「ル・アーヴルの靴みがき 公開記念おかえり!カウリスマキ」
4/21(土)~4/27(金)渋谷ユーロスペースにて、4/28(土)より公開されるカウリスマキの新作「ル・アーヴルの靴みがき」«Гавр»を記念して、監督の過去20作品が一挙に特集上映されます。そのうちのロシア・旧ソ連圏関連作品を紹介します。
①「罪と罰」«Преступление и наказание»
1983年フィンランド
★カウリスマキ長編デビュー作はドストエフスキーの長編を現代のフィンランドに置き換えたもの(ラスコーリニコフはライヒカイネンね!)。台詞は少なくカウリスマキ節だけれど、確かにドストエフスキー。
②スペシャル・プログラム アキ・カウリスマキ・ミーツ・ロケンロール
「トータル・バラライカ・ショー」«Балалайка шоу»
1993年フィンランド
★1993年6月12日にヘルシンキの元老院広場で行われたレニングラード・カウボーイズとアレクサンドロフ赤軍合唱団のジョイントコンサートのライブ・フィルム(演奏された24曲のうち13曲を収録)。最高。何度観てもいい。赤軍合唱団のおじさんのソロが「フィンランディア」を歌い上げる冒頭からわくわくし、だんだん暮れてくると、ああ、コンサートが終わってしまう…と激しい寂寥感に駆られる。レニングラード・カウボーイズの面々が英語で歌う「ポーレシュカ・ポーレ」(O,Field!)もなかなかいいものだ。「長い道」はレニングラード・カウボーイズと赤軍合唱団の人が肩を組んで歌い、合間にキルシ・テュッキュライネンがPadam,Padam,Padam...と(今思えばエディット・ピアフを模していたのか?)歌うなんて、なんとも豪華で大感激。
「ロッキーⅥ」«Рокки-6»
1986年フィンランド
★もちろんあの映画のパロディーで、痩せたアメリカ人ボクサー対立派な体格のロシア人ボクサーとの対戦を描く。(カウリスマキはかの映画がお嫌いだそうです。)
「悲しき天使」«Вот были деньки»
1991年フィンランド
★あのロシア歌謡の名曲「長い道」(「トータル・バラライカ・ショー」でレニングラード・カウボーイズとアレクサンドロフ赤軍合唱団とキルシ・テュッキュライネンが歌っている曲。カウリスマキのお気に入りなのでしょうか)が全編に流れます。夜のパリのカフェが舞台で、亡命ロシア人を想定しているのか?
※「ワイヤーを通して」(1987年フィンランド)「俺らのペンギン・ブーツ」(1992年フィンランド)も同時上映。
③「愛しのタチアナ」«Береги свою косынку, Татьяна»
1994年フィンランド
★おそろしくいけてない青春ものの白眉ともいえる作品。カティ・オウティネンがタイトル・ロールのエストニア人女性を、キルシ・テュッキュライネンがロシア人女性クラウディアを演じて、時に辛辣に、時に優しく、無口で無様な男二人との恋を育んでいくのです。テュッキュライネンはロシア語を話す役が多い(カウリスマキ作品だけでなく、アレクサンドル・ロゴシュキンの映画にも出演している)のですが、実は本職は大学のロシア語の先生なのでした。
④「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」
«Ленинградские ковбои едут в Америку»
1989年フィンランド・スウェーデン
★この奇天烈なバンドの面々は、「俺らのペンギン・ブーツ」によると、リーゼントに尖った靴着用で生まれてきたらしいのだが、故郷のツンドラから悪徳マネージャーのウラジーミルの口車に乗ってアメリカ大陸演奏旅行に出かけるのでした。
⑤「レニングラード・カウボーイズ・モーセに会う」
«Ленинградские ковбои встречают Моисея»
1994年フィンランド・イタリア・スウェーデン・フランス
★④の続編。アメリカからヨーロッパ経由で故郷ツンドラを目指します。旧約聖書をパロディー化しているのが日本では今一つ理解されなかったようです。
★上記の他の作品でも、「カラマリ・ユニオン」«Союз Каламари»における町の向こうの希望の地エイラはエストニアのタリンだし、「街のあかり」«Огни городской окраины»ではあのソ連歌謡が流れるし、「浮き雲」«Вдаль уплывают облака»では夫の再就職先がロシアへの長距離バスの運転手職だったり(問題があってそれもだめになるのだが)、とロシアとの結びつきが発見できます。今回は上映されないのですが、オムニバス映画「テン・ミニッツ・オールダー」«На десять минут старше — Труба»中の「結婚は10分で決める」эпизод «Собаки не отправляются в ад»では切符売りのキルシ・テュッキュライネンが得意のロシア語で列車案内をしています。
最後にもう一言、おかえり!マッティ・ペロンパー!!!