2015年12月22日火曜日

◆КНИГА『シベリアの掟』

遅まきながら今読んでいる『シベリア』、読みやすくておもしろいな。独特を持つ共同体(マフィアみたいな犯罪をものともしない集団だがある種モラルという仁義がある世界)はシベリアに存在するのかと思っていたら…

イタリアに移住した作家による一種の回顧文学なのだが、おそらくコサックみたいな無頼の共同体で育った若者の話。作者の自伝的な話なのだろうか。タイトルのとおり、シベリアの話かと思って読み進めていたら…。「犯罪者」たちと訳される、確かに近代法制からは十分に外れた、しかしそれなりに仁義ある共同体についてのノスタルジックな語りに途中からソ連解体の歴史と現実がいきなり雪崩れ込んでくる。バーベリの小説にも登場する、オデッサの犯罪王その名も「王様」の話も出てくるし、案外ソ連文学の正統な系譜(とりわけオデッサ派の)と言う感じも。続編、及び映画化が楽しみだ。

映画「マックスへの手紙」のマックスは未承認国家アブハジアの大臣をやったりしたけれど、結構若い。彼の故郷はソ連解体時突然グルジアが攻めてきて紛争に。仲良く暮らせていたソ連時代に帰れたらいいのに、でももはやグルジア人とは一緒に暮らせないと。
グルジア人には勿論反論もあろうことかとは思うが、観ていて複雑な気持ちになった。
もう一度観たい映画で、今年観た映画ベストイレブンにも選んだ。
『シベリアの掟』の主人公もこの手のソ連時代のノスタルジーあるみたい。

『シベリアの掟』主人公の属するシベリア起源の共同体ウルカはコサックみたいなもの?と思って読み進めていたが、やはり似て非なるものらしい。コサックは自由の民でありつつ時に帝国の防人として国家権力とも近しくなる場合もあるが、シベリアの民は徹底的に国家に靡かない。

「ウルカ」が友好的な関係を持っていたのが、アルメニア人、ベラルーシ人、コサック。逆に対立関係にあったのが○○人(「心から憎み合う関係になった」)と●●人と書かれているの見て、溜息。この本、イタリアで発表されたのは2009年なのだが…。

2015年12月10日木曜日

◆Спектакль森は生きている/12の月


年末年始の定番「森は生きている(12の月)」«Двенадцать месяцев»特集です。

①劇団仲間公演「森は生きている(十二月物語)」
 サムイル・マルシャーク作湯浅芳子訳髙田潔演出
 12/23(水・祝)~27(日)・1/4(月)~5(火) 紀伊國屋サザンシアター

1959年初演、「燃えろ燃えろあざやかに」の焚火の歌が歌い継がれている、音楽は林光。

②オペラシアターこんにゃく座『森は生きている』
 サムイル・マルシャーク作湯浅芳子訳 台本・作曲:林光 演出:大石哲史
    12/16(水)東松山市民文化センター(埼玉)
  12/19(土)まつもと市民芸術館(長野)
    20163/13(日)プラザノース(埼玉県さいたま市)

★東京公演はすでに終了(11/27かめありリリオホール)。同じ話がオペラ(というよりミュージカルだと思う)だとこんなに違う!と観ていてとても楽しい。

 
③人形劇団プーク「12の月のたき火」
 スロバキア民話より 川尻泰司作・演出プラン 岡本和彦演出
 12/19(土)~27(日) 新宿南口・プーク人形劇場

★ヒロインはマルーシャでスロバキア民話となっているが、ストーリーはマルシャークの「12月」そのもの。早逝した中山杜卉子の美術が40回目の今回の公演でもそのまま使われる。ブラックシアターと黒子の出遣いによる糸操り人形の舞台は今でも少しも古びていない。
 
 
Книга
上記のサムイル・マルシャーク原作本
①『森は生きている』
湯浅芳子訳岩波少年文庫200011月刊 ISBN9784001140729
②『森は生きている』
湯浅芳子訳岩波書店1972年刊ISBN9784001108385
★①の単行本版。挿絵はやはり大きい版の方が美しい。
③『世界の名作12 森は生きている』
宮川やすえ絵小学館冠199810月刊  ISBN9784092500129
★訳者名記載なし。
④『12つきのおくりもの』
杉田豊絵白井三香子訳フレーベル館19971月刊  ISBN9784577015667
⑤『12の月たち』
ダイアン・スタンレー絵松川真弓訳評論社1986年刊  ISBN9784566002654
 上記③の原作
12のつきのおくりもの』
スロバキア民話丸木俊絵内田莉莎子再話福音館書店200711月刊ISBN 9784061323698