タルコフスキー生誕80周年記念映画祭
8月3日(土)~8月17日(金) 渋谷・ユーロスペース
♪長編作品7本のみで夭逝した天才映画監督アンドレイ・タルコフスキーは生きていれば80歳。徹底した美学を持っていたゆえに、難解で体調を整えて臨まないと睡眠学習することになる恐れあり(チラシによるとソクーロフは否定しているが)。知られている作品はこれらの他に大学時代の実習で制作した「殺し屋」«Увийцы»1956年があります。
「ローラーとバイオリン」«Каток и скрипка»1960年
★映画大学の卒業制作として作った46分の短編。クラスメイトのアンドレイ・ミハルコフ=コンチャロフスキーが共同脚本。
「僕の村は戦場だった」«Иваново детство»1962年
★デジタルリマスター版での上映。大変有名な作品なので説明は不要ですね。原作はウラジーミル・ボゴモーロフ作の短編小説『イワン』(邦訳は『新しいソビエトの文学2』勁草書房1967年刊に収録の『僕の村は戦場だった』中里迪弥訳)。イワン少年を演じたニコライ・ブルリャーエフは、当然ながら既に老境に足を踏み入れており、数年前にはニコライ二世役で映画に出演していたそうだ。
「アンドレイ・ルブリョフ」«Андрей Рублёв»1967年
★ロシア最高のイコン画家アンドレイ・ルブリョフの生涯を描く。と言ってもそこはタルコフスキー、単なる伝記映画ではありません!主役のアナトーリー・ソロニーツィンや旅芸人役のロラン・ブィコフらとともに鐘作り職人の若者ボリースカ役のイワンくんことニコライ・ブルリャーエフも印象深い。
「惑星ソラリス」«Солярис»1972年
★デジタルリマスター版での上映。原作はスタニスワフ・レムの『ソラリス』(邦訳は沼野充義訳『ソラリス スタニスワフ・レムコレクション』国書刊行会2004年刊、飯田規和訳『ソラリスの陽のもとに』ハヤカワ文庫1977年刊)。もっとも宇宙船内をイコンなどが浮遊する正教っぽい映像その他にレムは大不満だったそう(「この映画を観て誰も宇宙に行きたいとは思わないだろう」云々)だが。近未来イメージを醸し出すために70年代初頭の東京首都高の風景が撮られている。日本人にとっては広告の漢字が読めてしまうので生活感が滲み出てしまうがあちらの人にはわけのわからないちょっと不思議な空間=未来であったのだろう。
「鏡」«Зеркало»1975年
★このころから老けていたオレグ・ヤンコフスキー。自伝的な要素が強く、詩人であった父アルセニー・タルコフスキーの作品を監督自ら朗読しています。
「ストーカー」«Сталкер»1979年
★デジタルリマスター版での上映。近年ストーカーというと“つきまとい行為をする人”という意味で固定してきてしまいましたが、ここでは“密猟者”という意味で、イントネーションは“低高低”としてください。原作はストルガツキー兄弟の『路傍のピクニック』(邦訳は深見弾訳『願望機』群像社1989年または『ストーカー』ハヤカワ文庫1939年)。「ソラリス」のときは原作者レムと大喧嘩になりましたが、ストルガツキー兄弟はタルコフスキーが何たるものか心得ていたようで原作と全く別物になっても許してくれました。ソ連のSFは隠れた佳作が多く、これは「惑星ソラリス」とともに“SF大作”の名に恥じない作品。
「ノスタルジア」«Ностальгия»1983年
★この作品の撮影中に亡命、ソ連に戻ることはありませんでした。女性の潔さに比べて男性は何をやっているのだろう?
「サクリファイス」«Жертва»1986年
★遺作。日本人からすると核戦争の描き方が「え?そんなもの?」ですが(その点はほぼ同時代のコンスタンチン・ロプシャンスキー監督作品「死者からの手紙」の方が説得力あり)、カンヌでは絶賛されたそうです。