イタリアに移住した作家による一種の回顧文学なのだが、おそらくコサックみたいな無頼の共同体で育った若者の話。作者の自伝的な話なのだろうか。タイトルのとおり、シベリアの話かと思って読み進めていたら…。「犯罪者」たちと訳される、確かに近代法制からは十分に外れた、しかしそれなりに仁義ある共同体についてのノスタルジックな語りに途中からソ連解体の歴史と現実がいきなり雪崩れ込んでくる。バーベリの小説にも登場する、オデッサの犯罪王その名も「王様」の話も出てくるし、案外ソ連文学の正統な系譜(とりわけオデッサ派の)と言う感じも。続編、及び映画化が楽しみだ。
映画「マックスへの手紙」のマックスは未承認国家アブハジアの大臣をやったりしたけれど、結構若い。彼の故郷はソ連解体時突然グルジアが攻めてきて紛争に。仲良く暮らせていたソ連時代に帰れたらいいのに、でももはやグルジア人とは一緒に暮らせないと。
グルジア人には勿論反論もあろうことかとは思うが、観ていて複雑な気持ちになった。
もう一度観たい映画で、今年観た映画ベストイレブンにも選んだ。
『シベリアの掟』の主人公もこの手のソ連時代のノスタルジーあるみたい。
『シベリアの掟』主人公の属するシベリア起源の共同体ウルカはコサックみたいなもの?と思って読み進めていたが、やはり似て非なるものらしい。コサックは自由の民でありつつ時に帝国の防人として国家権力とも近しくなる場合もあるが、シベリアの民は徹底的に国家に靡かない。
「ウルカ」が友好的な関係を持っていたのが、アルメニア人、ベラルーシ人、コサック。逆に対立関係にあったのが○○人(「心から憎み合う関係になった」)と●●人と書かれているの見て、溜息。この本、イタリアで発表されたのは2009年なのだが…。