2011年7月31日日曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)「100年のロシアPartⅡ 旧ソ連映画特集」

改定版はこちらです。

9/17(土)-9/23(金・祝) 渋谷・アップリンクファクトリー
「デルス・ウザーラ」«Дерсу Узала»
 黒澤明監督1975
★原作はウラジーミル・アルセーニエフ著『デルス・ウザラー』。群像社から岡田和也訳、ゲンナジー・パヴリーシン絵で2006年刊。ちなみに日本映画ではなく、ソ連映画です。
機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」«Неоконченная пьеса для механического пианино»
 ニキータ・ミハルコフ監督1977
★原作は『プラトーノフ』他のアントン・チェーホフの作品。日本で最初に紹介されたミハルコフ作品で、それゆえか今でも「最もミハルコフ的、チェーホフ的」と言われる。ヒロインのエレーナ・ソロヴェイ、脚本のアレクサンドル・アダバジャン、音楽のエドゥアルド・アルテミエフ、撮影のパーヴェル・レべジェフ等“ミハルコフ組”が早くも勢揃い。

「メキシコ万歳」«Да здравствует Мексика! »
 セルゲイ・エイゼンシュテイン監督1931
1979年に助監督だったグリゴリー・アレクサンドロフが監修・編集)
★エイゼンシュテインがアレクサンドロフとティッセが渡米した際、シンクレアの資金援助で撮影開始したフィルム…なのだが、なかなか完成しないうちにシンクレアとは決裂し、スターリンの呼び出しを受けてソ連に戻らなくてはならなくなり、エイゼンシュテインはネガを置いて帰国。エイゼンシュテインの死後、ようやくソ連の手に戻ったネガフィルムをアレクサンドロフが編集したもの。なので、未完成感が否めません。特に深刻な場面でふざけたような音楽が入るのがとても気になります。とはいえ、迫力の映像は斬新でありながらクラシカル。さすが巨匠!

「モスクワは涙を信じない」«Москва слезам не верит»
ウラジーミル・メニショフ監督1979
★停滞の時代のソ連で大ヒットしたメロドラマ、というか一種のシンデレラ・ストーリー。日本公開のときにも連日立ち見だったそうです。「モスクワは涙を信じない」は「権力に涙は通用しない=泣く子と地頭には勝てない」という諺だったのですが、今では「泣いても事態は好転しない、元気を出しなよ」という慰め、励ましの言葉に変容しています。

「誓いの休暇」«Баллада о солдата»
グリゴリー・チュフライ監督
★「世界で最も愛されたソ連映画」。この映画を紹介するのはそれだけでいい。私の“生涯ベスト5”の一本。

「ベルリン陥落」«Падение Берлина»
ミハイル・チアウレリ監督1949
★スターリン礼賛映画の典型として筆頭に挙げられるのがこの作品。娘のソフィコはパラジャーノフやサディコフ等なかなかアヴァンギャルドな、というか反体制な作品に出演していますが。なお、日本語のウィキペディアには「ソ連初のカラー映画であった。」と謎なことが書かれています(ソ連のカラー映画第一号はニコライ・エック監督の「うぐいす グルニャ・コルナコーワ」1936年)。

「鶴は翔んでゆく」«Летят журавли»
 ミハイル・カラトーゾフ監督1957
★タチアナ・サモイロワ(「アンナ・カレーニナ」)とアレクセイ・バターロフが戦争によって無情に引き裂かれる恋人たちを演じる、ソ連雪解け時代の傑作。

「復活」«Воскресение»
 ミハイル・シヴェイツェル監督1960-61
★レフ・トルストイ原作の映画化作品。最近イタリアでも映画化されましたが、牢獄やシベリアへの列車の中があんまり寒そうに見えなかったのが難点でした。その点、こちらは筋金入りのソ連映画!

「大祖国戦争 巨大なる進撃の記録」«Великая отечественная»
 ロマン・カルメン監督1965
★文字通り、第二次世界大戦勝利に至るまでのドキュメンタリー。

2011年7月24日日曜日

◇КНИГА(書籍情報2011年7月版③)私わかってた

『ニコライの日記―― ロシア人宣教師が生きた明治日本 ―― 上』(全3巻)
中村健之介編訳岩波文庫2011715日刊1134ISBN978-4-00-334931-1
『宣教師ニコライと明治日本』に続く、中村先生による宣教師ニコライの本。

『男はみんなろくでなし?』
エカテリーナ・ビリモント著織田桂子訳未知谷20117月刊3200(税別)
ISBN978-4-89642-350-1
★それ知っていたわ。と、『三人姉妹』のイリーナのごとく呟いてみる。

『ヌイピルシテェート』
ダニイル・ハルムス著田中隆訳未知谷2200(税別)20117月刊ISBN978-4-89642-348-8
『ズディグルアプルル』『シャルダムサーカス』と本作で三部作。

『猟人(かりうど)たちの四季―極東ロシア・アムールの動物たち』
フセーヴォロド・P・シソーエフ著岡田和也訳森田あずみ絵未知谷20117月刊2200(税別)ISBN978-4-89642-347-1
『ツキノワグマ物語』『森のなかまたち―極東ロシア・アムールの動物たち』に続く極東ロシア・アムールの動物たちのシリーズ。野生の生き物の世界はシビアです。

『〈死〉への/からの転回としての映画-アンドレイ・タルコフスキーの後期作品を中心に-』
亀井克朗著致良出版社20117月刊
★郵送(台湾から送料700円)または電子書籍で(350円)。
http://cqw14623.wook.jp/detail.html?id=213185

『ニコラ・ギゴフ詩集 赦しの日』CD付)
ニコラ・ギゴフ著真木三三子訳七月堂発行20113月刊3150ISBN978-4-879441751
★スターリン批判をして7年の強制労働に服したブルガリアの詩人の作品。CDには著者本人による朗読が収録されている。

『こんにちはチェホフ! 三つの短編を訪ねる』
村手義治編訳山本美智代装画春風社20116月刊 2100ISBN 978-4861102790
参考URL http://shumpu.com/archives/5445
『犬を連れた奥さん』『イオーヌィチ』『首に掛ったアンナ』を段落ごとに解説をまじえながら読みすすむ翻訳&作品論。

『カラー版ロシア語が面白いほど身につく本』
中野久夫,オレグ・ヴィソーチン著中経出版20117月刊ISBN978-4806141037  

『露西亜文学』
井筒俊彦著慶應義塾大学出版会201175日刊 3990ISBN 978-4-7664-1771-5

『図説ソ連の歴史』 
下斗米伸夫著河出書房新社189020114月刊ISBN 978-4-309-76163-3

『完本 天の蛇―ニコライ・ネフスキーの生涯』
加藤九祚著河出書房新社20114月刊2940ISBN 978-4-309-22543-2
★『天職の運命』の冒頭に登場する、粛清の犠牲となった悲劇の天才言語学者ネフスキー。大佛次郎賞受賞のノンフィクション(1976年刊)を増補、完本として復刊。

『完全版 池澤夏樹の世界文学リミックス』 
池澤夏樹著河出書房新社20114月刊2940ISBN 978-4-309-02034-1
★ミラン・クンデラ『存在の耐えられない軽さ』(チェコスロヴァキア/フランス):レフ・トルストイ『アンナ・カレーニナ』『コーカサスのとりこ』
★ブルガーコフ『巨匠とマルガリータ』:アレクサンドル・ソルジェニーツィン『イワン・デニーソヴィチの一日』、ヨシフ・ブロツキー『ヴェネツィア』、フョードル・ドストエフスキー『カラマーゾフの兄弟』、ヘンリク・シェンキェーヴィチ『クオ・ワディス』(ポーランド)
★イタロ・カルヴィーノ『見えない都市』:『レ・コスミコミケ』『イタリア民話集』『まっぷたつの子爵』(イタリア)、アレクサンドル・アファナーシェフ『ロシア好色昔話大全』
★ウラジーミル・ナボコフ『賜物』:『ロリータ』
★リシャルト・カプシチンスキ『黒檀』(ポーランド/ベラルーシ)/石牟礼道子『苦海浄土』(日本):『帝国―ロシア・辺境への旅』『国境を越えた医師』、アンナ・ポリトコフスカヤ『チェチェン―やめられない戦争』、池澤夏樹・本橋成一『イラクの小さな橋を渡って』

『ランドラッシュ』
NHK食糧危機取材班著新潮社1500201010月刊ISBN978-4-10-28071-2
★ウクライナでは欧州・中東諸国、インドが農地争奪戦を展開。極東ロシアでは韓国が国ぐるみで巨大農場を建設、というNHK特集の単行本化。

2011年7月20日水曜日

◇СПЕКТАКЛЬ(演劇情報)再びセンポ・スギハァラ

劇団銅鑼「センポ・スギハァラ 再び夏へ」公演
2011721日(木)1830開場/1900開演 新馬場・六行会ホール
 詳細はこちら
2011723日(土)1530開場/1600開演 早稲田大学大隈記念講堂
 自由席・無料 
 詳細はこちら
2011714日(木)〜23日(土)ワセダギャラリー(27号館小野梓記念館1階)にて杉原千畝のパネル展「勇気の人―杉原千畝 助けられた命のメッセージ」も開催。

 第二次世界大戦中にナチスの迫害から多くのユダヤ人を救った元リトアニア領事代理、杉原千畝氏。今年は没後25年。劇団銅鑼のロングラン(但し、「再び夏へ」は1992-2007年までの舞台とは別の作品で、2009年に「センポ・スギハァラ2009」としてお目見えしたものです)。早稲田大学は杉原氏の母校。


杉原氏が「命のビザ」を発給した、カウナスの元日本領事館(1994年撮影)

2011年7月16日土曜日

◇ВЫСТАВКА(展覧会情報) マトリョーシカ

ロシアのマトリョーシカ展
2011728日(木)~31日(日)
ギャラリー風帰来(地下鉄東西線神楽坂駅徒歩1分)
10:0019:00(初日は12:00から、最終日は17:00まで)
★ロシア雑貨のお店、マリンカとパルクが主催。

2011年7月13日水曜日

◇КНИГА(書籍情報2011年7月版②)帰るところにあるまじや

『メカスの難民日記 I HAD NOUHERE TO GO
ジョナス・メカス著飯村昭子訳みすず書房20116月刊5040ISBN978-4-622-07608-7
★個人映画の草分け、リトアニア出身のアメリカ在住の詩人・映画作家。戦中の反ナチス活動ゆえの強制収容所生活を経てのアメリカ亡命(ソ連の支配も嫌ったので)、そしてその後の移民生活を語る。「リトアニアへの旅の追憶」(ドキュメンタリーと言うより日記映画作品という趣)前史が語られているのだろう。リトアニア名ではヨナス・メカス。

2011年7月10日日曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)風の谷の電気屋

「明りを灯す人」«Свет-Аке»
アクタン・アリム=クバト(アブディカリコフ)監督2010年キルギス・フランス・ドイツ・イタリア・オランダ

20119月 渋谷・イメージフォーラム

★節電のこのご時勢に、アブディカリコフ改めアリム=クバトのこの映画。
「ブランコ」「あの娘と自転車に乗って」「旅立ちの汽笛」では息子に主演させていたけれど、今度は自ら主演。村の電気工事を一手に引き受け、且つ村の電力を賄おうと谷間に風車を作っている、笑顔が可愛いおじさん役。
 前田先生のこのコラム(これ(光と闇のグルジア電力事情譚))を思い起こす。

2011年7月3日日曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)この夏、ソクーロフで

CS「フィルム傑作選ソクーロフ」
7/23(土)-8/5(金)渋谷・ユーロスペース
前売券は一回券(1300円)・3回券(3300円)・5回券(5000円)があります。
トークショーも下記のとおり行われます。
7/23(土)1400の回の前 「ソクーロフ20年の軌跡」児島宏子
7/24(日)1400の回の前 「フィルムの魅力」岡島尚志
7/26(木)1900の回の前 「『罪と罰』とソクーロフの世界」亀山郁夫

上映作品(監督は全てアレクサンドル・ソクーロフ)
「ヴィオラソナタ・ショスタコーヴィチ」«Альтовая соната. Дмиторий Шостакович» 
1981年ソ連
★師匠セミョーン・アラノヴィチとの共同監督作品。作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチの生涯を、貴重な記録映像(バレエ「黄金時代」初演時(サッカー編です)の衣装などが観られる!)を駆使して描く。

「静かなる一頁」«Тихие страницы»
1993年ロシア
★原作はフョードル・ドストエフスキー『罪と罰』。割と眠気を誘います。主人公を演じるアレクサンドル・チュレドニクは「ボヴァリー夫人」にエマの愛人役で出演していました。

「モレク神」«Молох»
1999年ロシア
★ヒトラーの晩年を淡々と。レオニード・マガズヴォイはレーニンもチェーホフも演じてしまう、ソクーロフのお気に入り俳優。

「セカンド・サークル」«Круг второй»
1990年ソ連
★当時レニングラード工科大学の学生だったピョートル・アレクサンドロフ。今どうしているの?葬儀屋役の素人女性はきっと元気でしょう。続きは「ストーン―クリミアの亡霊」(I)。

「ソビエト・エレジー」«Советская элегия»
1989年ソ連
★ソ連歴代有力政治家(レーニン、トロツキー、スターリン…ゴルバチョフ、エリツィンら)の記録映像でエレジーが作られる。観る前にはコーヒーか何か飲用することをお勧めします。

「ヒトラーのためのソナタ」«Соната для Гитлера»
1979-1989年ソ連
★独裁者をスティール構成した短篇。台詞なし。アラノヴィチさん、弟子のソクーロフを何とかしてくださいよ、と一声かけたくなる。

「モスクワ・エレジー」«Московская элегия»
1986-1987年ソ連
★タルコフスキーについてのドキュメンタリー。作風からタルコフスキー系と思われがちなソクーロフではありますが、本人が言うにはそんなんじゃない、とか。最近読んだ伝記によると、タルコフスキーは結構嫌な人だったようで(製作段階で喧嘩別れした人の名前は「忘れた」としてクレジットに出さないとか)、だとするとソクーロフはいい人ですからね!違うと言えましょう。

「日陽はしづかに発酵し…」«Дни затмения»
1988年ソ連
★タルコフスキーがそうだったように、原作の雰囲気だけ借用して、後は自分の世界を作ってしまっているソクーロフ。トルクメニスタンの沙漠が暑くて暑くてたまらなそうで、観ていて辛いです。
 原作:ストルガツキー兄弟著『世界終末十億年前』群像社

I「ストーン―クリミアの亡霊」«Камень»
1992年ロシア
★チェーホフの亡霊をレオニード・モズガボイ(ソクーロフ作品でヒトラーやレーニンを演じている人)、博物館管理人をピョートル・アレクサンドロフ、っていうことで「セカンド・サークル」(D)の続きという設定。チェーホフ(の亡霊)は医者魂を発揮してアレクサンドロフに「顔色が悪い。鉄分を摂るように」と進言。

「マザー、サン」«Мать и сын»
1997年ロシア
★不本意ながら泣ける…。ほんとに泣ける。眠いけど。

「ファザー、サン」«Отец и сон»
2003年ロシア
★ロシア南部の港町なのかと思ったらポルトガルで撮ったとか。

「エルミタージュ幻想」«Русский ковчег»
2002年ロシア
★驚異の90分ワンカット。ゲルギエフ指揮のオーケストラも見もの聴きもの。豪華でそれまでのソクーロフっぽくない。

「牡牛座 レーニンの肖像」«Телец»
2001年ロシア
★レオニード・モズガボイ(←モストヴォイではない。ウェブ上で「アレクサンドル・モズガボイ」というのを見かけたが、それはロシアサッカー界のツァーリに引きずられたとしか考えられない…)は、この作品でレーニンを、「モレク神」«Молох» (C)でヒトラーを、「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»(I)でチェーホフを演じています。役者って凄いな。「エルミタージュ幻想」(L)にも出演しています。

「チェチェンへ アレクサンドラの旅」«Александра»
2007年ロシア
ガリーナ・ヴィシネフスカヤ演じる老女アレクサンドラがなぜか突然孫が赴任しているチェチェンの駐屯地に現れる。思い切り場違いなのに、駐屯地の兵士たちは結構優しい(世話役を仰せつかった兵士は役立たずだが)。チェチェンの美少年イリヤスの「こんなに長く戦争をして、もう解放してほしい」という言葉に対して、アレクサンドラ曰く「日本の老女が言っている。どんなに辛いことも終わる時が来る。必要なのは理性を失わないこと。武器や暴力に真の力はない。」誰のこと?と思ったら、日本の老女японская конституция説が。憲法は確かに女性名詞。しかし<老女>扱いか。
http://cid-cf8e965e7b688993.spaces.live.com/blog/cns!CF8E965E7B688993!1044.entry

「孤独な声」«Одинокий голос человека»
1978年ソ連
★登場する男女二人とも血色悪くて不健康なそうな様子が公開当時のロシアそのものの印象。同じ原作をモチーフにしたアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督「マリアの恋人」«Возлюбленные Марии»とは、全く異なる作品になっているのが興味深い。
原作:アレクサンドル・プラトーノフ著『ポトゥダニー河』・『職人の誕生』

「ロシアン・エレジー」 «Элегия из России»
1993年ロシア
★ソクーロフの詩的すぎるドキュメンタリー。作中使用される帝政ロシア末期の写真はマキシム・ドミートリエフの作品。

★★そういうわけで、ソクーロフ16作品一挙上映です。以前にこのブログ等で使った紹介文をリサイクル利用しているものも多数ありますが、悪しからず。
 以下は、今回ユーロスペースで上映されないソクーロフ作品。
α「痛ましき無関心」«Скорбное бесчувствие»1983年ロシア
原作:バーナード・ショー著『傷心の家』
★ミハルコフの「機械仕掛けのピアノのための未完成の戯曲」«Неоконченная пьеса для механического пианино»みたい。特に結末は『プラトーノフ』や『ワーニャ伯父さん』『かもめ』…いずれにしろチェーホフ風。ソクーロフにしてはかなり台詞が多い。
β「ボヴァリー夫人」«Спаси и сохрани(Мадам Бовари) »1989年ソ連
原作:ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』
★濡れ場多すぎ。若い愛人役は「静かなる一頁」«Тихие страницы»(B)の人でした。
γ「精神(こころ)の声«Духовные голоса»1995年ロシア
★この映画は全5時間23分の超長編で、あまり激しい戦闘場面もなく、ひたすら兵士の日常生活をだらだら撮っていて、特に第1話はヒーリングビデオかと思うくらい何も起こらない。ゆえに「もうだめ、耐えられない!戦争ってくだらないわ」ということが痛感できる作品なのだが、第5話だけ上映してもなあ。しかし、登場する兵士は誰も生還しなかったという現実に、ああ、もう言葉は出てこない。(付記:ソクーロフ作品の中で私はこの作品(「精神の声」全体)を最も高評価としています。)
δ「マリア」«Мария»1975年(第1部)・1988年(第2部)
★最近川崎市民ミュージアムで上映されましたが。農村の女性マリヤ、その娘に取材した、その後のエレジー・シリーズへの萌芽が窺えるけれど、割とまともなドキュメンタリー。でも、第2部冒頭の長まわしは只者ではない!

2011年7月2日土曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)シネマヴェーラ「映画史上の名作」で「十月」上映

7/23(土)-8/5(金)シネマヴェーラ渋谷「映画史上の名作番外編 サイレント小特集Ⅲ」での上映

「十月」«Октябрь»
セルゲイ・エイゼンシュテイン監督1928年ソ連

7/24(日)「山の王者」との二本立て(入替えなし)
7/28(木)「チャップリン作品集」との二本立て(入替えなし)
★十月革命10周年記念映画。いかにもドキュメンタリーっぽくて、歴史映像として引用されることさえありますが、ニカンドロフ以下が演じています。東急襲撃場面で出てくる女性の軍隊?が今まで何なのかわからなかったのですが、『令嬢たちのロシア革命』を読んで、マリーヤ・ボチカリョーワの「死の女性大隊」なのだと知りました。

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)再び共演ニニーゼ&ハマートヴァ

三大映画祭週間2011にて、ロシア映画が2本上映されます。
8/13(土)-26(金) ヒューマン・トラストシネマ渋谷

「夏の終止符」«Как я провел этим летом»
アレクセイ・ポポグレブスキー監督ロシア2010
2010年ベルリン映画祭銀熊賞(男優賞・芸術貢献賞)受賞作。監督は脚本家ピョートル・ポポグレブスキーの息子。孤島の気象観測所のセルゲイとパーヴェルの二人、そして声だけの出演が3人。

「宇宙飛行士の医者」«Бумажный солдат»
アレクセイ・ゲルマン・ムラートシー(息子)監督ロシア2008
★「道中の点検」「我が友イワン・ラプシン」等の名監督アレクセイ・ゲルマンの同名の息子によるヴェネツィア映画祭銀獅子賞(監督賞)受賞作品。バフティヤル・フドイナザーロフ監督の「ルナ・パパ」で共演した、カザン出身のタタール系のチュルパン・ハマートヴァ(「グッバイ・レーニン」「ツバル」「72M」)とトビリシ出身のグルジア人メラブ・ニニーゼ(「懺悔」「名もなきアフリカの地で」)がここでもコンビを組みました。

◇КНИГА(書籍情報2011年7月版①)

『ヒトラーの最期―ソ連軍女性通訳の回想』
エレーナ・ルジェフスカヤ著松本幸重訳白水社20116月刊4200ISBN 978-4-560-08134-1

『モスクワのトルゥブナヤ広場にて―チェーホフ・コレクション』
アントン・チェーホフ著イリーナ・ザトゥロフスカヤ絵児島宏子訳未知谷20116月刊2100ISBN978-4-89642-345-7

『喜劇とは何か―モリエールとチェーホフに因んで』
 渡辺淳著未知谷20115月刊1680ISBN978-4-89642-341-9

『ジャポニズムのロシア―知られざる日露文化』
ワシーリー・モロジャコフ著村野克明訳藤原書店20116月刊2940ISBN 978-4-89-4348097

『力の信奉者ロシア―その思想と戦略』
乾一宇著JCA出版20115月刊3360ISBN978-4880620169

『対訳チェーホフ読本(CD付)』
アントン・チェーホフ著阿部昇吉訳注東洋書店20116月刊2940ISBN978-4-88595-996-7

『アフマートヴァの想い出―ロシア作家案内シリーズ 8
アナトーリイ・ナイマン著木下晴世訳群像社20116月刊3150ISBN978-4-903619-26-2

『書きなおすナボコフ、読みなおすナボコフ』
若島正、沼野充義編著研究社20115月刊3780ISBN 978-4-327-47224-5
★執筆者:ブライアン・ボイド(板倉厳一郎訳)/リーランド・ド・ラ・デュランタイ(森慎一郎訳)/モーリス・クチュリエ(樋口友乃訳)/マリヤ・マリコヴァ(寒河江光徳訳)/エレン・パイファー(的場いづみ訳)/スーザン・エリザベス・スウィーニー(後藤篤訳)/マイケル・ウッド(丸山美知代訳)/秋草俊一郎/諫早勇一/柿沼伸明/加藤光也/川端香男里/小西昌隆/佐藤亜紀/杉本一直/中田晶子/沼野充義/富士川義之/三浦笙子/メドロック皆尾麻弥/若島正

『ニコライの日記―ロシア人宣教師が生きた明治日本』上巻(全三冊)
中村健之介編訳岩波文庫2011715日刊行予定1134ISBN978-4-00-334931-1


『宣教師ニコライとその時代』
 
中村健之介著講談社現代新書20114月刊998ISBN978-4-06-288102-9

『チェルノブイリ春』
中筋純著(写真)二見書房201142625ISBN-13: 978-4576110554
★『廃墟チェルノブイリRevelations of Chernobyl』の続編。2009年春再訪時に撮影した写真の作品集。

『ドストエフスキー人物事典』
中村 健之介著講談社学術文庫20116月刊1680ISBN978-4062920551
19904月に朝日選書で刊行された同名の著作(ISBN9784022594990)の復刊。

『ロマノフの徒花  ピョートル二世の妃エカチェリーナ』
河島みどり著草思社20115月刊2200ISBN978-4-7942-1825-4
★『ピョートル大帝の妃―洗濯女から女帝エカチェリーナ一世へ』でロシア初の女帝エカテリーナ一世及びその娘エリザヴェータの生涯を、少々卑俗な筆致で(あんまりお上品ではない)描いた著者の、ロマノフ家をめぐる女性シリーズ第2弾、ということなのでしょう。名家ドルゴルーコフ家の令嬢エカチェリーナはメンシコフ失脚後にピョートル二世の婚約者の座を射止め、ロシアに君臨するはずであった…。兄嫁ナターリヤ・シェレメチェワ、ピョートル二世の叔母にあたるエリザヴェータ帝を交えたロマノフ王朝外伝。

2011年7月1日金曜日

◇ЛЕКЦИЯ(講演会情報)宇多先生のピーテル案内

ユーラシア・サロン第9
ユーラシアブックレットの著者を囲むお茶会
三軒茶屋・昭和女子大学1号館44s02教室
申込:ユーラシア・サロン運営委員会にメール eurasia_salon_cla@yahoo.co.jp
またはユーラシア研究会にFAX03-5477-7612

参加費:1000円(ユーラシア研究所会員700円・学生600円)
※ブックレット代600円別途(希望者)

*9回 201172日(土)1400-1600
宇多文雄『皇帝たちのサンクト・ペテルブルグ ロマノフ家名跡案内』

詳細はで。
最近、“ユーラ・チャン”のブログは更新されていないようです。

以上、誠に勝手ながら敬称略でご案内いたしました。