダヤ人との関わりを探るもの。

『ロシア皇帝アレクサンドル一世の時代』
黒澤岑夫著論創社20113月刊6300ISBN978-4-8460-0841-3

◇КНИГА(書籍情報2011年5月版①) “13番館”へ再び

『総合ロシア語入門』
安岡治子著研究社201133675ISBN978-4-327-39419-6
NHKラジオ講座「13番館へようこそ!」(放送:2005年前期・2006年前期)は今や伝説の名講座。その安岡先生が著した独習書決定版。CD付き。

2011年5月16日月曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)このご時世に原発導入のベラルーシだが

「特集上映25年目のチェルノブイリ」に引き続き、本橋誠一監督作品追加上映
201157日(土)-63日(金) ポレポレ東中野

「ナージャの村」«Надежда»
本橋誠一監督日本・ベラルーシ1997

「アレクセイと泉」«Алексей и Крыница»
本橋誠一監督日本・ベラルーシ2002

★人間の手を離れた自然が、皮肉にも、ものすごく美しい。廃校になったナージャの母校の黒板には«Прошай, наша родная школа!»と書かれている。そして、アレクセイ。彼は今も無事だろうか?

2011年5月3日火曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)バレエ・リュスの遺産、バレリーナ映画の先駆け

「赤い靴」«Красные башмачки»
マイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガー監督1948年イギリス
201172日(土)- 渋谷・ユーロスペース(デジタルリマスター・エディションでの上映)
★バレエ・リュスの中心人物だったレオニード・マシーンが出演と振り付けで大活躍、リュドミーラ・チェリーナ(ロシア風の名前で、確かにロシアからの亡命者の家系だが、チェルケス系とのこと)も出演。この後彼らはヒロインのモイア・シアラーともども「ホフマン物語」«Сказки Гофмана»でも共演しています。

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報) 追悼ヤンコフスキー

「精神政界への招待」での上映
キネカ大森 2011528日(土)-63日(金)
「鏡」«Зеркало»
アンドレイ・タルコフスキー監督1975年ソ連
★天下のタルコフスキーなのに!二本立ての組みあわせ酷過ぎ(トリアー作品は一応タルコフスキーに捧げられてはいますけど)。他のプログラムも謎に二本立てだが(「海の沈黙」&「白いリボン」以外)。6月にDVD発売される「ドクトル・ジバゴ」出演のオレグ・ヤンコフスキーを偲びましょう。

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)お洒落にフィルムでバルネット&プドフキン

京橋映画小劇場「映画の教室2011
京橋・東京国立近代美術館フィルムセンター小ホール 201156-522日の金・土・日
「母」«Мать»
フセヴォロド・プドフキン監督1926年ソ連
56日(金)1800/515日(日)1200
★プドフキンもコメディーを撮っていますが、これはゴーリキーの小説が原作の真面目な作品。エイゼンシュテインの「戦艦ポチョムキン」、ドヴジェンコの「大地」とともに、ソ連サイレント3大作品なのだとか。確かに流氷の場面など映像美はひけを取らない。
「国境の町」«Окраина»
ボリス・バルネット監督1933年ソ連
58日(日)1200/520日(金)1800
★とってもチャーミングなのに、なぜか日本でDVD発売されていないバルネット。この作品はバルネットの中でも悲劇性が強くギャグもやや滑りがちではありますが、素朴な中に反戦の芽生えが窺えます。ヒロインのクジミナは当時の監督夫人。アレクサンドル・チスチャコフは「母」にも出演していたのですね。