2013年11月19日火曜日

◆ПЕРЕДАЧА(放送予定) 風の谷の電気屋と悲劇の森

NHK-BSプレミアム・プレミアムシネマ年内の放送予定

①11月22日(金)13:0014:21  NHK-BSプレミアム プレミアムシネマ
「明りを灯す人」«Свет-Аке»
アクタン・アリム=クバト(アブディカリコフ)監督2010年キルギス・フランス・ドイツ・イタリア・オランダ

20119月、渋谷・イメージフォーラムで公開上映された、アブディカリコフ改めアリム=クバトの映画。「ブランコ」「あの娘と自転車に乗って」「旅立ちの汽笛」では息子に主演させていたけれど、今度は自ら主演。村の電気工事を一手に引き受け、且つ村の電力を賄おうと谷間に風車を作っている、笑顔が可愛いおじさんはエコ志向の時代の先を行くが、決してほのぼのだけの映画ではない。

 

②12月2日(月)13:0016:30  NHK-BSプレミアム プレミアムシネマ
「戦争と平和」«Воина и мир»
キング・ヴィダー監督1956年アメリカ・イタリア

★映画史上最高額を投じての大作、あのセルゲイ・ボンダルチュクの7時間強の作品ではなく、オードリー・ヘプバーンやヘンリー・フォンダが出演する3時間半のアメリカ・イタリア合作映画。お暇なら。

 

③12月6日(金)23:451:48  NHK-BSプレミアム プレミアムシネマ
「カティンの森」«Катынь» «KATYŃ»
アンジェイ・ワイダ監督2007年ポーランド

★スモレンスク近郊のカチン付近で行われたソ連の手による虐殺(対象はポーランド指導層が主)で父を失ったワイダ監督が恐らくライフ・ワークとして手掛けたのだろう。もちろんソ連の行為への目は厳しく、ラストで延々と(淡々と)行われる処刑の様子はひたすらに重い。が、一方で原作には登場しない「よいロシア人将校」がいたりする。

2013年11月11日月曜日

◇ВЫСТАВКА(展覧会情報)バレエ・リュス展(仮称)がやってくる プリヴェト・プリヴェト・プリヴェト


2014618日(水)~91日(月) 乃木坂・国立新美術館

★レーピン(昨年~今春)→プーシキン美術館(フランス絵画だけど。今夏)・マンモス(今夏)→ロシア・アバンギャルド(今秋~冬)・シャガール(今秋~来年)ときたら、ロシアの美術、次はバレエ・リュスなのですよ。

★といっても、バレエ・リュスはロシアでは一切公演していないので、資料はロシア国内にはたいしてありません。今回の展覧会はオーストラリア国立美術館所蔵のもので、マティス、キリコ、バクスト作の衣装約140点他大規模な展示となる予定。




★バレエ・リュスと言えば、1998年の夏にセゾン美術館で開催された「ディアギレフのバレエ・リュス展 舞台美術の革命とパリの前衛芸術家たち」展は、歴史に残る素晴らしい展覧会だった。セゾン美術館の「白鳥の歌」的な企画で、「バラの精」や「牧神の午後」などのバレエの映像を観に何度も通ったのだった。ディアギレフもマシーンもリファールも、このときに知った。あれより凄い展覧会ができるのだろうか??

1116日の桑野塾でもバレエ・リュス企画があります。

2013年10月28日月曜日

◇КНИГА(書籍情報)二人のオリガ、二人のチェーホフ


『二人のオリガ・クニッペル チェーホフと「嵐」の時代』
牧原純著未知谷201310月刊1600(税別)ISBN978-4-89642-416-4
 
『ヒトラーが寵愛した銀幕の女王 寒い国から来た女優オリガ・チェーホワ』(アントニー・ビーヴァー著山崎博康訳白水社)も今年の5月に出ていますが、日本のチェーホフ書き、牧原氏も負けていない。やはり文豪アントン・チェーホフの甥のミハイル・チェーホフの最初の妻オリガ・クニッペル=チェーホヴァに注目しつつ、メイエルホリドの人生も絡めながら、チェーホフの次の世代のチェーホフ所縁の人々の運命を辿ります。

2013年10月27日日曜日

◇КНИГА(書籍情報)物など書いてはいけないチェーホフの夢


『夢のなかの夢』

アントニオ・タブッキ作和田忠彦訳岩波文庫20139月刊567ISBN978-4-00-327061-5 

2012年に亡くなったイタリア人作家が表した、古今の巨匠たちが観たかもしれない夢の数々。漱石の『夢十夜』を想起する方が多いかもしれない。

★「作家にして医師、アントン・チェーホフの夢」には「六号室」「馬のような名前」「ふさぎの虫」「サハリン島」などチェーホフ作品を下敷きにしながらチェーホフの人となりを描いている。一方、芸術家の作品や人生や時代を呪っているかのようなマヤコフスキーの段(「詩人にして革命家、ウラジーミル・マヤコフスキーの夢」)はいただけないが。

★やはり描かれる芸術家を知っている方が楽しめる。カラバッジョやゴヤ、ロートレック等の画家は作品や生涯が何となくお馴染みなので、親しみやすい一方、有名かもしれない詩人たちの章は、申し訳ないが読んでないのでわからなくて近づきがたいものがある。巻末に作家自身の手による紹介文「この書物のなかで夢る見る人」があるが、チェーホフの欄は「医師ではあったが、飢饉や伝染病が発生した時しか治療を行わなかった」と“医者は正妻、文学は愛人”みたいなことを言っていたチェーホフとしてはかなり心外であろう記述がある。他の人についても客観的な記述であろうか?と思いながら、知らない芸術家のプロフィールを読んでみる。

2013年9月29日日曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)秋に白夜、ブレッソン、再び

「白夜」«Белые Ночи»«Quatre nuits d'un rêveur»
ロベール・ブレッソン監督1971年フランス・イタリア
10/19(土)~11/1(金) 渋谷・ユーロスペース

★ドストエフスキーの短篇『白夜』の映画化作品は、イヴァン・プィリエフ監督作品1959年ソ連・あっと驚くミュージカル仕立てで結構明るい)、ルキノ・ヴィスコンティ監督作品(1957年イタリア・50年代のヴェネツィアが舞台。夜は暗くて全然白夜ではない。雪も降る。)等があるが、ブレッソン監督の「白夜」は制作当時のパリに舞台を移し、ポン・ヌフの夜(まあ、パリで白夜はないだろう)で台詞は少なくというものになっている。みんな、ドストエフスキー、好きですね。

2013年9月27日金曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)スクリーンでロシアオペラ(但しMET)


METライブビューイングでの上映
東劇(他に新宿ピカデリー/TOHOシネマズ六本木等)

11/211/8 1830
 ピョートル・チャイコフスキー«エフゲニー・オネーギン» «Евгений Онегин»
 ヴァレリー・ゲルギエフ指揮
 出演:アンナ・ネトレプコ、マリウシュ・クヴィエチェン、ピョートル・ペチャワ、オクサナ・ヴォルコヴァ

11/1611/22
  ドミトリー・ショスタコーヴィチ«» «Нос»
パヴェル・スメルコフ指揮
出演:パヴロ・ジョット、アレキサンダー・ルイス、アンドレイ・ポポフ

20144/54/11
 アレクサンドル・ボロディン«イーゴリ公» «Князь Игорь»
 ジャナンドレア・ノセダ指揮
 出演:イルダール・アブドラザコフ、アニータ・ラチヴェリシュヴィリ、ミハイル・ペトレンコ、ステファン・コツァン

★3回券がお得(3500円*3回のところ9000円)ですが、購入当日は使用不可。

2013年9月23日月曜日

◇ВЫСТАВКА(展覧会情報)私のロシアを愛するだろう


シャガール展

9/310/27 宮城県美術館(開催中)
11/312/25 広島県立美術館
20141/23/30 静岡市美術館
20144/176/8 愛知県立美術館

 

2013年9月20日金曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)今秋の東京国際映画祭


震災と原発事故以来各方面で来日が忌避されているそうですが(上司談。その割には夏季五輪が決まってしまいました)、そういった影響があるのか国外からの参加作品は年々小粒感が否めない東京国際映画祭、今年の作品をピックアップしてみました。スケジュール詳細は分かり次第補筆していきます。

東京国際映画祭 10/17(木)~10/25(金) 六本木ヒルズ等で。

①コンペティション部門

「ブラインド・デート[ Brma Paemnebi ]«Свидания вслепую»
レヴァン・コグアシュヴィリ監督
95分 グルジア語2013年グルジア

★一瞬聞いたことある名前だと錯覚したのは、ヘルタ・ベルリン所属のレヴァン・コビアシュヴィリに似ていたからだった。コグアシュヴィリ監督はトビリシ・モスクワ・ニューヨークの大学で映画を学び、これまで4本の映画(2010年に「ストリート・デイズДни Улиц (Прогульщики)」他)を撮っているとのこと。これが5本目です。
 
「ザ・ダブル/分身」«Партнёр»
リチャード・アヨエイド監督93分英語2013年 イギリス
★ベルナルド・ベルトルッチ監督「分身」と同様にフョードル・ドストエフスキー原作作品。
 
特別招待作品
「エレニの帰郷 [ Η σκόνη του χρόνου ]«Пыль времени»
テオ・アンゲロプロス監督
127分英語・ドイツ語・ギリシャ語2008年 ギリシャ・ドイツ・カナダ・ロシア
★今年初頭に撮影中に交通事故で亡くなった、ギリシャの巨匠アンゲロプロスの遺作。前作「エレ二の旅」«Трилогия: Плачущий луг»ではほんの少しロシア語の場面がありましたが、今回はどうでしょう。制作国にロシアも入っています。とは言っても、今回の映画祭で最大の見どころはこれじゃないかしら?チケット取れるだろうか??

2013年9月16日月曜日

◇СПЕКТАКЛЬ(演劇情報)終電を逃した場合そこまでやるか?

俳優座劇場プロデュース№92「もし、終電に乗り遅れたら…」
アレクサンドル・ヴァムピーロフ作(原題「長男」«Старший сын») 宮沢俊一・五月女道子訳 菊池准演出

20131114日(木)~1124日(日) 六本木・俳優座劇場

2005年には劇団昴が今は亡き三百人劇場で原題どおりの「長男」で公演した、ヴァムピーロフ作品。

★今回、その劇団昴からは女優が三人出演、あとは文学座・俳優座等。

★昴の公演のときには、アフタートークで「シベリアの浅い春の夜なかに、女性がハイヒールなんか履いて歩いていて、ちっとも寒そうに見えない。」などと厳しい指摘を受けていたのが印象的だった。

★現代ロシアの戯曲では、どうしてこうも「嘘から出た何やら」という設定が多いのだろうか。適当に言い訳して、ばれそうになると更に苦し紛れに嘘を重ねて、という、映画「言い逃れ」(邦題「エターナル 奇蹟の出会い」)などにも通じるが、ロシア人って根本的にこういう嘘は嘘に入らないと思っているのだろうか??

★戯曲の邦訳は群像社から出ています。

2013年9月7日土曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)秋の名作劇場ジヴァゴで幕開け


「ドクトル・ジバゴ」«Доктор Живаго»
デヴィッド・リーン監督1965年アメリカ・イタリア
9/14()9/20() 神保町シアター「もう一度スクリーンで観たい秋の洋画名作集Ⅱ」での上映

2005年にオレーグ・メンシコフ(ジヴァゴ)、チュルパン・ハマートヴァ(ラーラ)、オレーグ・ヤンコフスキー(コマロフスキー)というキャストで本国初映画化が話題となったボリス・パステルナークの大長編ですが、今回の上映はオマー・シャリフ主演、挿入曲「ラーラのテーマ」も有名なアメリカ・イタリア合作のあの名作です。3時間40分。

★原作は今年3月に未知谷から工藤正廣訳で刊行されています。

2013年8月26日月曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)ワイルド・ワイルド・ドキュメンタリーフィルム

「祖国か死か」«Родина или смерть»
ヴィタリー・マンスキー監督ロシア2011
山形ドキュメンタリー映画祭201310/10-10/17)インターナショナル・コンペティションでの上映

★「青春クロニクル」「ワイルド・ワイルド・ビーチ」のマンスキー監督最新作は標題の革命スローガンを今も掲げる国、キューバの人々の暮らしをレポート。

「ワイルド・ワイルド・ビーチ」«Дикий, дикий пляж. Жар нежных»
アレクサンドル・ラストルグエフ、ヴィタリー・マンスキー、スサンナ・バランジエヴァ共同監督ロシア・ドイツ2006
9/27()1600~ 山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー
山形ドキュメンタリーフィルムライブラリー金曜上映会での旧作上映。

オデッサスタジオよう2006年ワールドカップヨーロッパ予選対ポルトガル戦があった晩のビーチの様子も描かれる。結果がぼろ負けだったことを知っている私は苦笑しつつ、酒も入っていることだし暴動になるのではないかとひやひやして観ていたが、まあそこまではならないけれどいや~な雰囲気に。先日のユーロソングの放送でも貝澤先生たちがおっしゃっていたがリゾート地のロシア人たちは短期決戦の「肉食系」、とても入り込めない世界だ…。

※②は数年前の東中野のポレポレ坐での山形ドキュメンタリー映画祭東京上映で観ました。①も受賞すれば東京での上映機会があるのではないかと思われます。

2013年8月25日日曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)師匠の師匠の師匠による瀕死の白鳥


「瀕死の白鳥」«Умирающий лебедь»

エヴゲニー・バウエル監督帝政ロシア1917
1214()1700 本郷三丁目駅・本郷中央教会
「聖なる夜の上映会Vol.7」での上映(ピアノ:柳下美恵 チェロ:現在未定)

★エイゼンシュテインやフドプキンの師匠、レフ・クレショフ(現在ユーロで特集上映中)の師匠、帝政ロシア時代の映画界の巨匠エヴゲニー・バウエルの最後の完成作品。

★現在ではウリアーナ・ロパートキナ(未見)、またマイヤ・プリセツカヤ(私が観たなかで最も元気な白鳥です)や世界各国の名バレリーナによって、そして古くはアンナ・パヴロヴァ(当然観たことはないけど)の伝説的名演によって知られる、サン・サーンス「白鳥」のチェロの音色に合わせてのバレエのソロ演目「瀕死の白鳥」。ここで白鳥を舞うヒロインはこの時代のバレリーナ、ヴェーラ・カラッリ。バレエをそのまま撮ったものではなく、ドラマの中にバレエシーンがあるというもののようです。

★賀川豊彦による集会が催され、また幻燈とパイプオルガンによる伝道が「名物」であった(初めて日本映画が上映されたのだという)日本基督教団本郷中央教会での上映。現在の建物は1929年再建されたもので文化財に指定されています。

2013年8月5日月曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)2008年8月、南オセチアの夢

「オーガストウォーズ」«Август. Восьмого»
810日(土)~渋谷TOEI・有楽町スバル座等

★ヒロインのクセーニャを演じるのは「第9中隊」«9 рота»DVDでの邦題は「アフガン」でしたっけ)で数少ない女性として出演していた(軍隊内にいたちょっと頭の弱い女の子の役だと思う)スヴェトラーナ・イヴァノヴナ。←これは間違い!スヴェトラーナ・イヴァノヴァが正しい。ちなみに彼女の父称はイヴァノヴナではなく、アンドレエヴナ。品のあるそばかす美人だった。
エゴール・ベロエフはオセット人で元夫の軍人(グルジア軍の砲撃で息子の前で即死)とその後息子を守る«いいロボット»との2役だそうで。

★そうなのです。2008年8月8日に起こったグルジアの南オセチア侵攻とその後のロシア・グルジア間の戦争という史実に、「ナイト・ウォッチ」や「ウォンテッド」かと見紛うようなVFXの要素を絡めた戦争映画のようです。しかしVFXを期待してはいけないでしょう。たぶん観て失笑すると思う。日本の観客は目が肥えていますから。

★このとき南オセチア侵攻に踏み切ったサアカシヴィリも破れてカラーゼたちの「グルジアの夢」が政権をとって以来、ワインの禁輸も解かれるなどグルジアとロシアも関係修復に向かっているのに、今さら挑発的な映画をやらなくてもいいのになあ。日本で公開するにはもっといい映画があるだろうに、もう…。やっとロシア映画の新作が来たと思ったら、これですよ。

★とはいえ、ただの戦争映画ではないことを期待します。オセチア・ロシア・グルジアの未来に栄えあれ。

2013年8月3日土曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)ソヴィエト映画,綺羅星のごとく


ロシア映画傑作選

831()920() シネマヴェーラ渋谷(ユーロスペース、オーディトリウム渋谷と同じビル)

★文芸ものあり、SF(ファンタスチカ)あり、アクションあり、メロドラマあり、戦争もの反戦ものあり。結構楽しめます。もちろんアート系もありますし。正統派中心のラインナップ。

★「ロシア映画」というより「ソヴィエト映画」です。グルジアフィルムやキエフスタジオ作品もありますので。

★⑬「ストーカー」以外は入替えなしの2本立て上映。




「母」«Мать»
フセヴォロド・プドフキン監督メジラブポム・ルーシ1926年(サウンド版1968年)
★原作はマクシム・ゴーリキーの同名の長編小説。私の好きな方のバターロフ(ニコライ)が息子役で出演。

 「アジアの嵐」«Потомок Чингис-Хана»
フセヴォロド・プドフキン監督メジラプポムフィルム1928年(サウンド版1949)
原作はイワン・ノヴォクショーノフ『チンギス・ハーンの末喬』。イギリス人に捕えられたモンゴルの猟師、お守りを見ると実はチンギス・ハーンの末裔だった!と色めき立つイギリス商人。傀儡にしたてあげようとするが、そこは気骨あるハーンの末裔、侵略者への協力を拒否してパルチザンに身を投じ…という具合に、都合よくチンギス・ハーンの名が使われます。

「宇宙飛行」«Космический рейс»
ヴァシリー・ジュラヴリョフ監督モスフィルム1935
基本的には真面目なSF映画(宇宙飛行士なのに遅刻するなよ、などと突っ込めるが。宇宙飛行の父、ロケットの父と称されるコンスタンチン・ツィオルコフスキー監修なのだ)。悪人はいないし、ラストでおおいにほっとする。必見。と言って何度も観に行っている私はいい加減DVDを買うべきではないだろうか?いや、ほんとに。パーヴェル・セドゥイフ博士役がセルゲイ・コマロフとなっているのも宇宙ファンにはぐっとくるところであります。

「アレクサンドル・ネフスキー」«Александр Невский»
セルゲイ・エイゼンシュテイン監督モスフィルム1938
★チュード湖の氷上の戦いを頂点とする、ノヴゴロドの、いや中世ロシア(ルーシ)の英雄アレクサンドル・ネフスキーの英雄伝。ドイツ騎士団のコスプレがまるきり石ノ森太郎ワールドで楽しい。

女狙撃兵マリュートカ」Сорок первый
グリゴリー・チュフライ監督モスフィルム195693
★農民出身の赤軍女性兵士マリュートカが捕虜の白軍将校護衛中に二人きりで孤島に難破。うーん、ちょっとあれな展開だけど。原題をみるとラストは容易に想像できてしまいますね。マリュートカの作る詩の下手っぷりは特筆に値する。

「誓いの休暇」«Баллада о солдата»
グリゴリー・チュフライ監督モスフィルム195987
★「世界で最も愛されたソ連映画」。この映画を紹介するのはそれだけでいい。私の“生涯ベスト5”の一本。

「火の馬」«Тени забытых предков»
セルゲイ・パラジャーノフ監督ドヴジェンコ記念キエフスタジオ196497
★グルジア出身のアルメニア人パラジャーノフによる、ウクライナのカルパチア地方の少数民族の伝承に基づく、べっとりエスニック映画。原作はミハイル・コチュビンスキーの『忘れられた祖先の影』。

「怒りのキューバ」«ЯКуба»
ミハイル・カラトーゾフ監督モスフィルム&イカイク(キューバ) 1964
★「鶴は翔んでいく」のカラトーゾフが、革命前のキューバの人々をオムニバス形式で撮った国策映画。映像の美しさが西側映画人に絶賛され、再評価に繋がったとのこと。

「鬼戦車T-34«Жаворонок»
ニキータ・クリヒン&レオニード・メナケル監督レンフィルム1964
★ソ連の戦争映画らしい硬派作品。だけれど原題はリリックに「ひばり」。個人的には「トルペド航空隊」と並んでお気に入りの戦争もの。

「ピロスマニ」«Пиросмани»
ゲオルギー・シェンゲラーヤ監督グルジアフィルム1969
★ゲオルギー・シェンゲラーヤの「ピロスマニ」は画家の半生を追う伝記物、後記のセルゲイ・パラジャーノフの「ピロスマニのアラベスク」はピロスマニの作品を同じ画家としてオマージュを捧げたような作品になっています。

「田園詩」«Пастораль»
オタール・イオセリアーニ監督グルジアフィルム1975
★グルジア出身の映画人の中でもイオセリアーニは完全に都会派。なので、都会人の見た田園風景を描いています。

「愛の奴隷」«Раба любви»
ニキータ・ミハルコフ監督モスフィルム1976
★この時代のミハルコフはよかった、と思わせる、とてもミハルコフらしい作品。ロシア革命を背景にした映画人たちのメロドラマ。

「ストーカー」«Сталкер»
アンドレイ・タルコフスキー監督モスフィルム1979
★近年ストーカーというと“つきまとい行為をする人”という意味で固定してきてしまいましたが、ここでは“密猟者”という意味で、イントネーションは“低高低”としてください。原作はストルガツキー兄弟の『路傍のピクニック』(邦訳は深見弾訳『願望機』群像社1989年または『ストーカー』ハヤカワ文庫1939年。先日上映後に監督急死という衝撃が走ったアレクセイ・バラバノフの遺作「私も幸せになりたい」も同じ原作)。「ソラリス」のときは原作者レムと大喧嘩になりましたが、ストルガツキー兄弟はタルコフスキーが何たるものか心得ていたようで原作と全く別物になっても許してくれました。ソ連のSFは隠れた佳作が多く、これは「惑星ソラリス」とともに“SF大作”の名に恥じない作品。

 
「スタフ王の野蛮な狩り」«Дикая охота короля Стаха»
ヴァレーリー・ルビンチク監督1979年ベラルーシフィルム
★原作はウラジーミル・コロトケヴィチの同名の小説で、黒田龍之助先生はかつて「日本語訳をする本を一冊選べと言われたら迷わず『スタフ王』!」とおっしゃっていました。原作者自ら映画製作にかかわっており、橇遊びのシーンを観るだけでも価値のある、それはもう美しい映画!杉浦かおりさんによれば、「スリーピー・ホロウ」はこれのリメイクだと言う。

「光と影のバラード」«Свой среди чужих, чужой среди своих»
ニキータ・ミハルコフ監督モスフィルム1974
★監督自ら野盗のお頭役。女性は登場していただろうか?というくらい存在感ない。テヘランのアザディスタジアムみたいな男度100%、ソ連きってのアクション映画。

「炎628«Иди  и смотри»
エレム・クリモフ監督1985年ベラルーシフィルム、モスフィルム
★星の数ほどある戦争映画の中でも、ハティニの虐殺を描いたこれが間違いなく一番恐ろしい。観ていて腐臭が漂ってくる映画はこれしかない。辛くても、一生に一度は絶対に見るべき映画。但しデートには向かない。主人公フリョーラ役のアレクセイ・クラフチェンコは、その辺のちょいワル少年風でいい味を出していたものの、到底役者には向かないだろうと思ったのに、今ではいっぱしのアクション俳優になっていかがわしい戦争ものやなんかに出演している。世の中わからないものです…。

短篇集
A「殺し屋」«Увийцы»
アンドレイ・タルコフスキー、アレクサンドル・ゴルドン、ミハイル・ロンム監督S・A・ゲラーシモフ名称全ロシア国立映画大学1956
★原作はへミングウェイの短編小説。タルコフスキーが映画大学3年生の時に同級生たちと作った、彼の最初の作品。自らも出演しているし、他の出演者も後のソ連映画界で監督や俳優として活躍した人たち。

B「エレジー」«Элегия»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1986
★“エレジー”がタイトルにつくソクーロフの作品には、
   「エレジー」«Элегия»
  「モスクワ・エレジー」«Московская элегия»
   「ペテルブルグ・エレジー」«Петербурская элегия»
   「ソヴィエト・エレジー」«Советская элегия»
   「単純なエレジー」«Простая элегия»
   「ロシアン・エレジー」«Элегия из России»
   「オリエンタル・エレジー」«Восточная элегия»
   「人生のエレジー.ロストロポーヴィチ、ヴィシネフスカヤ」(直訳:邦題は「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」と全く違うものになってしまった)«Элегия жизни ― Рострапович. Вишневская»

 と今まで8つあって全てがドキュメンタリーだが、そのシリーズ最初の作品。ロシアの不世出のオペラ歌手フョードル・シャリャーピンについての映像をドキュメンタリーながらソクーロフ節で描いているので一筋縄ではいきません。

C「ピロスマニのアラベスク」«Арабески на тему Пиросмани»
セルゲイ・パラジャーノフ監督グルジア記録映画スタジオ1986
★今気がついたのだが、グルジアフィルムではなく、グルジア記録映画スタジオ製作。だけれど、とても記録映画とは言い難い、天才が天才に捧げるオマージュ。

2013年7月23日火曜日

◇КНИГА(書籍情報)ドイツという隣国


『マグノリアの眠り』
エヴァ・バロンスキー著松永美穂訳岩波書店24152013730日刊行予定
ISBN978-4-00-024817-4

★下記のような冒頭は、ジャンヌ・モロー主演の映画「クロワッサンで朝食を」を思わせるものだ(旧ソ連構成国から«ヨーロッパ»の国々へ看護師・介護士・家政婦などの女性労働者が流出しているのだろうか)が、ロシアとドイツには戦争という過去がつきまとう。

 以下は岩波書店のHPからの引用。
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高齢のヴィルヘルミーネを介護するために,ロシアからドイツにやってきたイェリザヴェータ.まったく接点のなかった二人であったが,ともに第二次大戦末期の独ソ戦がもたらした忌まわしい記憶を胸に秘めていた.そして,一本の電話をきっかけに,その記憶がうごめきだす――.ドイツの新進作家がすべての女たちに捧げる鎮魂歌.


2013年7月19日金曜日

◇КНИГА(書籍情報)スターリン時代の家族史の一例、二例…

その1ロシア
『クコツキイの症例 ある医師の家族の物語』(上下巻)
リュドミラ・ウリツカヤ著日下部陽介訳群像社20137
(上巻)1890円 ISBN978-4-903619-42-2
(下巻)1525円 ISBN978-4-903619-43-9
★ロシアのブッカー賞受賞作。

その2ラトヴィア
『ダンスシューズで雪のシベリア』
サンドラ・カルニエテ著黒沢歩訳新評論20138月刊予価3990
ISBN978-4-7948-09479-6

その3エストニア(既刊)
『粛清』
ソフィ・オクサネン著上野元美訳早川書房20122月刊2415
ISBN978-4-15-209272-4
★以前の紹介記事はこちら

2013年7月7日日曜日

◇ВЫСТАВКА(展覧会情報)夏休み横浜ミュージアム巡り


76日から始まった横浜美術館(みなとみらい駅)でプーシキン美術館展を観よう!(916日まで)

プーシキン美術館展でフランス美術を堪能したら(ベラルーシ出身のマルク・シャガールの作品もある)、ちょっと足を伸ばしてシベリアのマンモス&岩壁画を観に行こう。東京方面からだと東急のらいチケットで巡ればお得ですね。

 

1.特別展マンモスYUKA~シベリアの永久凍土から現れた少女マンモス~
2013713日(土)~916日(月・祝) みなとみらい駅・パシフィコ横浜展示ホールA(横浜美術館からだと駅の反対側、動く歩道伝いに56分?)

★マンモスというと、昨年度までのNHKTVロシア語講座のシベリアシリーズでやっていたヤクーツク(東洋顔のサーシャさんが案内役だった)の博物館に展示されていたのを思い出されます。

★チケットは少々高価!但し、名まえ(イーミャ)に「ゆ」と「か」の両方入っている人(「ゆか」「ゆうか」「ゆたか」「ゆかり」「ゆりか」「ゆかこ」「ゆみか」「ゆめか」「ゆいか」「まゆか」「みゆか」「たかゆき」「ゆきたか」「かつゆき」「ゆきかつ」等々←いろいろ考えてみた)にはYUKA割あり。

こちらではなぜか「少女マンモス」ではなくて「少年マンモス」ですって。

 

YUKA割なし、入場料高いよ、という方には…

 

2.横浜ユーラシア文化館の夏休み特別企画
201379日(火)~916日(月・祝) 日本大通り駅・横浜ユーラシア文化館(横浜美術館からはみなとみらい駅から二駅、日本大通り駅3番出口に隣接している)

2階常設展示室(一部)
夏休み特別企画 特別公開「シベリアの岩壁画拓本」
★観覧料は一般200円、小・中学生100

1階図書コーナー
夏休み特別企画 体験コーナー「マンモスの牙にさわってみよう!」
ワークショップ「シベリアの古代アートをうつそう!」(会期中の土日祝)
★観覧料は無料!撮影も可!