2015年12月22日火曜日

◆КНИГА『シベリアの掟』

遅まきながら今読んでいる『シベリア』、読みやすくておもしろいな。独特を持つ共同体(マフィアみたいな犯罪をものともしない集団だがある種モラルという仁義がある世界)はシベリアに存在するのかと思っていたら…

イタリアに移住した作家による一種の回顧文学なのだが、おそらくコサックみたいな無頼の共同体で育った若者の話。作者の自伝的な話なのだろうか。タイトルのとおり、シベリアの話かと思って読み進めていたら…。「犯罪者」たちと訳される、確かに近代法制からは十分に外れた、しかしそれなりに仁義ある共同体についてのノスタルジックな語りに途中からソ連解体の歴史と現実がいきなり雪崩れ込んでくる。バーベリの小説にも登場する、オデッサの犯罪王その名も「王様」の話も出てくるし、案外ソ連文学の正統な系譜(とりわけオデッサ派の)と言う感じも。続編、及び映画化が楽しみだ。

映画「マックスへの手紙」のマックスは未承認国家アブハジアの大臣をやったりしたけれど、結構若い。彼の故郷はソ連解体時突然グルジアが攻めてきて紛争に。仲良く暮らせていたソ連時代に帰れたらいいのに、でももはやグルジア人とは一緒に暮らせないと。
グルジア人には勿論反論もあろうことかとは思うが、観ていて複雑な気持ちになった。
もう一度観たい映画で、今年観た映画ベストイレブンにも選んだ。
『シベリアの掟』の主人公もこの手のソ連時代のノスタルジーあるみたい。

『シベリアの掟』主人公の属するシベリア起源の共同体ウルカはコサックみたいなもの?と思って読み進めていたが、やはり似て非なるものらしい。コサックは自由の民でありつつ時に帝国の防人として国家権力とも近しくなる場合もあるが、シベリアの民は徹底的に国家に靡かない。

「ウルカ」が友好的な関係を持っていたのが、アルメニア人、ベラルーシ人、コサック。逆に対立関係にあったのが○○人(「心から憎み合う関係になった」)と●●人と書かれているの見て、溜息。この本、イタリアで発表されたのは2009年なのだが…。

2015年12月10日木曜日

◆Спектакль森は生きている/12の月


年末年始の定番「森は生きている(12の月)」«Двенадцать месяцев»特集です。

①劇団仲間公演「森は生きている(十二月物語)」
 サムイル・マルシャーク作湯浅芳子訳髙田潔演出
 12/23(水・祝)~27(日)・1/4(月)~5(火) 紀伊國屋サザンシアター

1959年初演、「燃えろ燃えろあざやかに」の焚火の歌が歌い継がれている、音楽は林光。

②オペラシアターこんにゃく座『森は生きている』
 サムイル・マルシャーク作湯浅芳子訳 台本・作曲:林光 演出:大石哲史
    12/16(水)東松山市民文化センター(埼玉)
  12/19(土)まつもと市民芸術館(長野)
    20163/13(日)プラザノース(埼玉県さいたま市)

★東京公演はすでに終了(11/27かめありリリオホール)。同じ話がオペラ(というよりミュージカルだと思う)だとこんなに違う!と観ていてとても楽しい。

 
③人形劇団プーク「12の月のたき火」
 スロバキア民話より 川尻泰司作・演出プラン 岡本和彦演出
 12/19(土)~27(日) 新宿南口・プーク人形劇場

★ヒロインはマルーシャでスロバキア民話となっているが、ストーリーはマルシャークの「12月」そのもの。早逝した中山杜卉子の美術が40回目の今回の公演でもそのまま使われる。ブラックシアターと黒子の出遣いによる糸操り人形の舞台は今でも少しも古びていない。
 
 
Книга
上記のサムイル・マルシャーク原作本
①『森は生きている』
湯浅芳子訳岩波少年文庫200011月刊 ISBN9784001140729
②『森は生きている』
湯浅芳子訳岩波書店1972年刊ISBN9784001108385
★①の単行本版。挿絵はやはり大きい版の方が美しい。
③『世界の名作12 森は生きている』
宮川やすえ絵小学館冠199810月刊  ISBN9784092500129
★訳者名記載なし。
④『12つきのおくりもの』
杉田豊絵白井三香子訳フレーベル館19971月刊  ISBN9784577015667
⑤『12の月たち』
ダイアン・スタンレー絵松川真弓訳評論社1986年刊  ISBN9784566002654
 上記③の原作
12のつきのおくりもの』
スロバキア民話丸木俊絵内田莉莎子再話福音館書店200711月刊ISBN 9784061323698
 

2015年11月24日火曜日

◆КНИГАヘフツィール物語

可愛い挿絵は日本語版オリジナル。
元々は作者が絵も描いて自分の子どもに話して聞かせていたらしい。
児童文学の王道だな。

ウサギ主人公、森の仲間と人間の子どもたち登場のほのぼの物語。
ウサギがバスに乗る時「ウサギなので切符は買わなくていい」と車掌さんに言われるところで声に出して笑い、車掌さんに花束のプレゼントする場面にじんわり感動。
最初に出てくる人間の女の子ナースチャが妹が出来大きくなって物語を聞かなくなるという設定がナルニアのスーザンみたいで切ない。ラストまで切なかった。

2015年11月21日土曜日

◆КНИГАウラジーミル・ソローキン「ブロの道 氷三部作1」


前作(『氷』)ほどグロくなくてよかった。というかこの文体に慣れたか?ああ、そうですか、最終作も読みましょ、って感じ。

ちなみに、前作についてはこちら で紹介。やっぱりソローキンだった!という。

2015年11月12日木曜日

◆Спектакльポリーナ・ボリソヴァ「GO!」"Иди! "

ポリーナ・ボリソヴァ作・演出・美術・出演「GO!」"Иди! "

11/25,26 新宿南口・プーク人形劇場

(その後札幌・名古屋・神戸・飯田等に巡回)

 

★ポリーナ・ボリソヴァはロシア出身(サンクトペテルブルグ州立劇場芸術アカデミー卒業)、現在はフランスを拠点に活動するアーティスト。

★定評のあるロシアの人形劇をも学んだ方だが、この公演は一人芝居。「白いテープを用いて自身を人形のように変化させる独特の演技様式」とのことで、“人形を登場させない人形芝居”なのだとか。

★プーク人形劇場では久々のロシア人の公演(フランス扱いですが)では?

★昨秋、プーク人形劇場海外特別公演では、ブルガリアのクレド・シアター(ニーナ・デミトローヴァ演出)「外套」(ゴーゴリ原作)を観て、これも“人形劇のようで人形劇でない”という触れ込みでしたが、果たして今回は…?

◆Кинофильм「杉原千畝 スギハラチウネ」"Сугихара Тиунэ"

「杉原千畝 スギハラチウネ」"Сугихара Тиунэ"

2015/日本 チェリン・グラック監督

12/5~ 東宝系で一般公開

★日本出身のアメリカ人監督による伝記映画。ポーランドで撮影、キャスト・スタッフもポーランド人が多く参加しているようです。(リトアニアはあまり関係していない模様)

★試写会に行った人の話は「何だかなあ」なのが気にかかる。

2015年11月8日日曜日

◆КНИГА『シンプルがかわいい 北欧の生活雑貨手作りノート』

エストニアの豚編みぐるみ(表紙)、大人気。
できる人には数時間で編み上げられる由。

エストニアスパイラルのリストウォーマー
エストニアの編みぐるみ

最近ではエストニアは北欧枠なんだよね。

2015年11月6日金曜日

◆Кинига「ロシアン・スナイパー」参考図書


①『フォト・ドキュメント女性狙撃手: ソ連最強のスナイパーたち』
ユーリ・オブラズツォフ モード・アンダーズ 原書房 (20150724日発売)★入門的な本だと言えましょう。

 

②『狙撃兵 ローザ・シャニーナ――ナチスと戦った女性兵士』
秋元健治著現代書館 (201510月発売)
10月に刊行したばかりで未読。

 

③『戦争は女の顔をしていない』
スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ著三浦みどり訳群像社 (200807月発売)

★先日ノーベル文学賞を受賞したベラルーシのジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエヴィチの代表作。「大祖国戦争」に従軍した女性たちのルポ。支度金を渡されてその全額でチョコレートを買ってしまったまさに女の子だなあと言うエピソードが印象深かった。

★群像社が版権切れになっていたため、新たには入手困難かもしれないが、必読!

2015年11月5日木曜日

◆Кинофильм「ロシアン・スナイパー」"Битва за Севастополь"


「ロシアン・スナイパー」итва за Севастополь"

2015/ロシア・ウクライナ/123分 セルゲイ・モクリツキー監督

ヒューマントラスト渋谷で特集上映(MDGP(モースト・デンジャラス・シネマグランプリ)2015)中(明日まで!DVD12/2発売予定

★ウクライナの出身の天才女性狙撃手リュドミーラ・パヴリチェンコの実話に基づくドラマ。ルーズベルト大統領夫人の回想として描かれる。これも実話なのか知らないが、父は軍人だが母は英語教師で、リュドミーラ自身も英語ぺらぺらという設定。

309人を斃し「死の女」と呼ばれたそうだが、映画の冒頭で「人間ではありません、私が殺したのは309名のファシストです!」とのかっこいい台詞。最初の印象と異なり、割と惚れっぽい。特に上官をすぐ好きになる。その一人がエヴゲニー・ツィガノフ(「ラフマニノフ」「宇宙を夢見て」「ピーテルFM」「ルサルカ~水の精の恋」等々)。

★最初の上官はマカールとイーミャ(個人名)風に呼ばれていたけど、ロシア語の情報だとМакаровкапитанとあり、マカロフという苗字だった事しかわからない。リューダが「死の女」なのは身近な男たちにとってでは?

★リュドミーラ・パヴリチェンコはキエフ大学史学部に入学、在学中に射撃の腕を見込まれてКМБКурс молодого бойца)にスカウトされる。開戦と共に召集?でオデッサ、次いでセヴァストーポリに戦線に配属。というストーリーであり、このご時世にウクライナとの合作映画であるのに注目したい。

★よってウクライナのスタッフも多いようで、エンドクレジットに一人囲みがしてあって気になったが、それはヴィタリー・レネツキーというКМБ教官役の人?(知らなかったがウクライナの有名俳優だった由)で、弱冠42歳で去年亡くなっていた。死因は酔って階段から転落という、まるでアンドレイ・パーシンのような…。役者さんたち、命は大切にしてくださいよ。

★ヒューマントラスト渋谷の「MDGP(モースト・デンジャラス・シネマグランプリ)2015」)では11/1420にはカザフスタン映画「ザ・ファントム」を上映(ただし英語)。

2015年11月2日月曜日

◆КНИГА『法を通してみたロシア国家』

映画「裁かれるは善人のみ」を観て、並行して読みたくなった本。 第5章「ロシア文学と法」ではニキータ・ミハルコフの「12人の怒れる男」を紹介しているが、むしろこの映画を紹介してほしかった気がする。 (時期的には困難なのは承知であるが。)


なお、結論から言うと、「現在のロシアは辛うじて法治国家」という評価になっている。 ということは、日本よりは少しだけましってことなのだろうか???

2015年10月28日水曜日

◆Передача/Кинофильм レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺~Сладкая осень №1

「レジェンド・オブ・ヴィー 妖怪村と秘密の棺」 "Вий"
2014年/ロシア/ウクライナ/チェコ/112分
11/6(金)午前9:00~ WOWOW
★ゴーゴリ原作『ヴィー』、アレクサンドル・プトゥシコ監修の「妖婆 死棺の呪い(魔女伝説ヴィー)」のリメイク?
★アクション・スターのアレクセイ・チャドフ(「ナイト・ウォッチ」「デイ・ウォッチ」のコースチャ、「ストリート・レーサー」、「第九中隊(邦題:アフガン)」、「チェチェン・ウォー」)出演(というか彼しか知っている人がいません)。

◆Передача/Кинофильм ソルジャー・オブ・フューリー Сладкая осень №1

「ソルジャーズ・オブ・フューリー」"Чужая война"
2014年/ロシア/89分アレクサンドル・チェルニャエフ監督

11/21(土)深夜3:30~WOWOWシネマ

★北ベトナムに旧ソ連の軍人が多数送り込まれていたという史実を背景にした、ロシア生まれのミリタリーアクション映画、とのこと。元々はTV連続ドラマ(серия)のようです。未見。

◆Передача/Кинофильм 国際共同制作プロジェクト もしも建物が話せたら(前編) Сладкая осень №1

「国際共同制作プロジェクト もしも建物が話せたら 前編」 "Храмы культуры (сериал)"

11/1(日)深夜1:00~ WOWOWプライム 
監督・製作総指揮 : ヴィム・ヴェンダースВим Вендерсのオムニバス6篇の一つにミハエル・グラウガーМикаэль Мэдсен監督「ロシア国立図書館(ロシア・サンクトペテルブルク)」

★第27回(2014)東京国際映画祭特別招待作品(未見)
★ミハエル・グラウガー監督のロシア国立図書館は1795年に建てられたもの。ロシア最古の公共図書館ではロシアで発行された印刷物はなんでもそろう。(番組紹介より)
★«Что могли бы рассказать о нас здания, если бы могли говорить?» — в фильме звучат шесть ответов на этот вопрос.(ロシアの映画検索サイトキノ・ポイスクより)

◆Передача/Кинофильм ブレスト要塞大攻防戦 Сладкая осень №1

「ブレスト要塞大攻防戦」"Брестская крепость"
 11/11(水)午後2:30~ WOWOW プライム
2010年/ロシア/ベラルーシ/139分

★先週の授業で”За мной”というフレーズが出てきたとき、思い出してしまったのがこの映画なのです。ナチス・ドイツの電撃攻撃をベラルーシのブレスト要塞で迎え撃つことになるソ連兵たち、なす術なんてほぼないので、隊長が”За мной! Ура!”(私に続け、ウラー!)と突撃すると、部下の兵士(義勇兵だったかも)たちも"Урааааа!!!!"と続き、部隊壊滅へ、という悲惨な戦争映画。
★監督は、現在「草原の実験」が公開上映中のアレクサンドル・コット。でも作風は全然違います。
★こちらはソ連・ロシアの伝統的な戦争映画だし、エレーナ・アンのような美少女も登場しないが、ロシアではこちらの方が高評価のようです。つまりはロシアにとっての関心は大祖国戦争>>中央アジアなのでしょう。

★ブレストは国境近くの都市なので、ナチス・ドイツが真っ先に攻めてきて、しばらく頑強な抵抗を続けたということで、1965年5月8日にキエフ・モスクワと共に英雄として顕彰されています。(都市ではなく要塞としての称号で、英雄都市ならぬ英雄要塞(Крепость-герой)となっている)。
★ブレスト攻防戦の映画はきっと他にもあるのだろうけれど、ロマン・カルメン監督の長編ドキュメンタリー映画「大祖国戦争」(冒頭に、236人の従軍写真家による記録映像であり、うち40人が犠牲になった、とある)では、ブレストの攻防戦に関する面で、煉瓦が溶けるほどの砲弾の嵐の中で、兵士たちが「さらば祖国よ(Прощай Родина)」の文字を壁に書き残ししていたのが心に深く刻まれました。

★ヒューマントラスト渋谷で特集上映(「未体験ゾーンの映画たち2015」)され、DVDも発売されています。またYouTubeで全編観ることが可能とのこと。

2015年10月25日日曜日

◆КНИГА黒いロシア 白いロシアーアヴァンギャルドの記憶



ロシア・アヴァンギャルドについての考察も素晴らしい(民衆演劇・街頭芸術と、より通りへ出て、民衆の中の芸術を体現していたという、今実に思い思いのフライヤーやプラカ持参でパレードする人々を目撃して”こんなものだったのかも”と思う)が、著者がジャーナリストとして滞在したペレストロイカ~エリツィン時代のロシア(グラスノスチの変容等)の証言的なエッセイ、レトロスペクティヴ的な諸々、読みやすく深い。
画像が現れないので、ここに貼っておく。

3500円と高価ではあるが、おもしろく、読みやすい。
名著なので、是非多くの人の目に触れてほしいと思う。

昨日は、著者武隈喜一さんによる亡命歌手ヴェルチンスキーについてのレポートが桑野塾であった。
ヴェルチンスキーは革命前のキャバレーで一世を風靡したロマンス歌手、亡命した先々で歌った「長い道を」は世界中でヒット。
その後、ハルビン、上海を経て、ソ連へ帰国。

「長い道を」は私も大好きで、昭和女子大のユーラシアサロンで山之内さんが講師をされたときに、こんなのを書いていた。

オデッサ海岸通り: 長い道を: 年齢がばれてしまうかもしれないが、その曲、私は「花の季節」で習った。 いや、今教科書を広げてみて、何の書き込みもないところをみると、授業ではやらなかったのかもしれない。 でも、私はリコーダーを吹くのが好きだったので、授業でやらなかった曲も、教科書に載っていたのは全部自分なりに...

「黒いロシア」の野蛮な限りには戦慄するしかないが、白いロシア、なのだろうか?「Ⅳ モスクワれとろすぺくてぃぶ」に登場するロシアの人々(古書商、音楽やバレエのコアなファンたち)が微笑ましいし、こんな出会いをされた著者が羨ましい。
とか言いながら、チャイコフスキーコンクールの会場に折り畳み椅子を持ち込んで自信たっぷりに評価を下す「アボーシカおばさん」や「〈マリインスキイ劇場〉の常連たち」で触れられるマハリナファンの強烈な女性に対し、堂々ヤポーンスカヤ・チョーチャの私としては実は似たようなことをしているので呆れるというより苦笑苦笑ですわ。
(開場前に並びそうなイメージフォーラムでの上映初日初回の鑑賞に備えて、真夏だったこともあり、折り畳み椅子持参して、実際使ったことがあるし~まあ、劇場内ではなくあくまで開館前に炎天下の外で待たされているときに折り畳み椅子に腰かけ、日傘さして待っていたのだが~、バレエでも第3幕になったら、空いているいい席に移動して観たことは何度もある。)
それ、別に恐ろしあじゃないですよ、と。


2015年10月22日木曜日

◆КИНОФИЛЬМ「独裁者と小さな孫」

今、小さい子連れて歩いている独裁者と言えばルカシェンコだが、この映画が撮影されたグルジアも、現代において独裁者を輩出?してきた土地柄であり、イランの著名な監督であるマフマルバフがグルジア語で、グルジア人俳優たちを使って撮ったこの映画は、サアカシヴィリらグルジア政界の独裁者のお歴々を思い出さずにはいられない、不思議な作品なのである。

「独裁者と小さな孫」"Президент"
Режиссёр:Мохсен Махмальбаф (перс. محسن مخملباف)

当然まだ書きかけ

2015年10月12日月曜日

◆Кинофильм 草原の実験

渋谷・イメージフォーラムで公開中。
ただ、時間があまり観に行きやすくない。
12:10とレイトショー。

以下はメモ代わりにツイッターに投稿したものを貼りつけたので、まとまった文章にいなっていません。

「寡黙にして雄弁な東京国際映画祭の上映作品群」として、「メルボルン」「遺灰の顔」「コーン・アイランド」「ナバット」までブログに書いて、この度一般公開の報があった「草原実験」と「ボーダレス ぼく国境線」(「ゼロ地帯子どもたち」)のレビューは書いていないままだった。おお。

今年(2014)映画12:ロシア「メトロ42」「ガガーリン」「草原実験」ソ連「石の上の花」イラン「夜行バス」「ゼロ地帯子どもたち」ポルトガル「家族の灯り」フィンランド「白夜のタンゴ」ポーランド「裏面」ハンガリー「悪童日記」アゼルバイジャン「ナバット」スペイン「ジプシー・フラメンコ」

今回東京国際映画祭で観たのは台詞が極端に少ない作品ばかり。「草原実験」は台詞一切無し、「コーン・アイランド」「ナバット」「ゼロ地帯の子どもたち」も寡黙。が、作品の語る力は大きい。


友人たちに強く推していた映画「草原の実験」、観た友人からの便りがあり、久しぶりにいい映画を観た、音楽担当のアレクセイ・アイギが「あの大詩人アイギの息子」であることに驚き、芸術の才能が引き継がれた、と大変喜んでもらえた。で、私ももう一回観に行った。たまらなく美しい作品なのだった。

二回目観た「草原の実験」、美少女エレーナ・アンの描き方とか、ある意味男性のファンタジー要素が強くて、皆普段どういう暮らしをしているのか謎ばかりの不思議な映画。ほんとに美しい風景と音なのだが。女性監督が撮ったら、保存食作りするシーンとかありそうだけど、そういうの一切なし。意外と生活感薄い。

「草原の実験」は台詞がないので、最初に観た時は意識しなかったが、エンディングのクレジットには役名が書かれていた。ヒロインДинаジーナ(プログラムでは“ジーマ”と大々的に書かれていたけど…)、お相手 Максимマクシム,父Толгатトルガト, 幼馴染Кайсынカイスィン 。
ジーマだとドミトリー略称で男の子みたい。実を言うと、マクシムもクレジットだとМаксだった気がする。あれ、ロシア人のようで伝統的なロシア人ぽくない(最近のサッカー選手には多いが)、収容所惑星みたいって思った。
映画「草原の実験」出演のダニーラ・ラッソマヒンくん、次回作はベスプラルィ監督作品「レールモントフ」のグレボフのようだ。РУТИ-ГИТИСという演劇大学を2014年に出て、今はチェロヴェク(人間)劇場。
http://www.chelovek-theatre.ru/actor.php?page=drassomahin

http://www.film.ru/articles/zavtra-byla-bomba

映画「草原の実験」出演のダニーラ・ラッソマヒンくんの出演映画はこれまで3本。“...за имя Мое”(2005)(短編)、“Кухня ”(2012年)(コメディー)、1992年12月29日モスクワ生まれ。軽業系は得意みたいだ。
https://www.youtube.com/watch?v=VPeaFrz0Sqo

「草原の実験」「トルパン」「三人兄弟」のカザフ3本に、「ウルガ」あたりを挙げておこうか。モンゴルでもいっぱいありそうだなー。

「草原の実験」のアレクサンドル・コット監督の前作は「ブレスト要塞大攻防戦」で、普通に戦争映画やスタンダードな文芸ものを撮っていた彼が、何だか突然覚醒したって印象。でもロシア国内の評を見ると、ロシアの人たちにとっては中央アジアの草原の話より大祖国戦争での戦闘の方が身近なのか高評価。
ロシアでは総じて「ブレスト」>「草原の実験」みたいだ、という趣旨です。ヒロインの魅力に感じ入るのも、ラストに「衝撃」を受けるのも、ある意味日本ならではなのかもしれない。ロシアやアメリカ、中国といった大国をはじめ世界中の人々に感じてほしいが。

映画の舞台となったのはカザフの草原(最初観た時はセミパラチンスクとかを想起しつつも、作品としては地名や時代を特定せず、”どこともしれない、いつともしれない”感を出している~その方が”今、ここ”との繋がりを示せるかも…と思ったけれど、二回目に観るとラジオから流れるのはロシア語のニュースだし、イズベスチヤ読んでいるし、お出かけにトランクに入れるのはマヤコフスキーだし、旧ソ連中央アジアをばっちり描いていたわ)だが、実際の撮影はクリミア半島のフェオドシヤで行われたとのこと。意外だった。



2015年10月11日日曜日

◆КНИГА声に出して読みづらいロシア人 (コーヒーと一冊)

日本人にとって難解なロシアの有名人(文学上の人物も登場)の名前を解説。おもしろおかしく書いてあるけれど、発音のコツのコーナーはとっても実用的!スポーツ選手はスタルヒンとザンギエフと、ちっとも読みづらくないチョイスだから、是非ベシャスヌィフを入れてほしかった。女性の項が全然ないのが惜しい。フィギュアスケート選手とかでいそうじゃないか。

2015年9月23日水曜日

◇КНИГА ミステリヤ・ブッフ

今は亡きベニサン・ピットで観たことがあったが、こんなに薄くて短い戯曲だったのか?と意外な印象。

2015年9月22日火曜日

◇КИНОФИЛЬМ「ボリショイ・バビロン」

ル・シネマで上映中の「ボリショイ・バビロン」
今日は火曜のサービスデイ且つ休日なので、午前の回から満席御礼が続いていました。

映画を観ても、あの、セルゲイ・フィーリン硫酸襲撃事件の真相は謎のままだ。
(ドミトリチェンコが真犯人とは到底思えないという印象を受けるような作り。)
バレエのシーンは沢山あってよかった。眼福!

登場人物は
・マリーヤ・アレクサンドロワ
・マリーヤ・アラシュ
・アナスタシヤ・メーシニコワ
(プログラムではアナスタシアとなっていたが、マリーヤならアナスタシヤだろう)
・勿論セルゲイ・フィーリン
・パーヴェル・ドミトリチェンコ
・ボリス・アキーモフ 今はバレエ教師だが、お手本で踊っているのが息を呑むほど上手い!
・スヴェトラーナ・ザハーロワ(インタビューはなかったと思う)
・ニコライ・ツィスカリーゼ
・アレクサンドル・ブドベルグ(ボリショイ議長)
・ウラジーミル・ウーリン(新総裁)
・ロマン・アブラモフ(いわくありげな愛好家、ボリショイのファン)
・メドヴェさん(ロシア首相)

というわけで、フィーリンの不在中に芸術監督代行になったガリーナ・ステパネンコは全然出てこなかったし、言及すらなかったのは大いに不満だ。

まあ、ボリショイは有名だし、政権との結びつきも強いけれど、今ではマリインスキーにぐんと引き離されてしまっていて、フィーリンの事件ですらもしかして話題づくりじゃないかと邪推されかねないような体たらく。無論映画中ではマリンスキーのことは一切触れない(他のバレエ団のことはフィーリン及びウーリンの前職場モスクワ音楽劇場バレエ団以外話題にならない)。

あと、プログラムは800円と高額だが、中身はそれだけのことがあるので買わざるを得ない。

 
ロビーにはマリーヤ・アレクサンドロワ直筆サイン入りポスターが展示されている
 
 
 
 

2010年8月撮影ボリショイはまだ改修中でした。
クレーンが見えている。
 
予告には来年1月公開の「ロパートキナ 孤高の白鳥」の映像が流れ、もううっとり!
楽しみだ。
今、ロビーにはロパートキナの直筆サイン入りトウシューズが展示されている。
踊る世界遺産ロパートキナが!と思うと、ぞくぞくする。


 

2015年9月10日木曜日

КНИГА ウクライナ日記 国民的作家が綴った祖国激動の155日

ウクライナのロシア語作家クルコフのマイダン騒動中の日記だったが、4月下旬で終わっているので、5月2日のオデッサの虐殺をどう書いてあるのかを気にかけていた私にはその点がっかり。というより、そこそこおもしろい小説を書く人でも日記を読んでそのままおもしろいというわけではないのだとわかった。
ロシア系であるゆえに、かもしれないが、ウクライナ統一を願い、ロシア陰謀論を頭から信じている風があり、皮肉である。

ちょっと気になったのは、3月30日の俳優アンドレイ・パーシンの反プーチン発言に関する記載。パーシンの両親はザポロージエ在住で、そのためか、彼は非常に不穏当な発言をしている。
対して、『ナイト・ウォッチ』のウクライナ系作家セルゲイ・ルキヤネンコは、その出自にもかかわらず、あるいはそれゆえに、ロシアにおいてアンチマイダンの態度をとっているという。
ロシアとウクライナの間で、不幸で複雑な状況が生じている。

まあ、人の日記を読んでも、客観的な状況分析ができているわけでもなく、そんなにおもしろくはなかった、というのが率直な感想だ。
期待値が高かっただけに、映画「トライブ」に続いて、またまたウクライナ物にはがっかり。群像社の『ウクライナから愛をこめて』(オリガ・ホメンコ)もつまらなかったしなあ。

2015年6月28日日曜日

◆КНИГА『アルカーディーのゴール』

タイトルからサッカー児童文学を見つけたつもりで読んでみたら、スターリン政権下の粛清犠牲者の子どもの話だった。
この作者の前作の『スターリンの鼻が落っこちた』は意欲作ではあるのだけれど、作者本人の個人的体験と創作との乖離が不自然で、物語としてぎこちなく、ちょっとまだまだなレベルで痛々しい印象だった。
しかし、これがソ連のお話だよって、ロシア関係の人からは全然情報が伝わってこなかったな。

ああ、なあんだ。ひとまず”サッカー文学”枠で読んでみようと思って手に取ったのだけど、『スターリンの鼻が落っこちた』の作者でしたか。挿絵は作者本人のもので怖い、どうにかしてというものです。
この本も引き続きスターリン政権下の粛清犠牲者の子どもが主人公。サッカーがうまくて孤児院(というより「人民の敵」の子どもたちの収容所)から謎の査察官の元に養子に行きさらにツェスカ(文中では「赤軍サッカークラブ」)の少年チームの入団テストを受けてチャンピオンを目指そうとするが、そんなに容易に物事は進まない。人民の敵の子には試練が待ち受けているのだ…。
でも、ストーリーがまるでファンタジー(悪い意味で)で、子供騙しのような印象なんだよなあ。養親の設定もわざとらしいし。子ども相手の物語であっても、手抜きをしないでほしい。
なお、主人公が憧れるサッカー選手のブルトコはおそらく実在の選手ではない。

ソ連時代の有名なサッカー選手イーゴリ・ネット(彼の名を冠したユースの大会があるくらいだ)は、お兄さんレフ・ネットが粛清によって収容所で強制労働を課されていた。”パーミャチ(記憶)”で活動されていると『囁きと密告 スターリン時代の家族の歴史』下巻で読んだことがあるが、お兄さんが過酷な収容所での生活を生き延びたのは親族が有用な人物だったからというのも幾分有利な点があったのだろうか、いや逆にそういった親族(たてお無実であったとしても!)を持ったイーゴリ・ネットの当時の心境はいかばかりであったか、とその本を読んで思ったものだった。
チェコのイヴァン・ハシェクさんも、ご両親が法曹の職を奪われたり、お兄さんが大学進学の道を奪われたりする中で、サッカーの才能が辛うじて進学を許された、などということが伝えられている。
サッカーの才能は自分と親族を救うこともあるだろうし、体制協力を余儀なくされるという面もあるし、なかなか一筋縄には述べるわけにはいかないところだ…。


こういう話題(スターリン政権下の社会)を扱って力作なのだろうが、話がぎこちなく、絵があまりに子ども向けでないので(作者本人が描いている)、いわゆる”どん退き”になりかねない本になってしまった。