ただグルジア映画の限界かと思うが、アブハジア紛争を取り上げながらアブハジア人を正面から描けてはいない。グルジア人と対峙するのがアブハジアを応援しに来たチェチェン人になっていたりする。
「みかんの丘」
昨年のEUフィルムデーズで「タンジェリン」というタイトルで上映された作品。
「タンジェリン」エストニア+グルジア
中心人物4人の俳優それぞれがいい雰囲気。そこにアブハジア人が入っていないのは残念だが、グルジア人監督としてはアブアジア紛争を描くにはこれがぎりぎりだったのだと思う。アブハジア人が言ってしかるべき台詞をグルジア人兵士に言うのはチェチェンの契約兵士
アニメーション以外のエストニア映画はEUフィルムデーズで何本か観たがやっと何とか観賞に耐えるのが来た感じ。それが「タンジェリン」。敵同士一つところに居合わせて反目しつつという設定は「ノーマンズランド」その他よくあるものではあるけれど。
EUフィルムデーズ今日観た「マコンド」「タンジェリン」ともチェチェン人が登場。「タンジェリン」はグルジア人監督のエストニア作品。エストニア人、グルジア人、チェチェン人。アブハジアが舞台ながらアブハジア住民は出てこない。兵士達がちらりとだけ。
今年のEUフィルムデーズのベスト作品。
連休中に観た「マックスへの手紙」で、アブハジア人マックスの「隣近所に住んでいたグルジア人には何の恨みもないが、突然グルジア軍が攻めてきて戦うしかなかった。こうなった以上もうグルジア人と一緒には暮らせない。難民になったグルジア人の人たちは気の毒だと思う。でももうソ連時代には戻れない。戻れたらどんなにいいかと思うが」という言葉(←正確な再現ではない)を重く思い出す。アブハジアでも南オセチアでも、そしてドンバスでも、そうなってしまったのはいったいなぜ?
戻れない、が、それでも殺しあわずに生きていかなければいけないのだ、人間は。
まずは他人の言葉や信じるものを奪うことがあってはならないのだ。
「とうもろこしの島」
昨年の東京国際映画祭で「コーン・アイランド」というタイトルで上映された作品。
寡黙にして雄弁な東京国際映画祭の上映作品(3)「コーン・アイランド」
グルジア映画で、極端に台詞が少ない中で、中心人物の老人と孫娘はアブハジア語を話すようだ。
兵隊たちはグルジア語のようで、脱走兵と老人・娘は言葉が通じない、という設定なのか。
川と中州の自然描写は素晴らしいが、やはりいささか退屈・・・。
こういう映画って、なぜか数年に一回は出てくるのだ。※
なんだか観たことある感じだな、と思いながら観ていた。
※例えば2008年の東京フィルメックス映画祭で観た「デルタ」というハンガリー映画とか。
グルジア映画も、去年東京国際映画祭で観たのは素敵な作品で、一般公開を切望するものだったが、今回のこれはこれっきりだろうなあ。
・・・というのが、当時の感想だったが、「タンジェリン」とセットで、岩波ホールで公開中(11/11(金)まで)。
「みかん」のおかげだよ、「とうもろこし」!
どちらもアブハジア紛争から約20年経って、「グルジアは被害者!あいつらが悪い!」とは言わない、ぎりぎり良心的な立場といってよいようなものができたようなのだが、それでも当然「中立的すぎる」みたいな攻撃はあったというし、プログラム中グルジア映画遺産保護協会会長も「みかんの丘」の解説で史実と相違するなどと作者を非難していて興ざめであるが。
以下小ネタ。
「みかんの丘」ザザ・ウルシャゼ監督の父ラマズ・ウルシャゼРамаз Урушадзеはプログラムによると「サッカーのソヴィエト代表の著名なゴールキーパー」。実際にはソ連代表としては2試合出場のようだけど、64年スペインでの欧州選手権準優勝時のメンバーだった。
(当時の正キーパーはあのレフ・ヤシンである。)
アブハジア人の祖父と孫娘がいる中洲にやって来た兵士達が、ワインしかないと言われて、寧ろ有難いとか言って小宴会始めようとする場面、あれ?グルジア人?じゃなくてやはりアブハジア人達なんだね。
90年代という設定のはずだけど、「とうもろこし~」ではグルジア人兵士たちの肩章が現在のグルジア国旗のようだった(軍旗ではなかったと思う)。
当時の国旗は違うものだったと思うが。
また、岩波ホールでは、12/17(土)~イオセリアーニの新作公開とのこと。
いつもっぽいのんしゃらん映画らしい。
グルジアにいた頃の作品の方が100倍好きだが、ありがたいことに12/5~12/10アテネ・フランセ文化センターでオタール・イオセリアーニ監督特集がある!
交渉中ながら、上映予定作品は「落葉」!!!「田園詩」!
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