2016年1月30日土曜日

◇КИНОФИЛЬМ「ロパートキナ 孤高の白鳥」

本日(1/30)初日の「ロパートキナ 孤高の白鳥(Ульяна Лопаткина, божественная)」は、言わずもがな世界最高のバレリーナ、ウリヤーナ・ロパートキナについてのドキュメンタリー映画。
監督はフランスのマレーネ・イヨネスコ。バレエのドキュメンタリー映画を撮ってきた人だ。
ロシア語での表記はМарлен Ионескоだったり、Марлена Ионеску だったり。
(作家のウジェーヌ・イヨネスコと血縁関係はあるのだろうか?)

初回は満席立ち見も十人ほど。バレエ習っているだろうお嬢様たちも当然数人いらしていた。
そういった未来のバレエを担う者に、ロパートキナの進言は深い。
アドバイスには謙虚に、そして自分で考えること、後は努力しかないと。
(いや、これとんでもなく難しいでしょ!)

私が彼女の生の舞台を観たのはもう20年も前で、ヴィシニョーヴァやザハロヴァなどとともに、青の当時のマリインスキー百花繚乱のスターの一人、でありながら、やはり際立ってバレリーナ然としていた印象だった。
ある意味シルヴィー・ギエムなどとは対極に位置する人だ。
その後、ペテルブルグでは「今シーズンはロパートキナが何を踊るか?」が必ずトピックになるという、特別な存在に駆け上がっていった感がある。

最近のロシア関連映画は後味悪いのが多かったが(「ボリショイ・バビロン」もどろどろ系)、ひたすら彼女の魅力に浸れるドキュメンタリー。

終始よい姿勢で端正な応対をする彼女のロシア語の響きが美しい。
更に上がある、もっと先がある、と努力を重ねる姿に、至高の美を感じる。

マリインスキーの稽古風景やワガノワアカデミーを訪れる場面もある。とにかく伝統のマリインスキーだから廊下に掲げられている先輩たちが物凄い。そんな重圧があっても乗り越えてロパートキナはロパートキナなのだからただただ素晴らしい。



「孤高の白鳥」というタイトルで、ロパートキナのはまり役筆頭が「白鳥の湖」であるにもかかわらず敢えてそれは見せず。
彼女が最も好きという「愛の伝説」はトルコ出身のナズム・ヒクメットの戯曲。
しばしば”踊れないタンゴ”とか言われるピアソラの曲も彼女にかかると見事なダンスになるのには感心した。
プティ振付の「サタデー・ナイト・フィーバー」の曲「ステイン・アライブ」もいい。何を舞っても気品が漂う。それとパリ・オペラ座の人にとってはバランシンは我がもの扱い?でロシアの伝統と違うから彼女にどうかと思ったけどみたいなことを言っていたのがおもしろかった

 

渋谷・ル・シネマで上映中。
ロパートキナのトゥーシューズ展示中(写真上)
※下の写真は「ボリショイ・バビロン」を観に行ったときに撮ったもの。


オデッサ・コスモス: ◇КИНОФИЛЬМ「ボリショイ・バビロン」: ル・シネマで上映中の「ボリショイ・バビロン」 今日は火曜のサービスデイ且つ休日なので、午前の回から満席御礼が続いていました。 映画を観ても、あの、セルゲイ・フィーリン硫酸襲撃事件の真相は謎のままだ。 (ドミトリチェンコが真犯人とは到底思えないという印象を受けるような作り。...

2016年1月23日土曜日

◆КНИГА『正教会の祭と暦』

私の周囲のクリスチャンたちはトルストイやドストエフスキーを愛読している人が多い(一定年齢以上だと特に)。でもロシアやウクライナで教会を訪ねると当然ながらプロテスタントの教会とは様子が違う。どう違うのだろうかと思ってこの本を読んでみたがやっぱりだいぶ違う!ということがわかった。
今までこういうった類の本を手に取ったことはなく、今後役立つと思う。

著者は現在ニコライ堂にいらっしゃる司祭であるが、私が2010年夏にセルギエフ・ポサード(教会の敷地には猫が沢山いた!)に行った時お会いした日本人の聖職者の方そのお人(お名前を伺わなかった)なのではないかと思っている。お若くて、言葉遣いがとにかく丁寧で「ぜひこちらで生きた正教会をご覧になっていってください」というようなことをおっしゃっていた。

このコンパクトな文庫本に、祭り(儀式・祈りなど)の意味を、これまた丁寧な言葉で解説されている。
写真がもう少し多く入れられていたらなと思わないでもないが(しかし「実際に来て見て体験する方が本を読むのより理解の近道」ですからね)、そのかわり可愛らしいイラストがいくつか納められている。

なるほど!と膝を叩いたのは、正教の礼拝、その儀式が五感の全てを使って神の愛、神による救いを体感するものだということ、祭と齋とのサイクルでも心身ともにそれに浸り、神様に寄り添われた生活が感じられるようになっているという指摘だった。
対してプロテスタントの教会は理に走りがちだとは思う…。
※51ページ1行目に「できるもで」とあるのは「できるもので」でありましょう。



2016年1月11日月曜日

◆КНИГА『図書館大戦争』

エグいしグロくて参る。その割にはさらさら読め、おもしろかった。
それはたぶん、主人公が属する読書室の面々にしろ、やたら強力なロシアの母さんたち(というかおばあちゃまたちなのだが)にしろ、登場人物たち(インテリ崩れと社会の最下層のはみだし者たち)が強烈にソビエトチックで痛々しく思えるかだろうか。
とにかく非現実的にスプラッターなのだが、なんかソローキンとかで慣れてきたみたい。
いやーな読後感ながら、映画化されればきっと観に行く。

◆КНИГА『バイカルアザラシを追って―進化の謎に迫る (ユーラシア文庫)』

ユーラシアブックレットからユーラシア文庫になっての第1号。判型が小さくなって、写真や図表がきつきつな感じでまだ慣れないな。バイカルアザラシはロシア語習い始めの頃нерпаという単語が出てきて、文脈から「バイカルに住むとても珍しい動物」、それは何だろう?とワクワクして露和辞典を引いた記憶が甦る。ネールパ、ネールパ…バイカルアザラシ!!!そうか、アザラシか!と感動したものだ。
で、この本は手堅くて真面目で、わくわくどきどきして読むようなタイプのものではなかった。が、感動を思い出して嬉しかった。

◆КИНОФИЛЬМ「消えた声が、その名を呼ぶ」

「消えた声が、その名を呼ぶ」は、アキン監督のこれまでの作品のきりきり切ない愛の痛みと深~い赦しのドラマからすると少々メロメロっぽく感じはするものの、多くの人に観てほしい、
特に日本人は観てほしい作品。なかったことにしてはいけないのだよ。
いや、トルコは国家としてはアルメニア人虐殺はなかった、そんな大量虐殺じゃなかったよ、組織的なものではなく突発的にちょこっとね、などと言ってきたのだ。
何度も書くが、トルコ人の知り合いは、「アララトの聖母」日本公開の時、「トルコ本国では絶対観られないだろうから」と観に来ていた。
昨今のロシアとの関係にしても、周辺のアラブ諸国との関係でも、トルコのことが話題になるたび、彼の理知的な面持ちが思い出されてならない。心が痛い。

それに。
過去とどう向き合うのか、赦す・赦さないといったことはとても他人事とは思えない。

しかし、この映画、観客少なめ。是非是非足を運んで!

角川シネマ有楽町
YEBISU GARDEN CINEMA
シネマ・ジャック&ベティ
等で上映中

実を言うと、アルメニア人虐殺がなぜ起きたのか?は映画を観てもわからない(アルメニア系の人が作った映画でもそうなのだが)。
主人公が命拾いするのはトルコ人・アラブ人等の良心的行為ゆえ、後半は「あの日の声を探して」と同じような展開等歯がゆさはあるが観るべき映画だ。

「消えた声が、その名を呼ぶ」を観ていて思い出すアルメニア映画:オデッサ海岸通り: カフカースの哀しみ

「アララトの聖母」のアーシル・ゴーキーの絵はこちらで。

Шрам — драматический фильм режиссёра Фатиха Акина.
1915 год. Армянин Назарет Манукян, спасшийся во время геноцида армян, спустя годы случайно узнает, что его дочки-близнецы тоже, возможно, спаслись, и начинает искать их. Поиски доводят Назарета до Северной Дакоты.
邦題は「消えた声が、その名を呼ぶ」

ロシアは共同制作の国として名前が挙がっているが、ロシア語の台詞はない。

2016年1月5日火曜日

◆КИНОФИЛЬМ)「ドクトル・ジバゴ」”Доктор Живаго” (фильм, 2002)

TV映画(3回シリーズ)「ドクトル・ジバゴ」”Доктор Живаго” (фильм, 2002)

ジャコモ・カンピオッティ監督2002年イギリス・ドイツ・アメリカ
出演 ハンス・マシソン(ジバゴ)、キーラ・ナイトレイ(ラーラ)、サム・ニール(コマロフスキー)、アレクサンドラ=マリア・ララ(トーニャ)

キーラ・ナイトレイがラーラ役(アレクサンドラ=マリア・ララが、ではない)の連続ドラマ「ドクトル・ジバゴ」観終わった。やっぱりジバゴの兄さんのエピソードはばっさり切られていて、オマ・シャリフのと似たような構成。友達の姉さんに恋するパーシャに最も親近感を寄せてしまうのも同じだ。(それって私が成長してないってこと?)
キーラ・ナイトレイは10年後の2012年には「アンナ・カレーニナ」でロシア文学に再挑戦。

原作は言わずと知れたボリス・パステルナーク。未知谷『ドクトル・ジヴァゴ』を読むべし。
映画だといろいろカットされてわけわからなくなりますからね。



イマジカの放映を録画して視聴。
再放映は2/23(火) 19:30~21:00 (#1)
#2、#3についての放映予定は1/5時点で載っていないが、#1だけ放映することはなかろうと思う。