特集上映ロシアンカルト
3月16日(土)~3月24日(日)渋谷・アップリンク→5月3日~5月6日のアンコール上映についてはこちら。
★「カルト」っていうほどレアな作品は実はないのだ。私は全部観たことあるので、もっと新しい作品を入れたラインナップにして欲しかった。
①「ドウエル教授の首」«Завещание профессора Доуэля»
レオニード・メナケル監督1984年ソ連
★ソ連のSF作家アレクサンドル・べリャーエフのデビュー作『ドウエル教授の首』(1926年刊)の映画化。なんとも恐ろしい科学実験を平気でやってしまう人たちがいるものだが、原作者のべリャーエフは、そしてメナエル監督も、当時のソ連の「科学によって人間社会は無限に進歩していく」という素朴で明るい未来を本気で信じていたのだろうと思われる。今となっては絶対にこの手の映画は作られない、その意味では貴重。
②「両棲人間」«Человек-амфибия»
ゲンナージー・カザンスキー/ウラジーミル・チェボタリョフ監督1961年ソ連
★おごった人間の「産物」に酷い結末。人類はどう責任をとるつもりなのか?重い内容だが、やはり妙に明るい進歩史観。①と同じくべリャーエフ原作のジュブナイル(児童文学)。『映画に学ぶロシア語』収録。
③「宇宙飛行」«Космический рейс»
ヴァシリー・ジュラヴリョフ監督1935年ソ連
★基本的には真面目なSF映画(宇宙飛行士なのに遅刻するなよ、などと突っ込めるが。宇宙飛行の父、ロケットの父と称されるコンスタンチン・ツィオルコフスキー監修なのだ)。悪人はいないし、ラストでおおいにほっとする。必見。と言って何度も観に行っている私はいい加減DVDを買うべきではないだろうか?
④「アエリータ」«Аэлита»
ヤーコフ・プロタザーノフ監督1924年ソ連
原作:『アエリータ』アレクセイ・トルストイ著
★ソ連初期SFの大傑作。アレクサンドラ・エクステルのまさにアヴァンギャルド!!の衣装を見るだけでも価値ありの作品。ニコライ・バターロフ、ニコライ・ツェレテリ、ユリヤ・ソンツェワ、イーゴリ・イリインスキーら俳優陣も豪華。アップリンクのチラシには「トルストイ原作の斬新なSF!」とあるが、これだとレフ・トルストイと間違える人がきっといる。というかそれが狙いなのだろうか、アップリンクとしては。
⑤「火を噴く惑星」«Планета
бурь»
パーヴェル・クルシャンツェフ監督1962年ソ連
★金星に行ってみたら何だか大サービスでプテラノドン風だのブラキオサウルス風だのティラノザウルス風だの恐竜がやたらと出てくる(註:ブラキオサウルスは恐竜ではありませんが)!それだけでも胸熱なのに、敬語でお願いしないと(しかもロシア語の)言うことを聞かないロボットのジョン君が意味不明な行動をするし、後はマーシャが、マーシャがねえ。結末に関してはまあ謎は謎として楽しむべし。必見。(こら、アップリンクのチラシを書いた人!食べられそうになったのは●●●でしょ!)
⑥「妖婆 死棺の呪い」«Вий»
アレクサンドル・プトゥシコ監修コンスタンチン・エルショフ、ゲオルギー・クロパチェフ監督1967年ソ連
原作:ニコライ・ゴーゴリ著『ヴィー』(岩波文庫『昔気質の地主たち 附 ヴィー(地妖)』収録)
★ゴーゴリの原作は十分怖いのかもしれませんが…怖くない!妙に明るいホラー映画になっています。且つウクライナの田園が美しい。ナターリヤ・ワルレイはとにかく異界の美女がよく似合う。ソ連の特撮王プトゥシコ大好き、大必見!
⑦「不思議惑星キン・ザ・ザ!」«Кин-дза-дза! »
ゲオルギー・ダネリヤ監督1986年ソ連
★マシコフおじさん=ロシアの二枚目スタニスラフ・リュプシン(「私は二十歳」«Мне двадцать лет (Застава
Ильича)»(1965年)のスラーヴァ、ミハルコフ監督の「五つの夜に」«Пять вечеров»(1978年)、「剣と盾」«Щит и меч»シリーズ(1968年))。人が変ったようにクー!しているのが衝撃的!すばらしい。『映画に学ぶロシア語』収録。
⑧「日陽はしづかに発酵し…」«Дни
затмения»アレクサンドル・ソクーロフ監督1988年ソ連
原作:ストルガツキー兄弟著『世界終末十億年前』群像社
★タルコフスキーがそうだったように、原作の雰囲気だけ借用して、後は自分の世界を作ってしまっているソクーロフ。トルクメニスタンの沙漠が暑くて暑くてたまらなそうで、観ていて辛いただただ不条理の世界。
⑨「痛ましき無関心」«Скорбное
бесчувствие»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1983年ソ連
原作:バーナード・ショー著『傷心の家』
★ミハルコフの「機械じかけのピアノのための未完成の戯曲」«Неоконченная пьеса для механического пианино»みたい。特に結末は『プラトーノフ』や『ワーニャ伯父さん』『かもめ』…いずれにしろチェーホフ風。ソクーロフにしてはかなり台詞が多い。
⑩「静かなる一頁」«Тихие страницы»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1993年ロシア
原作:フョードル・ドストエフスキー『罪と罰』
★割と眠気を誘う。主人公を演じるアレクサンドル・チュレドニクは「ボヴァリー夫人」にエマの愛人役で出演していた。ソクーロフの好みのタイプらしい。ロシア語を勉強し始めた頃にこれを観て「ロシア映画ってこんなか?!」と動揺したものだったが、こんなではないものもあると知って安心した。
⑪「セカンド・サークル」«Круг второй»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1990年ソ連
★当時レニングラード工科大学の学生だったピョートル・アレクサンドロフ。今どうしているの?葬儀屋役の素人女性はきっと元気でしょう。続きは「ストーン―クリミアの亡霊」。
⑫「ストーン クリミアの亡霊」«Камень»
アレクサンドル・ソクーロフ監督1992年ロシア
★チェーホフの亡霊をレオニード・モズガボイ(ソクーロフ作品でヒトラーやレーニンを演じている人)、博物館管理人をピョートル・アレクサンドロフ、っていうことで「セカンド・サークル」⑪の続きという設定。チェーホフ(の亡霊)は医者魂を発揮してアレクサンドロフに「顔色が悪い。鉄分を摂るように」と進言。ペーチャ、君はどこに行ったの?
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