2013年7月7日日曜日

◇КНИГА(書籍情報)ソ連崩壊後のラスプーチン


『病院にて ソ連崩壊後の短編集』
ワレンチン・ラスプーチン著大木昭男訳群像社20135月刊ISBN978-4-903619-40-8

★年金生活者が入院先で元エリート官僚の同室者とTVをつける、つけないでやや大人げない争いをする表題作・貧困ゆえに正規の葬儀ができずに友人の手を借りて空き地に母を葬る元賄い婦とその周辺の人々を描く『あの同じ穴の中へ』・二度の結婚に失敗して結婚披露宴スピーチで愛を説く落ちぶれインテリの倦怠が描かれる『新しい職業』の3編。

★巻末に訳者による「ポスト・ソビエト時代の文学状況とワレンチン・ラスプーチン」と題する解説があり、ソローキンやペレーヴィンの話題作について「果たしてこれらが後世に残るような作品となるか疑問である」とし、一方ラスプーチンのような保守派の方が「国民の思考・感情に根ざしている」「重みがあり」「ナロードの立場に立った創作活動のなかにこそ未来がある」と書かれている。私もソローキンやペレーヴィンは決して好きではないし、ラスプーチンのこの3編はソ連解体時の庶民生活の破壊状況が如実に表れていてある意味衝撃的で、実に読む意義があったと痛感した。でも、ラスプーチンの手法を古いなあ、相変わらずだなあと感じたのも事実で(『病院にて』などはソルジェニーツィンを読んでいるような気になった)、「これじゃない今のロシア」も当然あるだろうという気がしてならなかった。

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