「100年のロシア ロシアからソビエトへ ソビエトからロシアへ」
3/19(土)-4/1(金)渋谷・アップリンク
上映予定作品は下記の22作品(ソ連・ロシア枠内作品)+番外特別上映作品(近隣国のロシア関連作品)です。ただ、アップリンクのサイトだと、「アエリータ」の表示がないなど、鑑賞の前には要確認。トークもいろいろ予定されています。「懺悔」«Покаяние»があれば尚よかったけれど…。
①「エルミタージュ幻想」«Русский ковчег»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2002年
★驚異の90分ワンカット。ゲルギエフ指揮のオーケストラも見もの聴きもの。
②「蒼ざめた馬」«Всадник по имени Смерть»
カレン・シャフナザーロフ監督2004年
原作:『蒼ざめた馬』ロープシン著岩波文庫
★奇作を作り続けてきたシャフナザーロフですが、これは割と普通。たまにはコスプレの時代劇を作りたかったのか?何のためのテロリズムなのか、ただただ虚しさが残る。
③「牡牛座 レーニンの肖像」«Телец»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2001年
★レオニード・モズガボイ(←モストヴォイではない。ウェブ上で「アレクサンドル・モズガボイ」というのを見かけたが、それはロシアサッカー界のツァーリに引きずられたとしか考えられない…)は、この作品でレーニンを、「モレク神」«Молох»でヒトラーを、「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»でチェーホフを演じています。役者って凄いな。「エルミタージュ幻想」にも出演しています。
④「アエリータ」«Аэлита»
ヤーコフ・プロタザーノフ監督1924年
原作:『アエリータ』アレクセイ・トルストイ著
★ソ連初期SFの大傑作。アレクサンドラ・エクステルのまさにアヴァンギャルド!!の衣装を見るだけでも価値ありの作品。ニコライ・バターロフ、ニコライ・ツェレテリ、ユリヤ・ソンツェワ、イーゴリ・イリインスキーら俳優陣も豪華。
⑤「火を噴く惑星」«Планета бурь»
パーヴェル・クルシャンツェフ監督1962年
★金星に行ってみたら何だか大サービスでプテラノドン風だのブラキオサウルス風だのティラノザウルス風だの恐竜がやたらと出てくる!それだけでも胸熱なのに、敬語でお願いしないと(しかもロシア語の)言うことを聞かないロボットのジョン君が意味不明な行動をするし、結末に関してはまあ謎は謎として楽しむべし。必見。
⑥「妖婆 死棺の呪い」«Вий»
アレクサンドル・プトゥシコ監修コンスタンチン・エルショフ、ゲオルギー・クロパチェフ監督1967年
原作:ニコライ・ゴーゴリ著『ヴィー』(岩波文庫『昔気質の地主たち 附 ヴィー(地妖)』収録)
★ゴーゴリの原作は十分怖いのかもしれませんが…怖くない!妙に明るいホラー映画になっています。且つウクライナの田園が美しい。ナターリヤ・ワルレイはとにかく異界の美女がよく似合う。見どころ満載、大必見!プトゥシコ大好き。
⑦「フルスタリョフ、車を!」«Хрусталев, машину! »
アレクセイ・ゲルマン監督1998年
★なぜゲルマンがこういう騒々しい映画を作ったのかは謎だ…。
⑧「日陽はしづかに発酵し…」«Дни затмения»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1988年
原作:ストルガツキー兄弟著『世界終末十億年前』群像社
★タルコフスキーがそうだったように、原作の雰囲気だけ借用して、後は自分の世界を作ってしまっているソクーロフ。トルクメニスタンの沙漠が暑くて暑くてたまらなそうで、観ていて辛いです。
⑨「動くな、死ね、甦れ!」«Замси ― Умри―Воскресни!»
ヴィターリー・カネフスキー監督1989年
★抑留日本人の歌う「夕焼け小焼け」の歌声が胸に滲みる。しかし、結局のところ男の甘えを美しく描こうとした作品だという思いが残り…(⑪に続く)。
⑩「不思議惑星キン・ザ・ザ!」«Кин-дза-дза! »
ゲオルギー・ダネリヤ監督1986年
★マシコフおじさん=ロシアの二枚目スタニスラフ・リュプシン(「私は二十歳」«Мне двадцать лет (Застава Ильича)»(1965年)のスラーヴァ、ミハルコフ監督の「五つの夜に」«Пять вечеров»(1978年)、「剣と盾」«Щит и меч»シリーズ(1968年))。人が変ったようにクー!しているのが衝撃的!
⑪「ひとりで生きる」«Самостоятельная жизнь»1991年
ヴィターリー・カネフスキー監督1989年
★(⑨の続き)で、やっぱり、「何、甘えてんだよ、この子は!」な続編であった。(その意味で「ぼくら、20世紀の子供たち」«Мы дети XX века»に登場するパーシャは案の定なのだった。周囲が何とか見守りきれなかったのだろうか?)
⑫「孤独な声」«Одинокий голос человека»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1978年
原作:アレクサンドル・プラトーノフ著『ポトゥダニー河』・『職人の誕生』
★登場する男女二人とも血色悪くて不健康なそうな様子が公開当時のロシアそのものの印象。同じ原作をモチーフにしたアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキー監督「マリアの恋人」«Возлюбленные Марии»とは、全く異なる作品になっているのが興味深い。
⑬「痛ましき無関心」«Скорбное бесчувствие»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1983年
原作:バーナード・ショー著『傷心の家』
★ミハルコフの「機械仕掛けのピアノのための未完成の戯曲」«Неоконченная пьеса для механического пианино»みたい。特に結末は『プラトーノフ』や『ワーニャ伯父さん』『かもめ』…いずれにしろチェーホフ風。ソクーロフにしてはかなり台詞が多い。
⑭「ボヴァリー夫人」«Спаси и сохрани(Мадам Бовари) »
アレクサンドル・ソクーロフ監督1989年
原作:フローベール『ボヴァリー夫人』
★濡れ場多すぎ。若い愛人役は「静かなる一頁」«Тихие страницы»の人でした。
⑮「こねこ―旅するチグラーシャ」«Котёнок»
イワン・ポポフ監督1996年ロシア
★こねこのチグラーシャ、ボス猫ワーシャ、芸達者なイザウラ(シャム)とジンジン(白黒)、シャフ(ペルシャ)、プショーク(お隣猫)、ペルシーク(キオスク猫)、ブドゥライ、ルイジック…猫がいっぱい出演するので、きっと見つかります、あなたの飼い猫似の猫が。
⑯「精神(こころ)の声 第5話」«Духовные голоса»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1995年
★この映画は全5時間23分の超長編で、あまり激しい戦闘場面もなく、ひたすら兵士の日常生活をだらだら撮っていて、特に第1話はヒーリングビデオかと思うくらい何も起こらない。ゆえに「もうだめ、耐えられない!戦争ってくだらないわ」ということが痛感できる作品なのだが、第5話だけ上映してもなあ。しかし、登場する兵士は誰も生還しなかったという現実に、ああ、もう言葉は出てこない。(付記:ソクーロフ作品の中で私はこの作品(「精神の声」全体)を最も高評価としています。)
⑰「マザー、サン」«Мать и сын»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1997年
★不本意ながら泣ける…。
⑱「ファザー、サン」«Отец и сон»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2003年
★ロシア南部の港町なのかと思ったらポルトガルで撮ったとか。
⑲「変身」«Превращение»
ヴァレリー・フォーキン監督2002年
原作:フランツ・カフカ『変身』
★ザムザ=虫のミローノフの演技は圧巻。このところ文芸映画の公開が少ないロシア映画@日本にあって貴重な力作。
⑳「ロストロポーヴィチ 人生の祭典」«Элегия жизни ― Рострапович. Вишневская»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2006年
★原題「人生のエレジー ロストロポーヴィチ、ヴィシネフスカヤ」とは似ても似つかない邦題に。観ればわかるが、ヴィシネフスカヤはエネルギッシュだ。21の次作に続く。
21「チェチェンへ アレクサンドラの旅」«Александра»
アレクサンドル・ソクーロフ監督2007年
★ガリーナ・ヴィシネフスカヤ演じる老女アレクサンドラがなぜか突然孫が赴任しているチェチェンの駐屯地に現れる。思い切り場違いなのに、駐屯地の兵士たちは結構優しい(世話役を仰せつかった兵士は役立たずだが)。チェチェンの美少年イリヤスの「こんなに長く戦争をして、もう解放してほしい」という言葉に対して、アレクサンドラ曰く「日本の老女が言っている。どんなに辛いことも終わる時が来る。必要なのは理性を失わないこと。武器や暴力に真の力はない。」誰のこと?と思ったら、日本の老女=японская конституция説が。確かに女性名詞。しかし<老女>扱いか。
22「アンナ・パブロワ」«Анна Павлова»
B.ロシチン監督1985年
★「エミーリ・ロチャヌー監督1983年ソ連・イギリス」との記載は、違っていたようで。ドキュメンタリー。
番外特別上映作品
1「コミュニストはSEXがお上手?」(Liebte der Osten anders?-Sex im geteilten Deutschland)
アンドレ・マイヤー監督2006年ドイツ
★未見。何となく見逃してしまっていた。
2「UFO少年アブドラジャン」«Абдуладжан, или посвещается Стивену Спилбергу»
ズリフィカール・ムサコフ監督1992年ウズベキスタン
★おっかないけど愛情深いおっかさんのホリダ(トゥチ・ユスポワ)が好き!それに比べておとっつぁんのバザルバイは日和見の小心者!コルホーズの農民たちが農機具返還を求めて議長に詰め寄る場面、「クーワ・カエセ(鍬、返せ)!」と聞こえるぞ。UFOに出会いたかった将軍にも注目。「モスクワは涙を信じない」の監督さんです。
3「ピリペンコさんの手づくり潜水艦」(Mr.Pilipenko and His Submarine)
ヤン・ヒンリック・ドレーフス&レネー・ハルダー監督2006年ドイツ
★ここは川柳風に。<あくまでも我が道を行く大変人>。
◇「牡牛座 レーニンの肖像」
◇「チェチェンへ アレクサンドラの旅」
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