2015年5月3日日曜日

闘う白鳥マイヤ・プリセツカヤさんを偲んで

ニキータ山下さんが訳された自叙伝タイトル「闘う白鳥」は、プリセツカヤの生涯を象徴している言葉だと思う。

もっとずっと長生きしてくださるような気がしていたのでショックだ。
90年代半ば、オーチャードホールから帰る道すがら、偶然至近距離に先程舞台で観たあのお姿が!
あの頃で70過ぎだったはずだが、せいぜい40代かな?というくらい見えない驚異の若々しさ。
その夜に観た彼女の「瀕死の白鳥」は、他のどの「瀕死の白鳥」より元気だったのだ!
「生きるんだ、もっと生きるんだ!」と生への執着が表れている。生への執着は美くしいものだのだと存分に感じさせるものだった。


闘う白鳥とは、彼女の生涯そのものを表す言葉。
ソ連の文化史としても秀逸。印象的なのは、親族が粛清に遇ったりで当局から睨まれ、様々な嫌がらせを受けながらも、ロストロポーヴィチ夫妻、ショスタコーヴィチ等と助け合い(天才たちは助け合うのだ!)実力(だけじゃないだろうけど)で舞台を続けていたこと。
ソ連ではとっても嫌な思いをさせられてきた彼女なのだが、「そうは言ってもボリショイ劇場の舞台がやはり世界一踊りやすい」と書いているところが感慨深い。ボリショイは最近までも騒動と悲劇が続くが、新装ボリショイのことはどう思われていたのだろうか?

著者 :
アイ・ヴィ・シー
発売日 : 2004-05-25


著者 :
アイ・ヴィ・シー
発売日 : 2007-11-23