2013年10月28日月曜日

◇КНИГА(書籍情報)二人のオリガ、二人のチェーホフ


『二人のオリガ・クニッペル チェーホフと「嵐」の時代』
牧原純著未知谷201310月刊1600(税別)ISBN978-4-89642-416-4
 
『ヒトラーが寵愛した銀幕の女王 寒い国から来た女優オリガ・チェーホワ』(アントニー・ビーヴァー著山崎博康訳白水社)も今年の5月に出ていますが、日本のチェーホフ書き、牧原氏も負けていない。やはり文豪アントン・チェーホフの甥のミハイル・チェーホフの最初の妻オリガ・クニッペル=チェーホヴァに注目しつつ、メイエルホリドの人生も絡めながら、チェーホフの次の世代のチェーホフ所縁の人々の運命を辿ります。

2013年10月27日日曜日

◇КНИГА(書籍情報)物など書いてはいけないチェーホフの夢


『夢のなかの夢』

アントニオ・タブッキ作和田忠彦訳岩波文庫20139月刊567ISBN978-4-00-327061-5 

2012年に亡くなったイタリア人作家が表した、古今の巨匠たちが観たかもしれない夢の数々。漱石の『夢十夜』を想起する方が多いかもしれない。

★「作家にして医師、アントン・チェーホフの夢」には「六号室」「馬のような名前」「ふさぎの虫」「サハリン島」などチェーホフ作品を下敷きにしながらチェーホフの人となりを描いている。一方、芸術家の作品や人生や時代を呪っているかのようなマヤコフスキーの段(「詩人にして革命家、ウラジーミル・マヤコフスキーの夢」)はいただけないが。

★やはり描かれる芸術家を知っている方が楽しめる。カラバッジョやゴヤ、ロートレック等の画家は作品や生涯が何となくお馴染みなので、親しみやすい一方、有名かもしれない詩人たちの章は、申し訳ないが読んでないのでわからなくて近づきがたいものがある。巻末に作家自身の手による紹介文「この書物のなかで夢る見る人」があるが、チェーホフの欄は「医師ではあったが、飢饉や伝染病が発生した時しか治療を行わなかった」と“医者は正妻、文学は愛人”みたいなことを言っていたチェーホフとしてはかなり心外であろう記述がある。他の人についても客観的な記述であろうか?と思いながら、知らない芸術家のプロフィールを読んでみる。