2011年7月3日日曜日

◇КИНОФИЛЬМ(映画情報)この夏、ソクーロフで

CS「フィルム傑作選ソクーロフ」
7/23(土)-8/5(金)渋谷・ユーロスペース
前売券は一回券(1300円)・3回券(3300円)・5回券(5000円)があります。
トークショーも下記のとおり行われます。
7/23(土)1400の回の前 「ソクーロフ20年の軌跡」児島宏子
7/24(日)1400の回の前 「フィルムの魅力」岡島尚志
7/26(木)1900の回の前 「『罪と罰』とソクーロフの世界」亀山郁夫

上映作品(監督は全てアレクサンドル・ソクーロフ)
「ヴィオラソナタ・ショスタコーヴィチ」«Альтовая соната. Дмиторий Шостакович» 
1981年ソ連
★師匠セミョーン・アラノヴィチとの共同監督作品。作曲家ドミトリー・ショスタコーヴィチの生涯を、貴重な記録映像(バレエ「黄金時代」初演時(サッカー編です)の衣装などが観られる!)を駆使して描く。

「静かなる一頁」«Тихие страницы»
1993年ロシア
★原作はフョードル・ドストエフスキー『罪と罰』。割と眠気を誘います。主人公を演じるアレクサンドル・チュレドニクは「ボヴァリー夫人」にエマの愛人役で出演していました。

「モレク神」«Молох»
1999年ロシア
★ヒトラーの晩年を淡々と。レオニード・マガズヴォイはレーニンもチェーホフも演じてしまう、ソクーロフのお気に入り俳優。

「セカンド・サークル」«Круг второй»
1990年ソ連
★当時レニングラード工科大学の学生だったピョートル・アレクサンドロフ。今どうしているの?葬儀屋役の素人女性はきっと元気でしょう。続きは「ストーン―クリミアの亡霊」(I)。

「ソビエト・エレジー」«Советская элегия»
1989年ソ連
★ソ連歴代有力政治家(レーニン、トロツキー、スターリン…ゴルバチョフ、エリツィンら)の記録映像でエレジーが作られる。観る前にはコーヒーか何か飲用することをお勧めします。

「ヒトラーのためのソナタ」«Соната для Гитлера»
1979-1989年ソ連
★独裁者をスティール構成した短篇。台詞なし。アラノヴィチさん、弟子のソクーロフを何とかしてくださいよ、と一声かけたくなる。

「モスクワ・エレジー」«Московская элегия»
1986-1987年ソ連
★タルコフスキーについてのドキュメンタリー。作風からタルコフスキー系と思われがちなソクーロフではありますが、本人が言うにはそんなんじゃない、とか。最近読んだ伝記によると、タルコフスキーは結構嫌な人だったようで(製作段階で喧嘩別れした人の名前は「忘れた」としてクレジットに出さないとか)、だとするとソクーロフはいい人ですからね!違うと言えましょう。

「日陽はしづかに発酵し…」«Дни затмения»
1988年ソ連
★タルコフスキーがそうだったように、原作の雰囲気だけ借用して、後は自分の世界を作ってしまっているソクーロフ。トルクメニスタンの沙漠が暑くて暑くてたまらなそうで、観ていて辛いです。
 原作:ストルガツキー兄弟著『世界終末十億年前』群像社

I「ストーン―クリミアの亡霊」«Камень»
1992年ロシア
★チェーホフの亡霊をレオニード・モズガボイ(ソクーロフ作品でヒトラーやレーニンを演じている人)、博物館管理人をピョートル・アレクサンドロフ、っていうことで「セカンド・サークル」(D)の続きという設定。チェーホフ(の亡霊)は医者魂を発揮してアレクサンドロフに「顔色が悪い。鉄分を摂るように」と進言。

「マザー、サン」«Мать и сын»
1997年ロシア
★不本意ながら泣ける…。ほんとに泣ける。眠いけど。

「ファザー、サン」«Отец и сон»
2003年ロシア
★ロシア南部の港町なのかと思ったらポルトガルで撮ったとか。

「エルミタージュ幻想」«Русский ковчег»
2002年ロシア
★驚異の90分ワンカット。ゲルギエフ指揮のオーケストラも見もの聴きもの。豪華でそれまでのソクーロフっぽくない。

「牡牛座 レーニンの肖像」«Телец»
2001年ロシア
★レオニード・モズガボイ(←モストヴォイではない。ウェブ上で「アレクサンドル・モズガボイ」というのを見かけたが、それはロシアサッカー界のツァーリに引きずられたとしか考えられない…)は、この作品でレーニンを、「モレク神」«Молох» (C)でヒトラーを、「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»(I)でチェーホフを演じています。役者って凄いな。「エルミタージュ幻想」(L)にも出演しています。

「チェチェンへ アレクサンドラの旅」«Александра»
2007年ロシア
ガリーナ・ヴィシネフスカヤ演じる老女アレクサンドラがなぜか突然孫が赴任しているチェチェンの駐屯地に現れる。思い切り場違いなのに、駐屯地の兵士たちは結構優しい(世話役を仰せつかった兵士は役立たずだが)。チェチェンの美少年イリヤスの「こんなに長く戦争をして、もう解放してほしい」という言葉に対して、アレクサンドラ曰く「日本の老女が言っている。どんなに辛いことも終わる時が来る。必要なのは理性を失わないこと。武器や暴力に真の力はない。」誰のこと?と思ったら、日本の老女японская конституция説が。憲法は確かに女性名詞。しかし<老女>扱いか。
http://cid-cf8e965e7b688993.spaces.live.com/blog/cns!CF8E965E7B688993!1044.entry

「孤独な声」«Одинокий голос человека»
1978年ソ連
★登場する男女二人とも血色悪くて不健康なそうな様子が公開当時のロシアそのものの印象。同じ原作をモチーフにしたアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督「マリアの恋人」«Возлюбленные Марии»とは、全く異なる作品になっているのが興味深い。
原作:アレクサンドル・プラトーノフ著『ポトゥダニー河』・『職人の誕生』

「ロシアン・エレジー」 «Элегия из России»
1993年ロシア
★ソクーロフの詩的すぎるドキュメンタリー。作中使用される帝政ロシア末期の写真はマキシム・ドミートリエフの作品。

★★そういうわけで、ソクーロフ16作品一挙上映です。以前にこのブログ等で使った紹介文をリサイクル利用しているものも多数ありますが、悪しからず。
 以下は、今回ユーロスペースで上映されないソクーロフ作品。
α「痛ましき無関心」«Скорбное бесчувствие»1983年ロシア
原作:バーナード・ショー著『傷心の家』
★ミハルコフの「機械仕掛けのピアノのための未完成の戯曲」«Неоконченная пьеса для механического пианино»みたい。特に結末は『プラトーノフ』や『ワーニャ伯父さん』『かもめ』…いずれにしろチェーホフ風。ソクーロフにしてはかなり台詞が多い。
β「ボヴァリー夫人」«Спаси и сохрани(Мадам Бовари) »1989年ソ連
原作:ギュスターヴ・フローベール『ボヴァリー夫人』
★濡れ場多すぎ。若い愛人役は「静かなる一頁」«Тихие страницы»(B)の人でした。
γ「精神(こころ)の声«Духовные голоса»1995年ロシア
★この映画は全5時間23分の超長編で、あまり激しい戦闘場面もなく、ひたすら兵士の日常生活をだらだら撮っていて、特に第1話はヒーリングビデオかと思うくらい何も起こらない。ゆえに「もうだめ、耐えられない!戦争ってくだらないわ」ということが痛感できる作品なのだが、第5話だけ上映してもなあ。しかし、登場する兵士は誰も生還しなかったという現実に、ああ、もう言葉は出てこない。(付記:ソクーロフ作品の中で私はこの作品(「精神の声」全体)を最も高評価としています。)
δ「マリア」«Мария»1975年(第1部)・1988年(第2部)
★最近川崎市民ミュージアムで上映されましたが。農村の女性マリヤ、その娘に取材した、その後のエレジー・シリーズへの萌芽が窺えるけれど、割とまともなドキュメンタリー。でも、第2部冒頭の長まわしは只者ではない!

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