帰ってきたアキ・カウリスマキ
9月29日(土)~10月5日(金)11:00/13:00/15:00/17:00/19:00
10月13日(土)~10月26日(金)21:00
渋谷・ユーロスペース
上映される作品は今春行われた「ル・アーヴルの靴みがき 公開記念おかえり!カウリスマキ」とかなりの部分重なります。そのうちのロシア・旧ソ連圏関連作品を紹介します(拙ブログ「おかえり!タチアナ おかえり!ライヒカイネン おかえり!レニングラード・カウボーイズ!!!」参照。但し、②のスペシャル・プログラム「アキ・カウリスマキ・ミーツ・ロケンロール」の小品群は10月2日13:00、⑧「カラマリ・ユニオン」は10月1日21:00一回限りの上映でした)。
アキ・カウリスマキは、オムニバス映画「テン・ミニッツ・オールダー」«На десять минут старше — Труба»中の「結婚は10分で決める」эпизод «Собаки не
отправляются в ад»(今回は上映されません)では切符売りのキルシ・テュッキュライネンに得意のロシア語で列車案内をさせているのも含めて、極めてロシア・ソ連との結びつきが強い鬼才監督なのです。
①「罪と罰」«Преступление и наказание»
1983年フィンランド
★カウリスマキ長編デビュー作はドストエフスキーの長編を現代のフィンランドに置き換えたもの(ラスコーリニコフはライヒカイネンね!)。台詞は少なくカウリスマキ節だけれど、確かにドストエフスキー。
②スペシャル・プログラム アキ・カウリスマキ・ミーツ・ロケンロール
「トータル・バラライカ・ショー」«Балалайка шоу»
1993年フィンランド
★1993年6月12日にヘルシンキの元老院広場で行われたレニングラード・カウボーイズとアレクサンドロフ赤軍合唱団のジョイントコンサートのライブ・フィルム(演奏された24曲のうち13曲を収録)。最高。何度観てもいい。赤軍合唱団のおじさんのソロが「フィンランディア」を歌い上げる冒頭からわくわくし、だんだん暮れてくると、ああ、コンサートが終わってしまう…と激しい寂寥感に駆られる。レニングラード・カウボーイズの面々が英語で歌う「ポーレシュカ・ポーレ」(O,Field!)もなかなかいいものだ。「長い道」はレニングラード・カウボーイズと赤軍合唱団の人が肩を組んで歌い、合間にキルシ・テュッキュライネンがPadam,Padam,Padam...と(今思えばエディット・ピアフを模していたのか?)歌うなんて、なんとも豪華で大感激。
「ロッキーⅥ」«Рокки-6»
1986年フィンランド
★もちろんあの映画のパロディーで、痩せたアメリカ人ボクサー対立派な体格のロシア人ボクサーとの対戦を描く。(カウリスマキはかの映画がお嫌いだそうです。)
「悲しき天使」«Вот были деньки»
1991年フィンランド
★あのロシア歌謡の名曲「長い道」(「トータル・バラライカ・ショー」でレニングラード・カウボーイズとアレクサンドロフ赤軍合唱団とキルシ・テュッキュライネンが歌っている曲。カウリスマキのお気に入りなのでしょうか)が全編に流れます。夜のパリのカフェが舞台で、亡命ロシア人を想定しているのか?
※「ワイヤーを通して」«Сквозь проволоку»(1987年フィンランド)「俺らのペンギン・ブーツ」«Эти башмаки»(1992年フィンランド)も同時上映。
③「愛しのタチアナ」«Береги свою
косынку, Татьяна»
1994年フィンランド
★おそろしくいけてない青春ものの白眉ともいえる作品。カティ・オウティネンがタイトル・ロールのエストニア人女性を、キルシ・テュッキュライネンがロシア人女性クラウディアを演じて、時に辛辣に、時に優しく、無口で無様な男二人との愛を育んでいくのです。テュッキュライネンはロシア語を話す役が多い(カウリスマキ作品だけでなく、アレクサンドル・ロゴシュキンの映画にも出演している)のですが、実は本職は大学のロシア語の先生なのでした。
④「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」«Ленинградские
ковбои едут в Америку»
1989年フィンランド・スウェーデン
★この奇天烈なバンドの面々は、「俺らのペンギン・ブーツ」によると、リーゼントに尖った靴着用で生まれてきたらしいのだが、故郷のツンドラから悪徳マネージャーのウラジーミルの口車に乗ってアメリカ大陸演奏旅行に出かけるのでした。
⑤「レニングラード・カウボーイズ・モーセに会う」«Ленинградские
ковбои встречают Моисея»
1994年フィンランド・イタリア・スウェーデン・フランス
★④の続編。アメリカからヨーロッパ経由で故郷ツンドラを目指します。旧約聖書をパロディー化しているのが日本では今一つ理解されなかったようです。
⑥「街のあかり」«Огни городской окраины»
2006年フィンランド
★あのソ連歌謡が流れる印象的な場面を生かすために、邦題は「街のともしび」にすればよかったのに、なんて思います。
⑦「浮き雲」«Вдаль уплывают облака»
1996年フィンランド
★夫の再就職先はロシアへの長距離バスの運転手職(問題があってそれもだめになるのだが)。フィンランドは高失業率で苦しみ、ロシアもカオス状態が酷かった時期になります。
⑧「カラマリ・ユニオン」«Союз Каламари»
1985年フィンランド
★フランクたちが目指す、町の向こうの希望の地エイラはエストニアのタリンなのですが…。ソ連でペレストロイカが始まった年の作品。
さあ、マッティ・ペロンパーに会いに行こう。
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