2015年4月24日金曜日

◆КНИГАウラジーミル・ソローキン「氷 氷三部作2」

ロシアでなければ生まれないロマンだ、という指摘はそのとおりだろう。


「氷3部作2」となっているが、やはり3部作の2番でで、日本語訳の刊行が時系列順ではなく、執筆順ということなのね。映画「スターウォーズ」みたいに途中から見せていくってわけか。今まで大嫌いだったソローキンだがこれは読んでみようという気になった。
そして。
あー、やっぱりソローキンだった。ソローキンだったじゃないか、あーあ!
はい、あのアレクセイ・ゲルマン監督の遺作にこれはと思える人にはよいのではないかと。
残酷描写、排泄表現の編愛、陰謀史観を下敷きにしたようなファンタジーで、「大祖国戦争」~21世紀初頭のロシア(ソ連)に生きる、金髪碧眼の人々の物語は、案の定読後感の悪いものだった。
第一部は一見戯曲風でかなり読みやすくはあるが。
仲間以外への冷酷な仕打ちがとってもいやーな感じ。
でも続編は読むと思う。

ルキヤネンコの「夜間警備(ナイト・ウォッチ)」は映画になったが、こちらは舞台化の方がよさそう。
で、アルトゥール・スモリヤニノフくんとか似合いそうである。

2015年4月23日木曜日

◆КНИГА あらゆる民族的抑圧にニェット~ 『コーカサスと黒海の資源・民族・紛争』

カフカースの諸民族について、古から現在まで、ざっくりと掴むのによいかと。


『アルメニアを知るための65章』はこのシリーズには珍しく対象に心を入れ込んでいるような(特に虐殺など歴史問題において)強い印象を残したが、その著者によるもの。この本でも、抑圧側に立つ人々への視線はとても厳しい。(もちろんそれはそうあるべきだ。)言語においてあるものが特権を持ってはならないという、それはカフカースのみならず、例えばウクライナでもそうなのだろう…。
率直に言って、強烈にアルメニア寄りであり、さらにレーニン時代のボリシェヴィキの民族政策には共感を示しているようだ。だから、スターリン以降のソ連・ロシアには非常に批判的であり、「長い間被って来た不公正・差別に対する抵抗から生じたアルメニアの民族主義と、「反アルメニア」の排外主義的敵対を組織してきたアゼルバイジャンの民族主義を「民族主義」一般として同一視」してはならないとする。グルジアの起こした数々の争乱にしてもロシアとの関係というより自らのマイノリティー抑圧主義によるものだと厳しい指摘がある。やはり、考えさせられることの多い本だった。

2015年4月19日日曜日

◆КНИГА ほのかに明るいドストエフスキー 『白夜/おかしな人間の夢』

安岡治子先生、『地下室の手記』に続いて、ピーテルのオタクを訳す。


「白夜」の映画で一番好きなのはミュージカル映画かと見紛うような明るい幻想シーン、書き割りながらペテルブルグの下町の運河沿いの様子を美しく描いたイワン・プィリエフ監督作品。はちゃめちゃ場面あれど一番原作に忠実だと思う。
こんなドストエフスキーじゃだめ?

◆КНИГА 宇多先生3冊目のピーテル本

宇多文雄先生で2冊目、ペンネームの小町文雄先生名義を含め3冊目のペテルブルグものであります。


宇多先生は既に何冊もペテルブルグについて書かれている(ペンネームの小町文雄名義も含める)ので、重複する部分は多い。社会主義のレニングラード時代は大っ嫌い!が徹底していらっしゃる(が、もう少しここのあたりを詳しく知りたい気はある)。現在のピーテルは、ガスプロムとゼニットに席巻されているが、それに関しては見どころはないとお考えなのだと思われる。
目新しいところで、ロマノフの妃たちは父称がフョードロヴナだらけ(アレクサンドラ・フョードロヴナ、マリヤ・フョードロヴナ等)だが、その理由が書かれていた。なーるほど。
それからぺテルゴフのモンプレジールは小さくて何が凄いのか今までわかっていなかったが、歴史を知るとまた見方が変わってくる。
そういった豆知識が沢山あってよい。
ただ、やっぱりロマノフ中心であるのは否めなくて、レニングラード封鎖についての博物館の案内についてはもう少し厚く記されていたらなあと、ちょっと残念(全体のバランスは悪くなるかもしれないが)。






あの「死の試合」の日レニングラードでは«しかし、ミューズは黙らなかった» ショスタコーヴィチのレニングラード交響曲レニングラード初演をした人々についてのノンフィクション『戦火のシンフォニー』読了。
この本においては、長いこと公然の秘密だったレニングラード封鎖中の人肉売買について、ラジオシンフォニー楽団員の日記からの生々しい証言がある。彼女の同じアパートの人が行っていた!親しい幼馴染だったのではないか、トーリンカと呼んでいることからして。ブログにも感想を書いた。http://kirakocma.blogspot.jp/2014/09/89.html

◆КНИГА 惜しい『新ロシア語読本』

せめてツェスカに来てからの記事だったらなあ。
あるいはマンチェスター・ユナイテッドでもカンチェルスキスのインタビューだったらなあ。
とか。

もっと贅沢を言えば、ロシアの若手選手についての記事がいいのだけど、若手選手は教科書にふさわしいような話し方をしないのですよね。
ブログやツイッターの文章なんてなおさらだ。

やはり安心して楽しく読めるのは文学作品、ということになりそうだ。
でも、新聞記事など実用的な文章にも慣れないとね。

あとはひたすら地道に読んで訳していく。
それが大事。


初級・中級・上級にわかれ、それぞれテクスト・注釈・訳文が並んでいる。”古典文学からレシピまで”というタイトルのとおりいろいろなタイプの文章が載っているが、その内容を面白いと思えるかどうかでこの本で学ぶ意欲に差が出そうだ。最大の不満はせっかくサッカー選手の記事が取り上げられているのにそれがゾラン・トシッチのマンチェスター時代のインタビューで、ロシア人選手のものでもロシアリーグについてのものでもないこと。折角だからロシアサッカーが題材になっていて欲しかったので、がっかりした。(スポーツ関係のテクストはこれだけのようだ。)

2015年4月18日土曜日

◆КНИГА『黒澤明と「デルス・ウザーラ」』 心惹かれる制作秘話

この本によると、黒澤監督はこの本の著者ワシリーエフさんを映画監督として育てようとしたらしい。
ワシリーエフさんは監督としては、ドキュメンタリーを撮り(黒澤監督絡み)、自らの脚本で8本の短編を制作したとあるが、黒澤映画のような作品は残していないようだ(今のところ)。
これに関しては、もし今存命であれば黒澤監督はどう思われるだろうか?
もちろん、こういったメイキングの記録を伝えるのは貴重なことだ。


一言で言って映画「デルス・ウザーラ」制作秘話。さすが巨匠はこだわり方が違う。というのでトラの撮影の苦労話は並みじゃない(ソローキンが役を降りると言う始末)。主役ムンズークのエピソードはなかなかおもしろい。そして、映画祭用に大幅に削る前のオリジナルの作品を観ることはできないのだろうか?ととても残念に思う。幻に終わった日ソ合作黒澤映画についても。

◆КНИГА私のチェーホフシリーズ~『わが心のチェーホフ』

オデッサ海岸通り: 「私のチェーホフ」あるいは「私とチェーホフ」: ロシア文学マニアでなくても、なぜは人は「私のチェーホフ」という文章を書きたがる。 わが心のチェーホフ 著者 : 佐藤清郎 以文社 発売日 : 2014-12-17 ブクログでレビューを見る» ロシア文学を耽読し、「身の丈に合...

ロシア文学を耽読し、「身の丈に合った同伴者をチェーホフに見出した」90代半ばの著者によるチェーホフの総括である『わが心のチェーホフ』(佐藤清郎) やっぱりチェーホフについてが一番書きやすいのだろう。

2015年4月12日日曜日

◆КНИГАあらゆる民族的抑圧に抗して 『コーカサスと黒海の資源・民族・紛争』

コーカサスと黒海といっても、やはりカフカース地域中心で、ウクライナ、ブルガリア、トルコ等の黒海沿岸国の話はあまりないようだ。
アルメニアへの肩入れが目立つ。


『アルメニアを知るための65章』はこのシリーズには珍しく対象に心を入れ込んでいるような(特に虐殺など歴史問題において)強い印象を残したが、その著者によるもの。この本でも、抑圧側に立つ人々への視線はとても厳しい。(もちろんそれはそうあるべきだ。)言語においてあるものが特権を持ってはならないという、それはカフカースのみならず、例えばウクライナでもそうなのだろう…。考えさせられることの多い本だ。

◆КНИГА そろそろ読んでみようかソローキン『氷 氷三部作2』

まだ読み始めてもいないのですが、


「氷3部作2」となっているが、やはり3部作の2番でで、日本語訳の刊行が時系列順ではなく、執筆順ということなのね。映画「スターウォーズ」みたいに途中から見せていくってわけか。今まで大嫌いだったソローキンだがこれは読んで観ようという気になった。

2015年4月9日木曜日

◆КИНОФИЛЬМフォーキン&ミローノフの傑作「変身」無料上映!!


「変身」«Превращение»
ヴァレリー・フォーキン監督2002
原作:フランツ・カフカ『変身』


4月23日(木)午後6時から(開場午後5時30分)午後7時30分まで
定員:当日先着30名

★元々は舞台作品(コンスタンチン・ルンギン主演・サテリコン劇場)で、ザムザ=虫役のルンギンの力演は物凄かったらしい(友人談)。
★しかし、この映画でのザムザ=虫を演じたスター俳優ミローノフも圧巻。2000年代、文芸映画の公開が少なかったロシア映画@日本にあって貴重な力作でした。
主役のミローノフの迫真の演技、上司役レオンチェフの存在感、大化けしそうな妹役の女優の清新な魅力、地味だが、いや地味だからこそ役柄を全うしている父と母を演じた俳優達(母親役はミハイル・ロンム監督「一年の九日」のヒロインだったタチヤナ・ラヴロヴァ)に漂う気品、全て懐かしく思い出す。もう一回観たい!しかし、平日のこの時間だとちょっと…。ご都合の付く方は是非!無料です。